は?
005.1日目『施設探索』
――――AM11:45
(とりあえず、会議室にあった出入口の一つ。
観音開きになってる扉の方をみんなで移動することになった)
「…………廊下だね」
「だね」
「あれは…………トイレか……」
「なんだか……どこもかしこも悪魔の彫刻ばかりね」
「本当〜、気持ち悪いよ〜、
…………こんな彫刻だらけじゃ、由絵、あそこのトイレは絶対に使えない〜……、
ね、勝平?」
「………………」
「…………勝平〜?」
「…………ああ、悪い」
「勝平? どうしたの? ……気分悪い?」
「まあ…………よくはないよな」
「…………由絵、ちょっと」
「なあに〜?」
「…………勝平、大丈夫?」
「あ……ああ……」
「なんか、……らしくないよ……」
「無理もないさ。
勝平は…………秋尾と、仲良かったもんな……。
……秋尾のことは、本当に……なんて言ったらいいか」
「悪い……俺、気を遣わせてんな。
大丈夫だ。だから少し……放っておいてくれないか。
……時間をくれ…………」
「……ああ。
空太、行くぞ?」
「う、うん!」
「……ドアがある」
「ああ。……みんな、まず、俺とアキラが先に行く。
合図を送ったら、入ってきてくれ。
……アキラ、行こう」
「ああ」
「……空太」
「う、うん!」
(俺、朔也、直斗、竜崎は、
アキラと筒井の合図にすぐ答えられるようにここで待機することになった。。
女子を挟んで最後尾は、勝平と目黒、小田切に任している)
「………………?」
「いいぞ、入ってきてくれ」
「おっけー」
「…………リビングと、ダイニング?」
「あー、ここなら……、まだ落ち着けそうだな」
「悪趣味は変わらないけどね」
「まあ、そう言うなよ」
「そうだよ、サキ。
さっきよりは全然いいじゃない?」
「まあ、ね」
「美海、果帆、由絵」
「ん?」
「俺ら、施設周ってくるから。
みんなはここで休んでてな」
「……でも…………」
「ああ、頼んだよ」
「美海、お言葉に甘えちゃおうよ……。
無理しちゃダメだよ〜……」
「……うん……ありがとう」
「七瀬、……佐倉」
「ええ。小桃とここにいるわ」
「筒井くん……みんな、お願いします」
「あいよー」
「じゃ、さっきと同じメンバーで」
「ああ。……勝平はここで、みんなを頼む」
「ああ……」
「俺らは、さっきの会議室の、もう一ヵ所のドアの方を見てくる。
それが終わったら、こっちに戻ってくるな」
「わかった。
俺たちは、階段を探して一番上から見てくるよ。
なかったら一番奥から」
「頼んだぜ」
「うん。そっちも。
……行こっか、目黒くん」
「……ああ」
「じゃあな〜」
「……じゃ、果帆、行ってくるね」
「ああ。……気を付けて」
「うん」
「……アキラたちもね?」
「ああ」
「……心配すんなよ、すぐ戻ってくるから」
「うん……」
「……行くか」
「うん……」
――――会議室。
「やっぱり……この部屋は気味が悪いね」
「そうだな。例えるなら……儀式めいてるって言うか、
悪魔払いとかやってそうだよな」
「確かに」
「謂わば処刑場だからな」
「……アキラ」
「そうだろ、目的としては」
「まあねえ……」
「……あそこだな」
「ああ。……開けるぞ」
「うん……。
……………………、階段?」
「……どこに繋がってるんだ?」
「……降りてみよう」
「……なんか…………地獄に堕ちてるみたいだ」
「冗談でも言うなー、そう言うこと」
「ごめん。……朔也、びびってる?」
「うるせっ」
「はは……朔也でもそう言うのあるんだ」
「そりゃあるさ。……幽霊とか悪魔とか、大っ嫌いだよ」
「へえ〜、意外」
「アキラはこう言うの平気だけどな」
「そりゃそうだろ。
んな、非科学的なもんに俺が屈すると思うか?」
「思いません、思いませんとも」
「…………祟られても死にそうにないもんな、アキラは」
「図太そうだもんな」
「聞こえてるぞ」
「ごめん」
「俺だってこう見えて結構繊細なんだけどね?」
(どの口が言うか)
「………………ドアだ」
「………………」
「……開けるぞ」
「ああ……」
「ここは…………、なんか、すっげー埃っぽいけど、
……物置部屋かな? ロッカーみたいなのが」
「ああ」
「……薄気味わりぃ…………」
「………………?
……、――――! くそっ!」
「っ?」
「……どうした、朔也?」
「これを見ろよ……」
(メッセージカード……?)
死体安置所としてご使用下さい。
「っ!」
「……ふざけやがって」
「お…………お、い……」
「どうした? ……直斗?」
「……………………っ」
「直斗! 顔、真っ青じゃん!
なに? …………え?」
(あのロッカーになにかあるのか?)
「? ――――――――っっ!!」
(これは……っ、これは……っ!)
「なんだ、どうしたんだ!?
……っ!」
「あっ……秋、尾…………っ」
「うっ……ぇ……」
「空太っ、大丈夫か?」
「しっかりしろ、直斗……」
「あ……あ、ああ…………」
(秋尾だ…………さっき、殺されたばかりの、秋尾だ……)
「くそ、ここかっ」
「アキラっ!?」
「ここにもう一ヵ所ドアがある!
これが繋がってるんだ、さっきの映像の部屋に!」
「じゃ、じゃあ……犯人は、そこに……」
「ああ! もしかしたら、都丸もいるかも知れない!
おい! 犯人さんよう、いるか!?
――――都丸! 都丸、聞こえるか!?
聞こえたら返事をしてくれ! ――都丸!」
「ごめ……俺、もう、限界…………」
「あ、ああ! 直斗と空太は上へ戻れ!」
「だ、大丈夫、なの……? 犯人がいるなら……」
「大丈夫! いいから、上で休んでろ」
「わ、悪いな……朔也、アキラ……」
「…………ごめん……っ」
「おい! ――――おい! いるんだろ!?」
「……アキラ」
「ちっ…………ダメだ、ウンともスンとも言わねえ」
「……そう簡単に反応してくれるわけないか」
「ここの鍵を壊せればいいんだがな……たぶん、無駄だろう」
「なんで?」
「こんなに俺らの近い場所に留まってるとは思えないからな。
鍵を壊されたところで、痛くも痒くもないだろう。
…………それに、器物破損はルール違反だったよな」
「……そうか……」
「まあ、破損しなきゃいいんだろ?
あとで道具を探してみて……もう一度こよう」
「ああ…………」
――――会議室。
「はぁ……はぁ…………」
「……くっ……そ……ちくしょう…………」
「階段は二ヵ所?」
「そうだな。これより上は……行けないか」
「……階段はあるのにね」
「……この上に、犯人がいるのかな?」
「うん。そう考えるのが自然じゃない?
窓が一切ないなんて、そんな構造の建物、普通に考えておかしいよ。
たぶん、ここは地下なんじゃないかな?
それで、上には普通の住宅があったりして…………」
「まさか。普通のってことはないだろ」
「まあ、そうとうのお金持ちみたいだから。
よっぽど立派なお屋敷でも建ってるんじゃない?」
「一理あるが、想像の域は出ないな……」
「………………」
「どうしたんだ、目黒」
「いや…………お前らはすげーなって思って。
よく、そんなに冷静に考えられるよな……俺なんて……」
「仕方ないよ。
……それに目黒くんは、そうでなくっちゃ」
「はあ?」
「普段とあまり変わりないぞ?」
「はっ、はああ!?」
「普段から手が掛かるってことだバカ!
それに俺たちも、動揺してないわけじゃない。
でも、お前のおかげで却って冷静になれる部分があるのは…………事実だな」
「は、はあ? 貶してんのか? 褒めてんのか?」
「いや、褒めてるってわけじゃ」
「褒めてるよ?」
「……ははは」
「そ、そうかよ……んじゃまあ、許す…………」
「はははっ」
「んだよっ」
「おーいこら、ふざけるなー。
行くぞ……」
「お、おう!」
「……ここがその、例の自室みたいだね」
「ああ、顔写真が貼ってある……生徒手帳の写真だな」
「ったーく、どこの変態野郎の仕業なんだろうな?
……学校に精通してるやつ?」
「はあ!? うそだろ!?」
「いやまあ適当だけど……」
「あながち間違いじゃないかもよ?」
「いや……私物を奪われてるんだ。
生徒手帳はそこから拝借したんだろう」
「……………………。
……俺、生徒手帳なんか持ってたかなー」
「持ち歩いてないのか?」
「いや……、わかんねー……」
「俺たちの部屋は……ないみたいだね」
「ここは女子だな」
「…………勝手に開けちゃあ、まずいよな?」
「それはさすがに後が怖いからやめとこう」
「あそこの角の部屋はなんだよ?
なんかドアが違くね?」
「見てこよう」
「うん」
「………………書斎?」
「退屈しのぎにはちょうどいいじゃない」
「えー? なんか難しそうなのばっかじゃね?」
「漫画とかねえのかよ?」
「いやー、さすがにないだろー」
「特に異常はなさそうだな」
「そうだね」
「よし……次に行こう」
――――会議室。
「……………………」
「アキラ……、朔也……」
「…………戻ろう」
「うん……」
「白百合さん……、間宮さん……」
「……………………?」
「なあに? 小桃ちゃん……」
「……白百合さん、大丈夫?」
「…………ごめんね、心配かけて。
みんなも…………」
「あ……いや……」
「そんなの気にしちゃダメだよ〜……、
友達なんだから心配くらいかけさせてよ……」
「ありがとう、由絵」
「……勝平も、様子がおかしいし……」
「…………今一番辛いのは、たぶん、勝平だ」
「……秋尾くん…………」
「白百合さん、思い出したんだけど、
……あたし、昨日あなたを見掛けたの」
「本当……?」
「ええ。教室で、水鳥さんたちと話してるところよ」
「そのときは……あたしもいたよな?」
「うん…………」
「あ、そっか……ごめんなさい、白百合さんしか見えなくて」
「…………紗枝子ちゃんたちと、なにを話したかしら?」
「まあ……こんな風に話せるようになると思わなかったよな、とか、そんな話。
あいつ、中等部の頃はずっと一匹狼だったじゃん?
…………まあそれは今も変わんないけど」
「水鳥紗枝子…………。
わたし、一度も話したことないわ」
「うちも、業務連絡以外は全然……」
「…………一年間だけど、クラスメイトだったのにね」
「美海は健気だったよね〜、
軽くあしらわれちゃうのに、声かけてさ〜……」
「う、う〜ん……、仲良くなりたかったし」
「……仲良くなれたの?」
「うん、昔よりはね」
「美海やあたしは、距離感がちょうどいいんだと。
つるむ気はないけど、邪険にはされなくなったよな」
「そうね」
「……すごいね、白百合さん。
あのね……あたし、中等部の頃、その……色々あったんだけど」
「…………うん」
「……知ってる?」
「…………うん、少しだけど」
「そっか…………。
それでね、その頃に……弥重と、仲違いじゃないけど、傷付けちゃったことがあって。
それから全然……弥重が、秋尾くんと付き合うようになってからも、話せなかったんだけど……、
また同じクラスになって、最近、少しずつ……話せるようになったんだ」
「……そうだったの……」
「……………………。」
「………………。」
「…………人の心配してる場合じゃないけど、
あたし…………どうすればいいのかしら……?」
「……………………。」
「今は……なんとも言えないよ……、悪いけど」
「………………そうだよね。
佐倉さん、由絵もね、弥重ちゃんと仲良かったんだ〜……。
たまに、勝平と秋尾くんと弥重ちゃんの4人で遊んだりしたしぃ……。
…………あたしも、無事でいてほしいけど、どうすればいいのか」
「…………今は……、ここを出ることだけを考えよう。
それで、都丸のことも、なんとかしよう…………秋尾のためにも」
「戻ったぜー」
「ただいま…………」
「……………………」
「ど……どうしたの? 顔が真っ青よ……」
「あ……ああ…………」
「話は後だ。……筒井たちは?」
「まだ……階段があったって言ってた。
上じゃないか?」
「そうか……」
「地下倉庫があるって言ってたよな?
アキラ、そっちを探さないか」
「そうだな。それと、この階を見てみよう」
「ああ。…………直斗と空太は、ここに残れよ」
「えっ? そんな、申し訳ないよ……!」
「いいからいいから。な?」
「…………すまん……」
「おう」
「じゃ」
「な……なにが、あったの?」
「悪い……俺の口からは、ちょっと……」
「…………空太?」
「…………ごめん」
「……………………。
…………筒井くんたちが戻ってくるのを、待ちましょう」
「うん……そう、だね…………」
(それから30分後――――、
野郎共は帰ってきた。)