014.『出発(1)』


 出席番号一番から男女交互にクラスメイトたちの名前が二分置きに読み上げられ、名前を呼ばれた生徒は専守防衛兵士に迷彩柄のデイパックを受け取ると次々と教室を出て行った。中にはペットボトルが三本と、三日分の食料、島の地図、生徒名簿、懐中時計とコンパス、そして――殺し合うための武器が、種類は違えどそれぞれに支給されていると言う。
 本堂空太(男子十六番)は一人、また一人と教室を出て行くクラスメイトを見送る。なにか言い残してくれるクラスメイトがいるのではないかと意識を集中して期待していたが、もう大分前に出て行った白百合美海(女子七番)が一言「外で待ってるね」と言ったのみで、後は誰も特に残してはくれなかった。
 そしていよいよ、空太の一つ前の間宮果帆(女子十五番)の名前が呼ばれ、俯いていた空太は思わず果帆を見た。果帆が兵士から乱暴にデイパックを受け取って教室を出る間際、一瞬だけ、目が合う。空太は少しだけ首を傾げるが、その頃には果帆はもう廊下に消えていた。
 空太はもう一度視線を落とす。外は、どうなっているのだろう。気のせいかも知れないが先ほど、なんとなく誰かの絶叫を聞いた気がした。外で待ってると言った白百合美海はいるのだろうか。そして後から来るクラスメイトをまとめているのだろうか。わからない、けれど、空太は誰も疑ってはいないのだけど、やはりここから出て行くのは恐ろしかった。もちろん、ここにいるのも恐ろしいのだが。

「男子十六番、本堂空太。来るが良い」

 ベアトリーチェに名前を呼ばれ、空太は反射的に立ち上がる。すぐに私物の旅行バックを持って机の間の狭い通路を歩く。ここで目覚めて三十分にも満たない頃、ベアトリーチェによって無情にも惨殺された筒井惣子朗(男子十番)七瀬和華(女子十一番)の遺体が視界の端に見える。空太は二人をなるべく見ないように努めて、デイパックを受け取ると廊下を駆け出した。





【残り:39名】

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