034.17日目『夜の時間』


 ――――PM21:00、リビングルーム
空太
「……………………」
(体が震える…………)
果帆
「…………空太」
空太
「大丈夫…………大丈夫だから…………」
(…………吊ったのは、俺じゃない。
 でも、小日向にスタンバトンで感電させたのは俺だ。
 初めて人を殴った。あの感触は、忘れられそうもなかった。
 …………こびれついて、剥がれそうになかった)
圭吾
「……お前のせいじゃねえよ」
朔也
「……そうだ。みんなの、せいだ」

「……………………」
果帆
「…………違う。サキのせいだ」
空太
「果帆…………?」

「…………なによ」
果帆
「なんで…………なんで!
 お前らあんなに仲良かったじゃないかよ!
 …………それなのに……売るなんて……」

「人狼だったんだからしょうがないでしょ?」
美海
「サキちゃん…………」

「わたしだってしたくてしたわけじゃないのよ。
 …………でも、花菜が人狼なら、
 きっと人を殺すことなんてできないと思うから…………、
 苦しんでると……思うから……、だから告発したの。
 …………これでも思いやりよ、悪い?」
果帆
「…………っ」


全員
「……………………」


美海
「…………いや、もういやよ……」
朔也
「美海…………」
美海
「なんでこんなことになっちゃったんだろう…………。
 この前まで、みんなで楽しく過ごしてたのに…………過ごせてたのにっ」
空太
「…………白百合」
直斗
「…………俺は、ここでお前らとずっと暮らしてても、それはそれでいいと思ってた」
美海
「…………うん」
直斗
「いつまで経っても、……助けが来なくても、
 お前たちのことが大切だったんだ」
美海
「…………うんっ、直斗くん」
直斗
「……くそぉ……花菜……花菜を殺した。
 目黒も……俺たちが…………この手で」
勝平
「…………仕方ねえだろ、やらなきゃなられるんだ。
 …………俺だってな、由絵を失うくらいなら死んだっていいと思ってたよ。
 だが…………人狼が由絵を殺した。用心棒のせいだ。
 俺は許さない、絶対に」
和華
「…………わたしは、生きてここを出たいわ」
小桃
「…………和華?」
和華
「みんな…………黙ってたけど、実は…………、
 わたしのパソコンに犯人から知らせがあったの。
 …………お父さんが、倒れたって」


全員
「…………!!」


和華
「……急性心筋梗塞だって。
 …………犯人、わたしたちの家にも監視カメラを仕掛けてるわ。
 …………そんなことができるのよ?
 そんな犯人が用意したこの舞台に、警察が助けに来てくれるなんてもう、信じられない」
小桃
「……………………そうだったの」
和華
「他に…………犯人から知らせが来た人はいないの?」


全員
「……………………」


和華
「…………そう」
冬司
「……どっちにしても、もう、5人も死んだ。
 今更後戻りなんてできる?
 …………もう汚れちゃってるんだよ、俺たち」
朔也
「…………村人か、人狼か、もうどっちかしか残っていないんだな、道は…………」
冬司
「…………とにかく、本当に小日向さんが人狼だったとして、
 残る人狼はあと二人だよ…………。
 最短でもあと二日かかる。……最低でも、あと四人死ぬ」


全員
「……………………」


直斗
「…………サキちゃんさ」

「…………ええ」
直斗
「昨日なんで花菜占ったの?」

「…………大切な人だったからよ」
直斗
「…………そうか」
美海
「でもあなた…………嘘吐いてるじゃない」
冬司
「とにかく、…………明日の霊媒結果でそれははっきりするよ。
 小日向さんが人狼だったら、本物の占い師は和歌野さんだし、
 小日向さんが村人だったら、本物の占い師は…………白百合さんだ」
果帆
「…………明日、はっきりするんだな」
朔也
「…………俺は美海を信じる」
美海
「…………ありがとう、朔也」
冬司
「…………用心棒、まだ、残ってるかな」
圭吾
「…………どうだろうな。
 あれからもう、だいぶ死んじまったし」
冬司
「俺から提案なんだけど、
 用心棒の人さ、残ってたらなんだけど、
 …………今晩は直斗を守ってほしいんだ。
 理由は今言ったように、どっちが本物の占い師かはっきりするから」
圭吾
「…………人狼は直斗を狙うのか?」
冬司
「いや…………そうとも言えない。
 白百合さんか、和歌野さん、どっちかを狙う可能性も高いと思う。
 でも、用心棒だって誰を守ればいいか、困ってるんじゃないかな?
 どっちか本物かわからないんだから…………だから、だったらはっきりさせるためにも、直斗を守るべきだと俺は思う」


全員
「……………………」


勝平
「…………そんなに上手く行くか」
冬司
「……ま、もういないかもしれないけどね」


全員
「……………………」


空太
(アキラと筒井が死んで、解散を言い出すやつがいなくなった。
 俺たちはそのまま、誰も喋ることもなく…………ただただ時だけが過ぎた。
 …………始めに席を立ったのは、和歌野だった)

「…………お風呂に入るわ。
 …………体が気持ち悪いし、胃が、痛い」
和華
「和歌野さん…………付き添うわ」
小桃
「…………あたしも」

「ありがとう、二人とも」
朔也
「…………俺たちも解散しよう」
果帆
「そうだな…………。
 美海…………サキの顔見てるの辛いかも知れないけど、
 …………一緒に入っちゃおうか」
美海
「……そうね、後ろもつかえるし、ね」
果帆
「ああ。…………じゃ」
美海
「みんな……明日ね。おやすみなさい」
朔也
「おやすみ」
直斗
「……こんなときでも、風呂に入る気力だけは残ってるんだな」
冬司
「……倉庫に着替えもあるし、
 …………どことなく、不快だからね。
 洗い流したい気持ちはわかるよ」
圭吾
「…………俺は、着替えたら明日入るわ。
 …………ひとりになりたい」
冬司
「…………うん」
圭吾
「…………じゃあな」
直斗
「ああ…………おやすみ…………」
空太
「……………………」
朔也
「空太…………」
空太
「……どうしても、震えが止まらないんだ。
 …………俺、神経どっかおかしくなっちゃったのかな」
直斗
「…………空太」
空太
「飯の味もわかんないし……おかしいよな」
冬司
「……みんな、似たようなものだよ」
空太
(直斗が俺の肩を軽く叩いた。

 …………風呂が終われば、夜の時間が始まるんだ)





――――16日目、終了



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