007.1日目『空太と果帆』


 ――――空太の部屋
果帆
「四畳半くらいって言うからどんだけ狭いんだと思ったけど、
 案外、広いな」
空太
「そうだね……」
(犯人はよっぽど西洋かぶれなんだな。
 自室って言うけど、こんなんじゃ落ち着かないよ…………。
 直に慣れるのかな…………)
果帆
「…………空太」
空太
「うん?」
果帆
「あの、さ……」
空太
「うん」
果帆
「無理……すんなよ?
 筒井はなるべく一人になるなって言ってたけど、
 美海もそうだけどさ、誰だって一人になりたいこと、あると思うんだよ。
 こんな状況じゃ、誰も責めないよ」
空太
「…………どういう意味?」
果帆
「一人になりたかったら、あたし、出てくし」
空太
「なんで? …………いてよ。
 一人じゃ、心細いしさ……」
果帆
「…………いいのか?」
空太
「うん……。それに、果帆のことも心配だし。
 俺、頼りないかも知れないけど、……そばにいるくらいはさせてよ」
果帆
「…………ごめんな」
空太
「なんで謝るの?」
果帆
「……なんにもできないから、あたし。
 こんなことになって、お前を元気付けることもできない」
空太
「それを言ったら俺だって」
(アキラや筒井に任せっきりで、言われたことしかできないし、
 …………秋尾を見て、気分が悪くなって逃げ出したし。
 野郎共はあの部屋に行ったけど、俺はのこのこ部屋に来ちゃったし…………、
 本当、情けないよなあ……)
「…………ごめんね、頼りない彼氏だけど」
果帆
「そんなことない!」
空太
「………………」
果帆
「……目黒やサキに突っ掛かられた時、何度か庇ってくれたろ。
 嬉しかった…………その……ありがと、な」
空太
(お礼言うだけなのに、真っ赤になってる……。
 こーゆーところ見ると、未だにすごく感動するんだよね。
 やっぱり、俺、果帆のこと好きなんだなあ……)
「当然だよ! 俺は……果帆のこと、心の底から信頼してるし」
果帆
「…………ありがと、
 あたしも……信頼してるよ、あんたのこと」
空太
「うん」
果帆
「………………」
空太
「………………」
果帆
「………………」
空太
(まずい、会話がなくなっちゃった。
 もともと果帆は口数が多い方じゃないし……、
 どうしようかな…………)
果帆
「………………」
空太
「あ、あのさ」
果帆
「あ、ああ」
空太
「……白百合、さ……大丈夫かな」
(あんな白百合、見たことないもんな)
果帆
「……あたしも心配だよ。
 美海はさ、弱味をあまり見せないってゆーか……、意外かもだけど、甘え下手なんだよ。
 秋尾のことも責任を感じてるだろうし…………あたしもあんな美海初めてで、どう接したらいいか……」
空太
「そっか…………。
 …………………………。
 あのさ、思ったんだけどさ」
果帆
「ああ」
空太
「ゲームの話なんだけど」
果帆
「ああ……」
空太
「カードを見た後のみんなの反応でさ、誰が人狼なのか想像はできるんじゃないかって、俺、思うんだよね」
果帆
「…………へえ?
 空太にしては、意外にいい線行ってると思うけど」
空太
「はは、俺にしてはって一言余計!
 それでさ、すこし考えて見たんだけど」
果帆
「…………うん」
空太
「…………全然わかんない」
果帆
「バカかお前は!」
空太
「わったた、やめて叩かないでっ、
 俺が思ったのは、小田切は村人なのかなってくらいでっ」
果帆
「へえ? 理由を聞こうじゃないか」
空太
「いやほら……筒井がさ、役職バラそうって提案したとき、真っ先に否定してたじゃん?
 人狼だったらそんなことしないんじゃないかなって」
果帆
「どうかな?
 人狼は疑われたら最後だろ。
 あたしだったら、敢えて村人に優位な発言をして、自分から疑いをそらすかもな」
空太
「え、えぇえ〜? めんどくせー!
 じゃあ小田切が人狼ってこと?」
果帆
「いやいや、そうとは言わないよ。
 だけど、そんなん判断材料にならないってこと。
 それにその論理で行くと、明らかに気落ちしてる美海や勝平なんてものすごーく怪しいだろ。
 それに、場を支配してるアキラや、やたらカリカリしてるサキも。
 あたしやあんただって同じことだよ」
空太
「そ、そうか…………」シュン
果帆
「ま、いい線は行ってるって。
 要するに心理戦なわけだろ?
 人の心理ってのは言葉では上手く繕えても、行動や表情では嘘が付けないからな。
 よく観察することが大前提だと思うぞ。

 …………まあ、ゲームをやるかどうかは、さておき」
空太
「そ、うだよな。
 ごめんな、俺、犯人探しみたいな真似してさ……」
果帆
「いや…………今はみんなを信じよう」
空太
「……ってことは、果帆はアキラが提案したみたいに、
 票が割れるようにって考えてる?」
果帆
「当然だ。殺し合いなんて真っ平だかんな。
 美海も由絵も、アキラや朔也たちも、……大切な仲間だ。
 それにお前は……大切な、た、大切な…………恋人だ」
空太
「……果帆…………」
果帆
「な、なんだよ……」
空太
「……好きだよ」
果帆
「な、なななんな、な、な、なんだよ唐突に!」
空太
「いや、唐突に愛を伝えたくなった」
果帆
「バッカじゃん!!」
空太
「ははは……」
(秋尾や都丸のことがあった。
 笑ってる場合じゃないのはわかってる。
 けど、今は……今だけは…………)




 ――――ダイニングルーム
冬司
「おかえり、みんな」
圭吾
「おう」

「都丸はいなかった」
冬司
「そっか…………。
 それじゃあ、収穫はゼロ?」

「まあ、やっぱりあのモニターの部屋と繋がってたことくらいだな」
朔也
「そうだな。犯人もいなかったし」
直斗
「ああ」
惣子郎
「小田切、目黒、いいか。
 休憩に入る前に伝えたいことがあるんだ」
冬司
「うん」
結翔
「……なんだよ?」
惣子郎
「今日の投票なんだが、やはりさっきアキラが提案した方法で試したいと思う」
冬司
「うん。俺もそれがいいと思うよ」

「そこでだ、今日は、俺と朔也で票が割れるようにしてほしい」
結翔
「……いいのかよ?」
朔也
「ああ、大丈夫」
圭吾
「……一番危険なのは惣子郎なんだぜ?
 なんてったって」
惣子郎
「ああ。用心棒に守って貰う役は、俺が引き受けた」
結翔
「まま、マジかよ!」
惣子郎
「ああ。6時の集合で改めて伝えるつもりだ。
 とりあえず、いったん解散しよう。
 なるべく一人にならないように、みんな、休もう」
直斗
「正直、疲れたわ」
結翔
「そうだよな……」
冬司
「部屋が狭いから、二人ずつが限度だね。
 俺は目黒くんと一緒に休むよ。
 筒井くんは竜崎くんとでしょ?」
惣子郎
「ああ、圭吾、いいか?」
圭吾
「もちのろん」
惣子郎
「……古いぞ」
圭吾
「うるせー」
朔也
「……俺らは三人で固まるか?」
直斗
「ああ」
冬司
「あ、アキラ。間宮さんから伝言なんだけど」

「どうした?」
冬司
「……白百合さん、一人でいるみたいなんだ。
 間宮さんが顔だしてあげてって」

「…………そうか」
結翔
「し、白百合、本当にすげー落ち込んでて……。
 悔しいけど、お前……側にいてやれよ」

「目黒…………」
直斗
「…………行ってやれよ、アキラ」
朔也
「俺らは二人で休むよ。
 美海のことは、任せたからさ」

「……ああ」
惣子郎
「それじゃ、また、6時にな」




【残り:16人】


PREV * NEXT



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -