028.16日目『16日目の投票』


 ――――PM20:30、会議室
惣子郎
「とにかく、やると決まった以上は、覚悟するしかない。
 今後…………俺たちは殺し合いをしなければならないんだ」
圭吾
「……………………」
勝平
「…………もうとっくに、覚悟はできた。
 初めてくれ」
果帆
「そんなこと言ったって、情報がなさすぎる。
 …………誰が人狼かなんて、さっぱり」
小桃
「…………情報は、あるわ」
朔也
「……………………俺たちは、村人と確定している。
 俺と、直斗と竜崎、筒井の四人は、な」


全員
「……………………」


和華
「……今までは、楽観視しすぎたのよ。
 こんなところで、あのローテーションが生きてくるなんて」
果帆
「投票するにしても、この四人は完全に外して問題ないんだな」
圭吾
「…………そう言ってくれるとありがたいねぇ」
美海
「あ、あの…………それじゃ、あたしから一つ、話があるわ」
果帆
「…………どうした?」
朔也
「美海…………?」
美海
「あたし、…………あたしね、
 ……………………『占い師』なの」


全員
「……………………!」


小桃
「ほ、本当に? 白百合さん…………」
美海
「嘘だったら恐くて…………こんなこと言えないわよ」
惣子郎
「そうか…………白百合、君だったんだな。
 それじゃあもしかして、誰が人狼かもう知ってるんじゃ」
冬司
「待って。白百合さんを完全に信じるにはまだ早いよ。
 …………他に、いないの、……『占い師』の人は。
 …………いたら手をあげて」


全員
「……………………」



「…………わたしも、そうよ」
美海
「えっ?」
空太
「…………どういうことだ」

「美海は嘘をついているわ。
 …………わたしが本物の占い師だから」
結翔
「ちょ! 勝手なこと言うなよ!
 白百合が嘘言うわけねえだろーが!」

「……あなたね、美海ご贔屓なのは結構だけど、
 彼女だって人狼の可能性があるのよ?
 わかってないの? どうしたの?」
結翔
「うるせえええ!
 白百合は嘘なんか吐ける女の子じゃねえんだよ!」

「…………あなた、美海を神格化しすぎだわ。
 …………盲目すぎて気持ち悪い」
結翔
「気持ち悪いっっ…………なんだと!」
美海
「やめてよ結翔くん! 話し合いが進まないわ!」
冬司
「…………時間もないよ」
惣子郎
「…………もう、半前になるか……」
美海
「と、とにかく、サキちゃんがなんの目的があってこんなこと言ってるかわからないけど、
 本物の占い師は、あたしだからっ」

「嘘を言っているのは美海よ。
 わたしが…………本物だもの」


全員
「……………………」


直斗
「…………なんで言おうと思ったんだ?」
美海
「……あたし、やったことないからわからないけど。
 …………占い師って、人狼か村人かわかるんでしょ?
 …………人狼を探すのには重要な役割なんじゃないの?
 なら、すぐに打ち明けて、用心棒にお願いした方が」

「白々しいわよ、美海。
 …………だいたい、あなたが占い師だったら、こんなに上手い話はないわよ。
 あなたみたいに人に愛される人が、占い師だなんて…………犯人、なにも考えてないのね。
 ちゃんちゃらおかしいわ。…………みんな、あなたのことならすぐに信じてしまうだろうから」
美海
「…………あたしを買い被ってるの?
 …………仕方ないじゃない、カードにそう書いてあったんだから」

「犯人は村人に圧倒的な勝利をしてほしいのかしら。
 出来すぎた話なのよ!」
美海
「…………そんなこと、言われたって」
果帆
「…………それを言ったらサキだって出来すぎてる。
 …………サキみたいに、いかにも周りに無関心で? 誰も信用しないし信用されない、
 そんなあんたが占い師かよ。…………ちゃんちゃらおかしいだろ。
 …………犯人は人狼に勝利させたいのかな?」
和華
「待って、待って、不毛な争いよ」
惣子郎
「…………ああ。水掛け論だな、これじゃ」


全員
「……………………」


結翔
「俺は白百合を信じる…………」
美海
「じゃ、じゃあ!
 サキちゃん、占いの方法は知ってるの?」

「…………知ってるけど」
美海
「言ってみてちょうだいよ。…………ねえ」

「…………美海が先に言いなさいよ」
美海
「……………………」
朔也
「待て。…………美海、昨晩まで、誰を占ってたんだ?」
美海
「……………………」
朔也
「…………ここに来て16日目だ。
 全員分、回れたろ」
美海
「……………………」
空太
(…………白百合は、ゆっくり首を振るった)
朔也
「…………なんで」
美海
「わからないけど…………初日、11時にパソコンの電源入れたけど、
 あのね、…………11時になるとね、パソコンの電源が入るようになっていたの。
 それで、画面にみんなの名前が羅列されたんだけど……『本日の占いはできません』って、そう文字が表示されたの。
 だからね、占えなかったの。次の日もそうだった。
 だから、なーんだ使えないんだと思って、それで、それからは見てないの。
 …………見てなかったの、昨日の晩までは」
和華
「…………昨日の晩?」
直斗
「…………昨日は、占えたのか?」
美海
「………………うん。
 たぶん…………アキラが、……死んだからだと思うっ」
空太
(…………白百合はそう言って、すこし鼻を啜った。
 アキラのことを思い出したせいだろう)
果帆
「美海…………誰を占ったの?」
美海
「…………ごめんなさい。こんなことになると思わなかったから。
 ……………………本堂くんよ」
空太
「え、俺?」
美海
「うん…………村人だった」


全員
「……………………」


空太
「……なんで俺占ったの?」
美海
「……あたしも色々考えたんだけど、
 朔也、それに直斗くん、筒井くんと竜崎くんは、間違いなく村人なんでしょ?
 ……残る男の子たち、本堂くん、それに勝平くん、結翔くん、小田切くんの中で、誰が人狼だったら一番恐いかなって考えたの。
 …………頭の良い小田切くんが人狼だったらすごく嫌だけど、それより…………親友の果帆の恋人で、なにも害のなさそうなあなたが人狼だったら…………実は一番、それが恐いんじゃないかって。
 …………だから、あたし」
空太
「…………それって、俺は無害なの?
 こわいやつなの?」
美海
「だから、無害そうな人が人狼だったら恐いなって。
 …………だって、票が集まらないでしょ?」


全員
「……………………」


圭吾
「…………なるほどな」
冬司
「確かに、空太は可もなく不可もなくって感じだもんね」
空太
(…………軽く貶されたことに、今は怒りも湧いてこなかった)
小桃
「…………なんか、白百合さんの言っていることは、筋が通っている気がするわ」
美海
「…………でもね。彼は村人だった。
 …………だから、大丈夫。安心して、果帆」
果帆
「…………ありがとう」

「ちょっと、待って。
 わたしも占ったわ。…………美海と一緒で、昨晩だけだけど」
結翔
「お前が本物ならなんで昨晩だけなんだよ!?」

「さっき美海が言っていたことと大方同じよ」
結翔
「はあ? …………怪しいな」
花菜
「…………おい、あんまりサキに突っ掛からないでよ。
 サキは体が弱いんだよ!」
結翔
「知ったことかよ!」


全員
「……………………」


冬司
「…………目黒くん、白百合さん贔屓もほどほどにね」
惣子郎
「…………そうだ。
 今は、とにかく多くの情報を集めることが大切なんだ」

「とにかくわたしは、…………千景くんを占ったわ」
勝平
「はあ?」

「…………村人だったけど……」
小桃
「………………」
和華
「………………」
果帆
「…………なんで勝平占ったの?」

「……わたしとは一番人種が遠いから。
 喧嘩が強くて、非行少年で、…………彼が人狼だったら恐いもの」
花菜
「……勝平が人狼だったら、勝てる気がしないね。
 …………力の意味でだけど」

「そうよ。だから占ったの。
 …………もういい?」
冬司
「…………わかった。
 …………みんな、今日の投票からは、白百合さんと和歌野さんは外そう。
 …………占い師を名乗っている以上、処刑はしちゃダメだ、絶対に」
圭吾
「…………けど、どっちかが嘘を言ってんじゃないのかよ」
冬司
「どちらかは確実に嘘を吐いてるだろうね。
 でも、今それを判断できる? できないでしょ?」
直斗
「…………そうだけど。
 …………そうだけど、さ」
惣子郎
「待て、整理しよう。
 白百合と和歌野が占い師を名乗り出たってことは…………つまり、」
冬司
「片方は本物、片方は人狼…………もしくは、裏切り者」


全員
「……………………」


惣子郎
「裏切り者か…………」
冬司
「……下手したら、片方が人狼で片方が裏切り者かもね?」
惣子郎
「そんなことあるのか」
冬司
「あるよ。例えばアキラか八木沼さんのどっちかが占い師だったら?」


全員
「……………………」

美海
「……………………」
直斗
「いや、待てよ、その確率は低いだろ」
冬司
「まあ、8分の1の確率だけどね」
果帆
「…………どっちにしろ、とりあえず占い師の話を信じなきゃ始まらないんじゃないのか?
 美海か、サキ…………どっちかが本物って前提で」
冬司
「…………そうだね」
空太
(…………不思議なものだけど。
 …………小田切は、きらきらしていた。
 …………純粋にゲームを楽しんでいるように見えた。
 経験者は…………小田切だけだもんな、もう)
朔也
「…………話の腰を折るけど、いいか?」
果帆
「ああ……」
朔也
「俺…………俺さ、
 『共有者』のカード、引いたんだよな」
空太
「えっ」
惣子郎
「そ、そうか、……そうなのか!
 これは…………固いんだよな」
冬司
「うん…………朔也は村人って確定してるからね」
和華
「共有者って…………確か」
小桃
「ええ。二人いるはずよ」
惣子郎
「それでもう一人は誰なんだ?」
朔也
「…………もう一人は名乗りでない。
 二人で話し合って、そう決めた」


全員
「……………………」


結翔
「な、なんでだよ!」
冬司
「…………人狼を罠にかけるため」
空太
「え?」
冬司
「つまり、こう言うこと。
 例えば、空太がもう一人の共有者だとして、
 そして、白百合さんが人狼だとして、
 空太を占って『人狼でした』って言ったとするでしょ?
 でも…………」
空太
「ああ、そっか。
 …………もう一人の共有者は俺が人狼じゃないって知ってるから、嘘を吐いてるってバレるんだ」
冬司
「そう言うこと。
 …………ましてや、朔也は村人と確定してるから、そこは誰にも疑えないしね。
 …………すごくいい一手だと思うよ、朔也」
勝平
「…………お前さ、純粋に、楽しんでんじゃねえか?」
冬司
「え?」
勝平
「そうだろーがよ。すごくいい一手だとかなんとか。
 …………これはただのゲームじゃない、殺人ゲームなんだよ……っ!
 現にもう、四人も死んでるんだよっ……!」
冬司
「…………ごめん。配慮が足りなかった」


全員
「……………………」



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