029.16日目『初めての処刑』


 ――――PM20:45、会議室
小桃
「…………終了まで、もうすぐよ」
惣子郎
「…………45分か」
美海
「…………待って。本当にするの?」
朔也
「美海…………もう、それしか手がないんだ」
直斗
「…………投票で処刑しなきゃ、
 毎晩…………誰か一人が死んでいくんだな……」
美海
「待って、待って…………処刑なんて、みんなできるの?」
勝平
「…………やるしかないだろ。
 …………やらなきゃ、みんな無駄死になっちまうんだよ!」
美海
「…………勝平くん……」
結翔
「俺は嫌だぜ! 投票するのも、されんのも!
 絶対に嫌だからな!」
勝平
「…………うるせえな、負け犬かよ」
結翔
「な、なんだと…………?」
勝平
「いい加減にしろよ。
 …………ゲームを始める。大多数はそれで合意したんだ。
 …………じゃあ、そんなに嫌なら、お前、死ぬか?」
結翔
「ななっなに言ってんだよ!!」
勝平
「もうな、やるか、やられるかしか残ってねえんだよ、
 …………わかるだろ?」
惣子郎
「…………そうだな。
 頼みの警察も、来てくれる気配がない。
 全員死ぬか、少人数でも生き残るか、それしか道はないんだ」
和華
「…………頼みの道明寺くんも、もう、いないしね」
結翔
「……やだ、嫌だ、
 やだぜ絶対に! 俺は!

 なんで、なんでお前らはそんな風に考えられんだよ!!
 人狼誰なんだよ! くそっ! くそっ!」
空太
(…………目黒はそう言って、席を立って壁を殴り始めた。
 …………もし穴が空いたら、器物破損てことになるのかな……)
結翔
「くそっ! くそっ、くそっ!」
美海
「…………結翔くん」
結翔
「っっ、俺に触るな!!!」
美海
「っっ――――――――」


全員
「――――――!!!」


結翔
「…………ぁ……」
美海
「……ぃ、たぁ」
空太
(やんわりを制止をかけようとした白百合に、目黒の拳が直撃した。
 振り向き様に、白百合のシミひとつない美しい頬を…………)
朔也
「っ、……美海!」
果帆
「美海!」
勝平
「てん、っめえっ!!」
結翔
「わ、悪かったよ!
 ……白百合、わざとじゃ!!」
勝平
「間違っても女に手ぇあげてんじゃねえよ!」
結翔
「うるせえ!! お前に指図されたくねえんだよ!」
美海
「もうやめて!!」


全員
「……………………」


空太
(……白百合の声で、またみんなシーンと大人しくなった)
小桃
「……とにかく時間がないわ。
 …………投票に移りましょう」
結翔
「だから! 俺は嫌だって!」
惣子郎
「とにかく始めよう、本当に時間がない。
 …………白百合、君が言ったように殺せるかどうかはわからない。
 だが……なら、とりあえず投票だけでもとは思えないか?」
美海
「……………………わかったわ」
結翔
「白百合…………」
美海
「…………席に着きましょう、結翔くん」
直斗
「…………くっそ……」


全員
「…………………………」


惣子郎
「…………い、っせーの、っせ……」


全員
「……………………」


空太
(……結果は、こうだった。
 目黒に、七瀬、朔也、勝平、花菜、果帆、小田切
 勝平に、筒井、竜崎、目黒
 和歌野に、白百合、佐倉
 白百合に、和歌野
 小田切に、直斗

 俺はタイミングを逃して……誰にも票を入れなかった……)
惣子郎
「…………決まった、な」
冬司
「…………直斗、なんで、俺?」
直斗
「…………楽しそうに見えるからだ」
冬司
「…………そう」
空太
(小田切に1票
 白百合に1票
 和歌野に2票
 勝平に、3票
 目黒に…………6票)
結翔
「…………っっ!」
空太
(……目黒は、絶句していた。
 まさか自分にここまで票が集まると思ってなかったんだろう)


全員
「……………………」


空太
(沈黙が続いた。
 …………始めに声を上げたのは、目黒だった)
結翔
「ふ、ふ、ふ、ふざけんなっ!!!
 なんで、なんで俺なんだよ!!?」
果帆
「…………お前は、空気を乱す」
結翔
「はあ!?」
和華
「…………それよ。
 すぐに、大きな声を出すから…………ごめんなさい」
結翔
「なっ、なん、……なっ」
朔也
「……お前は美海を殴った。
 わざとじゃないとしても、俺はそれが許せない」
勝平
「…………話し合いにならねえやつはいらねえんだよ」
冬司
「……ごめん、俺も、同意見」
花菜
「うちは…………果帆と七瀬さんと同じ意見だよ……」
結翔
「な、なんっな、ななんだよ!
 お前ら俺殺すのかよ!?」
惣子郎
「…………目黒、すまない」
結翔
「ふざけんなよぉ!!!」
美海
「ま、待って、さっき、とりあえずって!
 本当にするの!?」
果帆
「美海、もう、仕方ないんだ」
直斗
「くそぉ…………できない、できねえよ」
小桃
「もう本当に時間がないわっ、みんな!」
圭吾
「…………くっそ!!」
空太
(始めに動いたのは竜崎だった。
 …………竜崎は複数の処刑道具が揃った箱を開けた。
 勝平がそれに続いた)
美海
「勝平くん!」
勝平
「スタンバトンとロープを使おう!」
果帆
「美海!」
空太
(……止めに入ろうとした白百合を、果帆と小日向が腕を掴んで止めた。
 身動きの取れない白百合の前方に、和歌野が立ちはだかった)
美海
「サキちゃん…………」

「美海は、わたしたちはここで大人しく見るのよ……」
結翔
「や、やめろよ! やめてくれ!!」
冬司
「目黒くん!」
朔也
「目黒!」
結翔
「は、離せ!! 離せえええええええええええ!!」
空太
(朔也と小田切が目黒を地面に押し付けた……。
 俺と直斗は…………その光景をぼんやりと眺めることしか出来なかった。
 …………なんで、なんでこんなことになってるんだ……。
 ついこの間までは、カラオケ大会したり、たこ焼きパーティーしたり、あんなに平和だったのに……)
惣子郎
「女子は見るな!!」
美海
「い、いやああああああ!」
空太
(勝平がスタンバトンを片手に持ち出した。
 …………竜崎は、ロープを……)
圭吾
「お、押さえろよ! しっかり!」
結翔
「やめろおおおおおおおおおお!
 やめてくれえええええええええええええ!
 うわあああああああああああああああああ!!」
惣子郎
「目黒…………すまない、すまない……、
 許してくれ……許してくれぇ…………」
結翔
「あああああああああああああああああ!!
 なんで俺なんだよぉおおおおなんでえええええ!!
 あああああああああああああああああぁぁあああ!!」
冬司
「勝平くん!!」
勝平
「うわあああああああああああ!!」
空太
(…………勝平は、スタンバトンを思いきり振り上げた。
 そして…………それは、目黒を直撃した)
結翔
「あがががががががががががががががががっ!
 っ……ぅ………………。
 ………………………………」
空太
(目黒は…………気絶した…………)
惣子郎
「…………早く、ロープに」
圭吾
「はぁ、……はぁ、…………俺は、嫌だぜ」
勝平
「…………俺がやる」
空太
(…………勝平は、ロープを目黒の首に掛けた。
 ……………………そして、)
結翔
「っが、…………ぐぉ、…………が」
空太
(……男子たちの力で、ゆっくりと、…………ロープが吊られていく……。
 …………目黒の足が、徐々に宙を浮く……)
美海
「っっ、…………っ」
空太
(果帆と小日向に捕らえられていた白百合が、膝から崩れ落ちた)

「…………うぅ」
空太
(それを合図に、和歌野が堰を切ったように涙まじりの呻き声を上げた)
花菜
「サキっ……」

「花菜…………」
果帆
「美海…………」
空太
(果帆は白百合を抱き締めた)
果帆
「見るな…………なにも、見るな……」
美海
「ぁ…………ぁ…………」
和華
「……………………っ」
小桃
「……………………」
空太
(七瀬は俯いて、顔を両手で覆い隠していた。
 佐倉は…………黙って見ていた。目黒が吊られる、その様子を……)
結翔
「かっ、…………っかっ…………かっ、
 …………………………かっ、…………、
 ………………………………………………」


全員
「………………………………」


空太
(やがて目黒も…………大人しくなった)



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