024.15日目『アキラの死』


 ――――AM08:30、会議室

人狼の襲撃が成功しました。

昨晩の犠牲者は、道明寺晶さんでした。



空太
「……………………」
(…………恐れていたことが、ついに現実になってしまった……。
 …………アキラの遺体は、野郎たちでベッドに横にさせ、部屋は開かずの間となった。
 アキラが死んだ。人狼の襲撃によって、殺された。
 …………昨晩、用心棒はアキラを守る約束だったんだ。
 ……………………それなのに)
冬司
「空太…………」
空太
「…………小田切……」
冬司
「……ふらふらしてるよ。
 …………平気? ……なわけ、ないか」
空太
「……俺、俺さ…………全然状況が理解できなくて。
 なにがあったのか、さっぱりで…………」
果帆
「空太…………」
空太
「……………………」
(隣にいてくれた果帆が、俺の手をそっと握ってくれた)
冬司
「…………初めから話すよ、いったい、なにがあったのか。
 …………みんなにも」
果帆
「……………………」
空太
「……………………」
(その場に、朔也と白百合と八木沼はいなかった)
惣子郎
「……………………」
直斗
「……………………」
冬司
「…………朝、7時半くらいかな。
 …………起きたら白百合さんが、アキラの部屋の前で泣いてたんだ。
 そしたら…………アキラが…………あんなことになってた。
 俺は、どうしたらいいかわからなくて、泣いてる白百合さんの肩を支えながら、呆然としてた。
 …………そこへ」
勝平
「…………俺が、出てったんだ。
 ……俺も早く起きたから、リビングに行こうとして……、
 それで、そこで泣いてる白百合と呆然としてる小田切を見付けた。
 ……見たら道明寺が死んでた。それで、お前らを起こしに行った」
冬司
「…………その間に俺は白百合さんを部屋に連れてってあげて、
 …………女の子たちの方は俺が起こして回ったんだ」
果帆
「…………美海は、なんだってそんな時間に、アキラの部屋へ?」
冬司
「……なんか、嫌な夢を見たって言ってたよ。
 心配になって、一応、確認してみようと思ったんじゃないかな」
果帆
「…………そうか」
空太
「……………………」
(白百合…………確かに、あの場にいなかった。
 みんなでアキラの死を確認した、あの場に……。
 …………第一発見者は、白百合だったんだ。彼氏の死を、初めに知ってしまったんだ…………)





 ――――AM09:30、リビングルーム
空太
「……………………」
果帆
「……………………」
空太
「…………果帆」
(白百合の様子を見に行っていた果帆が戻ってきた。
 ……きゅっと、唇を噛み締めながら)
小桃
「…………白百合さんは?」
果帆
「……朔也と由絵が付き添ってる。
 あんまり……部屋に慰めにいくのは勘弁してやって。
 だいぶ動揺してるんだ…………」
直斗
「…………そっか。
 ……七瀬の提案でオムライス作ったんだ。美海好きだったろ?
 …………せめてこれ、届けてあげてくれないか」
果帆
「ああ…………」
花菜
「あ。あたしと、サキが行っていい?
 せめて顔くらい…………見たいんだ」
果帆
「ああ、いいよ。……会ってやって」
花菜
「ありがとう。
 …………サキ、行こう」

「ええ…………」
空太
(……和歌野と小日向は、そうしてリビングを出て行った。
 5人分のオムライスを持って…………)
惣子郎
「……状況を整理したいんだ。いいか?」


全員
「………………」


惣子郎
「…………なんだってアキラはあんなことになったんだ。
 用心棒が守ってるはずだろ?」
冬司
「うん。それは昨日、……と言うか毎日だけど、全員で取り決めたことだったはず。
 …………だからつまり、考えられることは……」
和華
「……………………」
果帆
「…………用心棒が……裏切ったか」
結翔
「バ! 誰だよ!?
 用心棒の奴、出てこいよ!」
惣子郎
「落ち着け。
 高圧的になったって相手が萎縮するか反発するだけってわかるだろ?」
圭吾
「でも許せねえよな。
 今まで上手くやってたのにさ! なんで!」
和華
「待って…………。
 用心棒だって、本意じゃなかったかもしれないじゃない。
 手違いがあったのかも…………」
勝平
「それに、手を下したのは用心棒じゃなくて人狼だろ……」
直斗
「…………人狼だって本意じゃなかったさ……」
空太
「誰が……人狼なんだ?」
(俺は不意に、こんな言葉を口走っていた)


全員
「………………」


惣子郎
「…………やめよう。犯人探しなんて」
勝平
「だが…………このままにはしておけないだろ」
冬司
「様子を見よう。
 今日の夜、なにもなかったら、用心棒も人狼も本意じゃないってわかるはずだよ」
果帆
「…………どうする、今日の投票」
冬司
「俺から提案があるんだ。
 昨日までは、16人でちょうど票が割れた。
 今は15人、でも、3人に5人ずつ投票すれば決戦に持ち込めるよね。
 ……そして、この3人に4人ずつ投票すれば」
果帆
「ああ、そうか…………。
 それなら、また、……誰も処刑しなくて済むんだな」
冬司
「……本当に、本意じゃなかったかもだからさ。
 人狼も、用心棒も。
 …………問題は、今日の襲撃のことだけど」
惣子郎
「…………そう言えば、昨日、八木沼が」
冬司
「……………………」
勝平
「な、なんだ、由絵がどうした?」
惣子郎
「…………昨日、アキラと俺に、明日の襲撃は自分にしてくれって……」
果帆
「……………………」
小桃
「……な、なぜなの?」
惣子郎
「…………それはわからないが。
 あまりにも熱心だったから、根気負けして……」
勝平
「ま、待てよ!
 根気負けしてって、…………それって、由絵が襲撃役を買ったってことだろ!?
 ふざけるなよ、もしまた用心棒が裏切ったら……!」
惣子郎
「勝平、言いたいことはわかる。
 俺だって女子にこんな役割押し付けたくないさ」
冬司
「落ち着いて、勝平くん。
 …………昨日、俺もその場にいたんだけど。
 本当に熱心なお願いだったんだ。
 …………その場で、決まったことなんだ。仕方がないよ」
勝平
「仕方ないってなんだよ!」
結翔
「……そんなに言うなら勝平が用心棒に守ってもらえよ」
勝平
「あ? なんだと?」
結翔
「なんだよ、自分の彼女守りたいんだろ?
 だったらそうするのが道理だろ。
 それとも…………、できない理由でもあんのかよ?」
勝平
「……ああ?」
和華
「やめて、二人とも……っ」
小桃
「待って。そうよ…………。
 用心棒が守った先が人狼だったら、そもそも意味がないじゃない。
 だからこそ道明寺くんは、意図的に避けてるために昨日までのローテーションを組んでいたんだわ。
 なのに、千景くん……、何故あなたは、ローテーションから外れてるの?
 あなたなら率先して引き受けそうなのに、不自然だわ。
 一度も人狼の襲撃対象になってないのはどうしてなの?」
勝平
「……ああ? それは道明寺も言ってただろ。
 たまたまそこにいた面子で決めたって。勝手に決めたことだって。
 なのに……っ、そこにいきなり由絵が入るとか言ってるからおかしな話になってんだろっ」
小桃
「あたしはそんなことが言いたいんじゃないわ。
 ……なぜ、後からでも参加しなかったの?
 あなたは…………あたしが見る限りだけど…………、…………こんな場面で秋尾くんのことを引き合いに出すのも、あれだけど……、
 彼と違って、快活な人のはずよ。
 面倒見が良くって、人のために動ける人のはずだわ。
 そんなあなたなのに…………なぜなの、千景くん」
圭吾
「…………まさか、佐倉は勝平が…………、
 人狼だって……」
直斗
「なっ、おいそんなことで」
果帆
「待てよ。守られてないってんなら、あたしら女子はみんなそうだ。
 男子だって、小田切も目黒も、空太も同じだろ。
 ……勝平がローテーションに組まれてないってだけで、人狼だって決め付けるには根拠がなさすぎるんだよ」
小桃
「…………そうね。ごめんなさい。
 でも、だったら尚更、今晩は千景くんが引き受けるべきだと思うわ。
 この状況で彼女にそんな役をやらせるなんて」
惣子郎
「やめろよ!
 佐倉、どうしたんだよ、君らしくもない」
小桃
「………………」
惣子郎
「…………今晩は俺を襲撃してくれ。
 生徒会長として、責任を持って引き受ける」
圭吾
「よせよ、惣子郎。
 なんで会長ってだけでお前がそこまで責任取るんだよ」
惣子郎
「みんなが争うのが嫌なだけだ。
 だから、そうしてくれよ」
和華
「筒井くん…………」


全員
「……………………」


由絵
「ねえー、喧嘩なんてやめようよー」
果帆
「由絵!」
勝平
「由絵…………」
空太
(…………八木沼が、戻ってきた)
直斗
「…………美海は、大丈夫なのか?」
由絵
「うん。すこし落ち着いたみたいだよー、
 はいこれ、洗い物!

 …………今晩は由絵でいいよー。
 大丈夫、きっとなにかの間違いだもん」
勝平
「なっ、間違いかどうかなんて、わかんねえだろ!?
 もしものことがあったらどうするんだよ!!」
由絵
「いいって言ってるの!!!」


全員
「……………………」


空太
(八木沼は、なぜかわなわなと震えていた。
 …………唇を噛み締めながら……)
由絵
「…………由絵…………由絵、知ってるんだよ。
 勝平が…………勝平が、美海を…………」
勝平
「…………はあ?」


全員
「……………………」


勝平
「お前…………なにが言いたいんだ?」
由絵
「…………ごめん、みんな。
 …………ごめんね〜。

 とにかく、今晩は由絵でいいから。…………それがいいの」
勝平
「なに言ってるんだよ、…………なに、言ってるんだよ!」
由絵
「いいの!!
 …………じゃ、あたし、美海のところ戻るから〜、
 ばいば〜い〜!」
勝平
「………………」
空太
(勝平は、ゆっくりと椅子に腰を下ろした)
果帆
「…………勝平。
 知ってると思うけど、由絵は……言い出したら聞かないから。
 …………そーゆーやつだからさ」
勝平
「………………ああ」
空太
(八木沼…………頑固って聞いてたけど、本当にそうみたいだ。
 …………それよりさっき八木沼が言いかけてた、白百合のことってなんだったんだろ?
 勝平が…………白百合を…………?)


全員
「…………………………」


空太
(重苦しい空気の中、筒井の呼び掛けで解散することになった。
 その中、果帆は筒井を呼び止めていた)
果帆
「筒井、さっきのローテーションの話だけど、
 …………お前と竜崎、直斗に朔也、それにアキラの5人は、間違いなく村人ってことだよな」
惣子郎
「そうだな。それがどうした?」
果帆
「いや、なんでもないんだ。……ありがとう」
空太
「………………?」
果帆
「……空太、あたしの部屋に行こう」
空太
「…………? お、おう」





 ――――AM10:25、果帆の部屋
空太
「…………つまり、もしゲームをしなくちゃいけない状況になっても、
 その朔也と直斗、筒井と竜崎の4人を守れば村人の勝利は確定ってこと?」
果帆
「いや、確定とは言えない。
 例えば、4人の中に裏切り者がいたら……人狼3人と村人4人だとしても、裏切り者が村人に投票してそいつが処刑されたら、人狼側の勝利。
 夜、襲撃されたとしても人狼側の勝利だ」
空太
「…………そっか」
果帆
「……でも、少なくとも村人なのは間違いないんだ。
 万が一のことがあっても、投票はしちゃいけない、絶対に」
空太
「…………でも、投票で避けたとしても、夜襲撃されたら終わりなんじゃ」
果帆
「そうなんだよな。
 でも、無駄な投票はさけられるはず。
 …………まあ、そんな状況にならないことを願ってるけどさ」
空太
「…………白百合の様子は?」
果帆
「うん…………、ずっと朔也がそばに着いてるよ」
空太
「……しょうがないよ。恋人がこんなことになって……、
 …………俺だってもし、君になにかあったら」
果帆
「そーゆー話、やめようぜ。
 あたしだってお前になんかあったら……」
空太
「…………果帆はいいの?
 白百合に着いてなくて」
果帆
「うん…………考えたんだけどさ、
 あたしはお前がいるじゃん、生きて、ここに。
 だから、あたしがそばにいたらつらいんじゃないかって……。
 あたしよりも、ずっと美海のこと大切に思ってる朔也が一番必要なんだよ、今は」
空太
「…………朔也はさ、やっぱりまだ、白百合のこと?」
果帆
「…………ああ。
 複雑だよな…………親友が死んで朔也もかなり参ってるはずなのに、
 それでも美海のこと放っとけないんだ。
 わかるよ……、あいつはそういう奴なんだ」
空太
(…………よっぽど好きなんだな、白百合のこと……。
 そりゃ、そうか。
 …………ずっと温めて来た恋心だもんな)
果帆
「とにかく、…………空太もさ、あんまり思い詰めるなよ。
 …………あたしは、正直、アキラを殺したやつがこの中にいるって思うと…………どうにかなりそうだけど……。
 でも、人狼だって好きでやったわけじゃないはずだ。
 …………みんなのために、全滅を避けるために、仕方なくだったんだ、……きっと」
空太
「うん…………そうだよ。
 俺は…………そう、信じるよ」
果帆
「…………ああ。あたしもだ」



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