site data |
2023/07/05 |
フランス人の方の見方で「タブー視されてきた場所や話がたくさんある」っていうのが日本の現状ととてもよく似ていますね。一番いたたまれないのは貧困街にあろうとどの環境にあろうと、できうる限り誠実さを失わず怒りを抑えて生活してきた人たちの築き上げた信頼が、一瞬で崩されてしまったこと。職を失ったり、間接的に差別を助長したり、憎しみと別の何かを結びつけてしまうこと。 数年前だったかな。Twitterで世界的にバズった動画で、デモという枠を遥かに越えた暴動に参加している黒人の中年男性が、若い黒人の男性に制止され、「これ以上馬鹿なことはやめてくれ!」と叫ばれているのを見たことがあります。「あんた幾つだ。答えないのか? たぶん俺より年上だろう。俺は32だ。俺の子供はまだ小さい」。言い争いをしていたのですが、ふと後ろに立っていた少年を引き寄せて、「君は幾つだ? 答えてくれ。そうか17か」と泣き出して。後ろの中年男性は怒りを抑えられないようで、叫んだり捲し立てたり掴んだりするのですが、彼を指差して「この人は手遅れだ。俺ももうすぐそうなる。こうなるまでの歴史があったし、年を取りすぎて忘れられないし、親父の代よりずっと前から続いてきた暴動で、怒りをコントロールするには哀しみが大きすぎる。でもそんな俺でもわかる。このやり方は間違っている」。少年は真剣な表情で彼の顔を見て、涙を堪えてうなずいて。「見ていてくれ」って。間違うところも。憎しみの連鎖も。 詳細は忘れてしまったのですが、その当時このお父さんと同じくらいで、「こんなにも覚悟や生きるということへの真剣さが違うんや……」と衝撃を受けて、寝られなくなったのを覚えてるんよね。 差別意識も含めて決して綺麗事を言うつもりはないけれど、インターネットだけではない。疫病も関係ない。人間本来が持っているはずの理性のたがをはずしてしまうような使い方で、機械を甘く見てはいけない。言語空間で起きることだけをコントロールすれば大丈夫だ、という流れに向かってきていますが、個々に自分の思想を大事にしていただきたい。それの源流が宗教であっても仕事であっても家庭であってもいいが、そのときどきで、大事なものをもう一度振り返って。しがみついてる思想が本当に必要なのか、繰り返し点検して。 「一個人では変わらないだろう」「発露させる場所もない」という人がいるかもしれませんが、私はそうは思わないんですね。これはもう何となくで根拠なんて適当に探してくれたらいいんだけど( ̄ー ̄) 人間はテレパシーの生き物ですから、真剣に悩んだり考えたりしたことへの地肉は、必ずどこかの誰かに繋がってお互いに影響しあってると思います。届かない手紙はないから。 |