050.『守ってやれよ(3)』


 朝方森の中を移動していた際に重荷になっていた飲料水は、結翔に分け与えた量の他に、少し農家に置いていくことにした。これで移動がだいぶ楽になるはずだ。欲張りに多めに持ってきてしまっていたが、結翔に渡すことが出来たので良しとした。
 農家の前で、デイパックと日本刀を抱えた勝平と三人は向き合う。

「気をつけろよ、勝平」
「千景くん、色々ありがとう」
「ああ。お前らも、用心しろよ」

 勝平が、結翔、小桃と順に目配せをして、最後に美海を見つめた。美海が不安げに瞳を揺らしながら、勝平に一歩詰め寄る。

「本当に気を付けてね、死んじゃ、嫌だから」
「ああ、簡単には死なねえから、安心しろ。お前こそ、気を付けろよ、生き延びろ、絶対だ」
「勝平くん……」

 多分、勝平は、死ぬ覚悟は当にしてるはずだった。その瞳に揺るがない強い意思を感じるからだ。涙を堪えながら美海が頷いて、彼女らしくふんわりと微笑した。

「また、会おうね、だから、またね」
「またな。佐倉も、目黒も」

 手を振りながら、勝平と小桃たちは農家の前で別れる。勝平は先ほどの住宅地を方を目指すと言っていた。小桃たちは道を経由しながら最終的に向かうのは、南北の外れにある集落だ。まったく真逆の方向になる。後ろ髪を引く思いにも駆られたが堪えた。願わくば、もう一度再会できることを祈って。





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