007.『ゲームスタート(1)』
教室を出て行く際に手渡されたデイパックを硬く胸に抱き締め、
名簿順に名前が呼び上げられ、塔子の出発はたった八番目だった。教室を去る際に仲間たちになにか一声掛けようかと悩んだが、やめた。危険を侵してまで伝える必要はないと感じたからだ。何故なら――そう、塔子は半ば確信していたのだ。外ではクラスのリーダーとも呼ぶべき存在の
見知らぬ教室で目覚めた時、恐怖を感じなかったわけではない。同じグループで仲良くしていた
惣子朗も言っていた。二年半もの短くも長い時を、みんなで一緒に過ごして来た。仲が良かった。他のクラスでは問題になったようだが、自分たちのクラスにはイジメもなかった。もちろん、多少浮いているクラスメイトも中にはいたが、その面々だって誰かを忌み嫌ったりなどしていなかったはずだ。
だから教室を出る時、塔子はむしろ毅然としている方だった。なにより、外では泉沢千恵梨が待っていると信じていた。心強かったのだ。
昇降口を通り過ぎて校門まで続く広い歩道を見つけると、塔子は確かめるように歩みながら周囲を見渡す。千恵梨の凛としていて透き通った力強い声で呼ばれるのを待った。
しかしいくら待っても、塔子を呼ぶ声は現れなかった。
その変わり、無造作に桜木の根元に集められた落ち葉の上に、背中や肩、脇腹や腹や――とにかく、様々な箇所から赤い液体を垂れ流して横たわる人影を、見つけた。
塔子より一つ前に出発したはずの、
男子四番 金見雄大――死亡