The End.『深まる謎』


空太
「……………………」
(目覚めると、そこは病院のベッドだった)
果帆
「空太……!」
空太
「…………果帆」
果帆
「…………っ、良かった!」
空太
「…………ここは、……病院?」
果帆
「そうだ。あたしら、あれからたぶん、睡眠ガスで眠らされて……。
 学校の、体育倉庫で発見されたらしいんだ。
 …………あたしは、昨日目が覚めたんだけど、
 あんたは、3日間眠りっぱなしだったって」
空太
「…………他の、みんなは?」
(果帆は絶句したような顔をしたあと、唇を噛み締め、首を振るった)
果帆
「…………見つからないって」
空太
「そんな! せめて、ご遺族の方に遺体だけでも!」
果帆
「…………警察に根掘り葉掘り聞かれた。
 やっぱり、大ニュースだったみたいだ。
 何人か不審人物もいたけど、みんな、白だったって。
 …………わからないんだよ。
 どこの誰が、なんの目的であたしらをあんな目に合わせたのか。
 ……あたしらが、どこにいたのか。なにも、わからない」
空太
「…………それじゃあ!
 白百合から最後に託された約束は!」
果帆
「覚えてるよ。……犯人を、ぶっ殺す。
 …………でも、見つからないんだ……」
空太
「そんな…………そんなことって……」
果帆
「……………………」
空太
「……………………」
(俺たちは愕然とした。
 あんな目に合わせられたのに。
 あんなに、大勢が誘拐されて、殺し合いをさせられたのに。
 ……俺たちは解放されたのに。
 …………なのに、犯人の影がない。

 そんな…………そんなことってあるかよ……)
果帆
「……………………」
空太
「……………………」
紗枝子
「…………目覚めたみたいね」
空太
「……!!」
(あまり聞き慣れない声がした。
 声の方向を見ると、入院患者の服を着た水鳥紗枝子が、カーテンの隙間から顔を出した。

 …………一匹狼で、大人びた元クラスメイト。
 なぜ、彼女がここにいるんだろう)
果帆
「水鳥…………」
紗枝子
「よかったわね、間宮さん。
 本堂くんの目が覚めて」
果帆
「…………ああ」
空太
「え? いや待って…………どういうこと?
 なんで水鳥がここにいるの?」
紗枝子
「それは…………わたしもこの事件の被害者だったから」
空太
「……!!」
紗枝子
「あなたたちのことはね、別の部屋で、
 ずっとモニター越しに見せられていたわ。
 …………わたしはあなたたちと違って過酷なことはなにもされなかったけど。
 でも…………ゲームはさせられていた」
空太
「……!! ゲームって……どういうこと?」
果帆
「あたしも昨日、水鳥から話を聞いたけど、
 …………ますます、わからなくなった。犯人のことが」
紗枝子
「たぶん、直接犯人の声を聞いたのはわたしだけだわ。
 …………部屋に監禁されてね、時々、犯人から電話がかかってきたの。
 あなたたちがさせられていたゲームがどうなってるか。
 ……わたしがどんな気持ちでいるか」
空太
「………………」
紗枝子
「…………いい? 本堂くん。
 あなたたちは学校の関係者を疑っていたみたいだけど、
 犯人は、探そうとしても絶対に見つからない。
 なぜなら、彼らは場所を提供しただけで、
 ゲームの進行をしていたのは別の人物だから」
空太
「…………どういうこと?」
紗枝子
「…………菫谷昴。わかるわね?」
空太
「…………知ってるよ。
 菫谷も元クラスメイトだから」
紗枝子
「……そう。首謀者は、彼だったの。
 …………死んでしまったみたいだけどね」
空太
「……!!」
果帆
「水鳥が言うには、あたしらの他に、
 秋尾と、都丸…………それに、水鳥と如月仁が誘拐されていたみたいなんだ」
空太
「き…………如月も?」
(如月仁…………俺が苦手な元クラスメイトだ)
紗枝子
「そう。…………たぶん、ここにいないと言うことは、
 彼も殺されてしまったのだろうけれど……。
 …………本堂くんたちは、宍銀学園の関係者が犯人だと疑っていたわよね。
 確かに、…………これは、警察の人から聞かされたんだけど、
 宍銀学園はすこし、……いえ、かなり特殊で、
 暴力団と深い関係があったみたいなの」
空太
「…………やくざ?」
紗枝子
「そう。警察も始めは宍銀学園とその暴力団を疑っていたそうよ。
 …………でもね、無関係だった。
 警察が血眼になって探しても、犯人が誰なのか、わからないの。
 …………もちろん、わたしも」
果帆
「水鳥は犯人と話したんだよな?」
紗枝子
「…………ええ。でも、男の人と言うことくらいしかわからないわ」
果帆
「…………そうか」
空太
「ま、待ってよ。俺にもわかるように説明して。
 首謀者は菫谷。でも、犯人はわからない。
 でも、宍銀学園は暴力団と深い関係があって…………あれ? だから、つまり」
紗枝子
「なにもわからない、と言うこと」
空太
「…………!!」
果帆
「……………………」
紗枝子
「…………でもね、
 ひとつだけ、わかったことがあるわ」
空太
「な、……なに!?」
紗枝子
「……白百合さんと菫谷昴は、戸籍が、ないの」
空太
「……!!」
紗枝子
「白百合美海と菫谷昴は、この世に存在しない人物なのよ。

 …………そして、あのゲームは全て、
 白百合さんのために用意されたと言うこと」
空太
「…………ますます、意味がわからないや」
果帆
「あたしだってそうだ。
 …………美海が存在しない?
 でも! 中等部に入学してからずっと、あたしは美海と一緒にいた。
 親友だったんだ……なのに、戸籍がないって、どういうことだよ?」
紗枝子
「…………繭見沢一家惨殺事件は知っている?」
空太
「っ!! それって……!」
(俺が、あの書斎で見付けた新聞にあった記事だ)
空太
「知ってるよ!
 確か…………少年Aが自分の家族と、恋人の家族を皆殺しにしたって」
紗枝子
「…………そう。
 そして、少年Aの妹と、被害者宅の次男が未だに行方不明になっている、あの事件」
空太
「……………………」
果帆
「……………………」
紗枝子
「…………全てはね。
 …………あそこから、始まっていたの」
空太
(そうして俺は聞かされるのだった。
 …………白百合美海が、行方不明の少女、『閖白えりか』だったと言うこと。
 …………菫谷昴が、被害者の行方不明の少年、『墨谷昂太』だったと言うこと)


朔也
 !! 空太!!
朔也
 お、お前…………菫谷と仲良かったよな?
朔也
 …………ごめん、なんでもないんだ。


空太
(あの時の朔也を思い出した。
 …………もしかして、朔也は知っていたのか?

 自分が大切にしていた白百合が…………どんな存在だったのか)
果帆
「……………………」
空太
「……………………」
紗枝子
「……………………」
空太
(俺たちは無言になった。

 …………なにも終わっちゃいない。
 ゲームは終わったけど、なにひとつ、解決しちゃいないんだ。

 俺はみんなの顔を思い浮かべた)


圭吾
 今まで上手くやってたのにさ! なんで!
結翔
 俺は嫌だぜ! 投票するのも、されんのも!
冬司
 いいよ。……お願いしたのは俺だから。
惣子郎
 ……用心棒の人、よろしく頼む。


空太
(…………竜崎、目黒、小田切、筒井)


和華
 わたしがっ、死んだらっ……お父さんが生きていけないっ!
小桃
 …………誰なのかしらね、犯人は


空太
(七瀬…………佐倉…………)


花菜
 うちは人狼じゃない!!

 …………花菜はわたしの太陽だった。


空太
(小日向…………和歌野…………)


勝平
 …………俺が、人狼だったんだ。
由絵
 おやすみ、勝平。また明日ねえ〜?


空太
(勝平…………八木沼…………)


直斗
 …………俺にはもう、答えはわかった。
朔也
 空太…………俺、心配かけてたよな。

 俺だってこう見えて結構繊細なんだけどね?


空太
(直斗…………朔也…………アキラ…………)


美海
 …………みんな。
 ……………………ごめんね。


空太
(…………白百合)



空太
(……………………。

 事件はなにも…………終わっちゃいない)



【完】
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