027.16日目『もう逃げられない』


 ――――PM20:00、会議室
惣子郎
「………………」
和華
「………………」
圭吾
「………………」

「………………」
空太
「………………。」
(…………重苦しい空気が、場を支配していた。
 もはや今日は、みんな、部屋にとじ込もっていた。
 八木沼の死を確認してから、果帆以外とこうして顔を合わせるのは初めてだった。

 …………5分ほど、経過しただろうか。
 重苦しい沈黙を破って、口を開いたのは筒井だった)
惣子郎
「…………もう、誤魔化しは効かない」
直斗
「………………」

「…………遊びは、もう終わりね」
結翔
「…………なんだと?」
惣子郎
「やめろ。…………和歌野、言い方に気を付けてくれ」
空太
(筒井にはもう、普段の温厚さはなかった。
 再び、沈黙が支配する)

 ………………。

冬司
「…………人狼と用心棒、名乗り出て」


全員
「………………」


冬司
「…………そうすれば、全てが終わるんだ」
結翔
「そ、そうだ!
 人狼が自白すれば全ては解決するんだ!」
小桃
「…………心中を目的とした自白は、全員の死……だったじゃないかしら」
結翔
「そ、それは…………でも、ここは会議室だろ?
 会議室では許可するって、パソコンでも書いてあったじゃねえかよっ」
朔也
「…………必要に迫らせた場合のみ、じゃなかったか?」
結翔
「必要に迫られてるだろ!
 みんなの、全員の命がかかってんだから!」
勝平
「犯人と俺らの解釈は違うだろ。
 うっかり自白して全員死んだらどうするんだ? お前は」
結翔
「ああ!? そんなの俺が知ったことかよ!
 …………じゃ、自白しなくてもいいから、人狼はとっとと死んでくれよっ、
 勝手に自殺する分にはルール違反じゃねえだろ!」
勝平
「だから。解釈が違うんじゃねえかって言ってんだよ。
 わかんねえやつだな」
結翔
「……なんだとこの野郎!!」
惣子郎
「よさないか!
 どうして冷静に話し合いができないんだ!
 言い争ったってなんにも解決しないんだ!」


全員
「……………………」


和華
「…………筒井くんも、冷静になって」
惣子郎
「…………すまん」
空太
(…………あそこまで声を荒げるなんて、筒井らしくない。
 …………はは、もうみんな、らしさなんて、ないか)
朔也
「…………全員死ぬリスクがある以上、俺は、自殺はすべきじゃないと思う」
小桃
「…………そうね、あたしもそう思うわ」
果帆
「…………そうだな」
結翔
「……なんだよ、お前ら。
 …………ゲーム、やる気なのかよ」

「少なくとも、用心棒はそうみたいよ。
 …………それに、人狼も」
冬司
「……………………」
花菜
「…………悲しいけど、そうみたいだね」


全員
「……………………」


結翔
「……くそやろうが!!!
 なんで! なんで俺たちがこんな目に合わなきゃいけないんだよ!
 いったい…………いったい誰のせいなんだよっ!」
空太
(…………恐怖を感じると、怒りで自分を守る人種がいる。
 怒りは正当な感情で、正当な防衛本能なんだ。
 …………目黒は思いっきりそのタイプみたいだ。
 弱い犬ほどなんたらって…………思ってしまったのは内緒だ)
勝平
「…………なんでお前、そんなにぶちギレてんだ?
 つーか思ったんだけどさ、そうやって、自分は人狼じゃないみたいな言い方してるけど、
 そーゆーやつに限って隠してたりするんだよな。黒い、醜い部分をさ」
結翔
「…………なにが言いてえんだよ」
勝平
「…………わかんねえのか?
 …………お前、カモフラージュしてるみたいだけど、人狼なんじゃねえの?
 …………道明寺と由絵を殺したんだろこの野郎」
結翔
「なんだと!! 俺じゃねえよふざけんな!!」
勝平
「そーやってキャンキャン騒いでんじゃねえよ」
結翔
「こ、この野郎!」
圭吾
「やめろよ!!」
空太
(勝平に殴りかかろうとした目黒を、竜崎と直斗が間に割って入って止めた。
 …………勝平。八木沼が殺されて、おかしくなっちゃったのかな?
 勝平からは、憎しみの感情しか感じ取れなかった。
 …………悲しみを、憎しみで誤魔化してるんだ)
直斗
「落ち着けって!」
結翔
「あいつ一発殴らねえと気が済まねえよ!」
勝平
「……なんだよ。やるなら来いよ、チキン野郎」
圭吾
「勝平もやめろよ!」
美海
「やめて! もうやめて!」
結翔
「っっ…………」
勝平
「………………」
空太
(白百合の制止で、またしてもシーンと静まり返った。
 目黒は竜崎と直斗を振り払い、勝平は目黒を睨み付けていた目を反らした)
果帆
「…………冷静を欠いたら終わりだ。
 …………とにかく、今日をどうするかだろ」
冬司
「どうするもなにも、人狼が名乗りでないなら、
 するしかないでしょ……投票も、処刑も」


全員
「……………………」


小桃
「なにか、…………引っ掛かるわ」
冬司
「え?」
小桃
「…………始めに人狼と用心棒に名乗り出ろと言ったのは、……小田切くんよね?
 …………あなたらしくないのよ。
 人狼が自白したらどうなるのか、頭の良いあなたのことだから、デメリットだって当然わかってるはずじゃない。
 …………全員、死ぬかも知れないって」
冬司
「…………俺のこと買い被りすぎだよ。
 …………被害が最小限で済むなら、その方がいいじゃない。
 そう思って言っただけだよ」
小桃
「…………そう」
惣子郎
「…………とにかく、今後どうするかだ。
 …………14人だから、一応、7人ずつで票が割れる。
 だから…………今まで通りにするか、…………ゲームを、始めるかだ」
圭吾
「…………多数決にしようぜ」
果帆
「…………そうだな。
 とにかく、みんなの意見を聞こう」


全員
「……………………」


惣子郎
「今まで通りに、処刑はしないと言う意見の者は、手をあげてくれ」
美海
「…………」
直斗
「…………」
結翔
「…………」
惣子郎
「…………俺を含めて、四人、か…………」
冬司
「…………あとのみんなは、ゲームをするべきだと、そう結論付けたんだね」
朔也
「…………ああ」
勝平
「…………由絵を殺された。
 必要に迫らせたとは言え、手をかけたのは人狼だ。
 …………人狼も用心棒も、……俺は殺してやりたい」
美海
「勝平くん…………」

「…………圧倒的に、ゲームをする方が大多数ね」
惣子郎
「…………これが、みんな総意見なんだ」
結翔
「……くっっそっっ!!」

空太
(………………………………。
 もう、逃げられない…………。

 …………始まる。『人狼ゲーム』が……)



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