024.『第一回目の放送(2)』
「『死亡状況の発表に入るぞ! 男子四番金見雄大、男子十番筒井惣子朗、男子十四番桧山洋祐、女子四番香草塔子、女子十一番七瀬和華、女子二十二番渡辺彩音、以上六名! きっひひひひひひ、お前らまだ二時間剰りしか経っておらぬのに随分ぶっ飛ばすではないかあ、わかってんだよ楽しいんだろォ? 友達を殺すのは楽しいよなァ? きぇっへへへへへへへへ、なあ、お師匠様――なんと? 無駄口を叩くではないと申すか、んな硬いことを言うなってばお師匠様ァ〜?』」
テーブルに広げたクラス名簿と会場地図を見つめながら、小桃は思わず耳を塞ぐ。気分が悪い。この甲高く忌々しい声でクラスメイトの名前が呼ばれるのが聞くに耐えない。そう、四人は知っている、殺害された状況だって知っている。けれど、他にも二人、もう死んでしまったと言うの?
向かいに座る美海が心配そうに小桃を見詰めるが、小桃はそれに気付く余裕もない。そうしている間にも、ベアトリーチェの放送は続いている。
「『続いて禁止エリアの発表に入るぞー、会場地図を広げよ。見たか? もう見てるよな? 妾は意地悪だから一度しか言わんぞ、よく聞け、午前一時からBの4、午前三時からFの2、午前五時からIの10、以上である。ちゃんとメモったかあ? 聞き逃しても知らねえからなあ、ひゃはははは! ではまた朝の放送で会おうぞ! 昼とか夜とか関係ねえ、心して殺し合えよー、きっひひひひひひ!』」
またしてもプツンと耳障りな音を立ててベアトリーチェの放送は終了した。
「佐倉さん、大丈夫?」
美海が寄り添うように小桃の隣に移動しながら、その細長い指で背中を撫でてくれる。小桃は頷いて、テーブルに置かれた茶のペットボトルを飲み干した。
「ごめんなさい。あたし、ちゃんと放送聞いてなかったわ」
「平気よ、メモしたから」
心配そうに覗き込んでくる美海の視線にどことなく居心地の悪さを感じて、小桃は美海に向き直ると少しだ笑みを浮かべようとした。浮かべようとして出来なかった。
「眠れそうにないから、白百合さん先に休んで。見張りはあたしがするから」
一方的に言って背を向けてしまってから小桃は少し、しまったと反省する。美海はこんなにも小桃を気遣ってくれてると言うのに、もっと別の言い方があったのではないだろうか。
謝罪をしようとして振り返り、小桃は固まった。
「白百合……さん? なにをしてるの?」