038.『消せない不安(1)』
絶叫のようなものが、何度も何度も、すぐそこの畑から木霊している。
分校で
唯央は支給武器の
そもそも、なんでこんなことになったんだっけ?
おおよその生徒が胸を躍らせた沖縄旅行。卒業前の大イベントともあって、みんなすごく張り切っていた。昨日の朝方にはバスで学校を発って、今頃は沖縄のホテルでぐっすり休んでいたはずだったのに。ああ、でも、そうだった――唯央は見ていたのだ。高速道路を走行するバスの中で、運転手とガイドが、黒いガスボンベのようなものを被っているのを。そして、騒がしかった車内は徐々に暗幕を下ろすように静かになって行き、気付けば知らない教室だった。
唯央は記憶を辿っていく。教室で専守防衛兵士に射殺された筒井惣子朗と七瀬和華。放送で知ったのだが、香草塔子もすでにこの世を去ってしまった。何故、先に死んでしまったのだろう。日頃から面倒見の良かった和華がこの世にいない、そう考えるだけで、唯央の胸の内は例えようのない不安で波打つのだ。
そろそろ日も昇ろうかと言う時間帯。うずくまったまま固まっていた唯央は、争い声が止んでいることに気付いた。