043.20日目『和華の告白』


 ――――PM20:88、会議室
空太
「………………」
(時計が、カチカチと音を上げる……)
果帆
「……………………」
空太
(腕と足を組んでぶすっと腰掛ける果帆を見る。
 …………俺は目をそらした。
 …………彼女だからって、やっぱり完全に信じる気にはならなかった)
美海
「……………………」
(白百合はやっぱり、凛とした表情をしていた、
 ……もう、残りは7人になってしまった。
 白百合も、…………アキラと朔也が死んで、頼る人がいなくなってしまった。
 ……覚悟を決めたみたいなことを言っていた。つまり、そう言うことなんだろう)
美海
「…………昨日、和華ちゃんを占ったわ」
空太
(一番始めに言葉を発したのは、やはり白百合だった。
 七瀬は白百合の言葉に、ゆっくりと顔を上げた)
美海
「…………人狼だった」
和華
「……………………」
冬司
「……………………」
直斗
「…………否定しないんだな」
和華
「…………どう言えばいいかしらと思って」
空太
(七瀬はそう言って、額を押さえるような仕草をした。
 そして、ほうっとため息を吐いた)
和華
「…………これではっきりした、白百合さんが人狼だわ。
 …………わたしは、人狼じゃない。だって」
小桃
「…………だって?」
和華
「……だってわたしが、……『用心棒』だもの」
美海
「……!!」
直斗
「……!!」
冬司
「……今更、そんなこと言われたって」
和華
「信じられない?」
小桃
「……信じられないと言うか、どうしてこのタイミングだったのと思うわ」
和華
「…………正体を知られるわけにはいかなかった。
 …………みんな、用心棒のことを憎んでるみたいだから」
直斗
「そりゃ、……そうだよ。
 …………本当に七瀬が用心棒なら、なんでアキラと由絵を守らなかったんだ」
和華
「…………お父さんが倒れたって、言ったでしょ?」
空太
「……………………」
果帆
「……………………」
和華
「わたしはここを出なければいけなかった。
 …………だからよ。
 動揺して、気付いたら時間が過ぎてた。
 もう、覚悟を決めるしかなかったの」
直斗
「ふざけるな!
 それに巻き込まれた俺たちは……俺たちはっ」
和華
「大きな声を出さないで。……お願い」
冬司
「…………悪いけど。俺は信じられない。
 …………俺は、君が嘘を吐いてるって確信したよ」
和華
「…………なぜ?」
冬司
「…………なぜだろうね」
和華
「……………………」
冬司
「…………とにかく、俺はもう確信した。
 七瀬さんと間宮さんが人狼だ」
美海
「…………果帆はわからないけど、
 占い結果では、和華ちゃんは人狼だった。間違いないわ」
直斗
「…………もう、わけわかんねえよ」
小桃
「…………あたしは、和華を信じたいわ」
和華
「…………小桃」
小桃
「でも、…………でも、
 ……白百合さんに人狼と特定されて、まだ確定していなかった用心棒を騙っているとしか思えない。
 苦し紛れにしか……聞こえない」
和華
「…………よく考えて。
 わたしが偽者だったら、わざわざ用心棒を騙る理由がある?」
冬司
「あるよ。…………処刑を免れるかもしれない」
和華
「……みんなの嫌悪感を煽るってわかってるのに?」
冬司
「……そんなの今更でしょ」
直斗
「待て、整理しよう。
 …………えーっと、朔也が守られた時点で、用心棒の可能性があったのは」
冬司
「……俺、七瀬さん、間宮さん、空太……と、結果的に人狼だったけど、勝平くんの5人だね」
空太
(小田切は手元のノートに目線を落としながら、そう言った。
 ……悪いけど俺も、七瀬が嘘を言っているようにしか思えない。苦し紛れの嘘を……)
冬司
「…………用心棒は自分自身を守れない。
 七瀬さんはさ、自分が人狼だと疑われないためには、もう用心棒を騙るしかないって結論に至ったわけだよね。
 だからこそ今夜、こうして用心棒として名乗り出ることにしたわけだ。
 …………そして、俺は君が嘘をついていると確信している。そして、嘘を吐くと言うことは、人狼の証だ」
和華
「……そう言うのはね、暴論と言うのよ。
 …………よく考えて。
 もしわたしが人狼だとしたら、このタイミングで暴露すると本当に思う?」
冬司
「何度も言うようだけど思う。
 …………処刑を免れるためにも。
 もう、用心棒しか騙れる役職はないし」
果帆
「……………………」
小桃
「…………話が並行線ね」
直斗
「…………そうだな」
和華
「……………………」





 ――――PM20:35、会議室
直斗
「い、……っせーの、っせ」
美海
「……………………」
和華
「……………………」
空太
「……………………」
(…………投票結果は、こうだった。
 白百合に、七瀬と果帆。
 七瀬に、……俺と白百合、佐倉、直斗、小田切……)
和華
「…………信じて、もらえなかったのね」


 …………。

 ……………………。


空太
(直斗がロープをくくりつける……。
 …………七瀬は、それをぼうって眺めている)
和華
「…………ごめんなさい」
小桃
「え…………?」
和華
「…………この期に及んで、わたし、わたし……」
空太
(七瀬は、そう言って泣き出した)
冬司
「…………こちらこそごめんなさい」
果帆
「…………あたしはあんたは村人だって知ってるよ。
 …………なのに、ごめんな、庇えなくて」
冬司
「……人狼同士庇いあってるようにしか見えない」
果帆
「……なんだと?」
小桃
「やめて! ……和華、他に言いたいことはない?
 あたしが全部、聴くわ、聴くから」
和華
「う、……ううぅぅぅ」
空太
(七瀬はそう言って顔を覆い隠した。
 嗚咽しながら、ぽつぽつと言葉を溢した)
和華
「……わたしがっ、死んだらっ……お父さんが生きていけないっ……っ、
 妹の安葉たちも……わたしがいなきゃ、なんにもできないっ」
小桃
「…………うん、うん」
和華
「…………死んだらお父さんのそばに行ってあげられない……っ、
 …………死にたくないっ」
小桃
「…………和華……」
和華
「……お父さん…………お父さん、お父さん……っ、
 ――――うっっっ!!!」
小桃
「――――!!!」
空太
(ガツンと言う音と、バリバリと言う音がして、七瀬は椅子から崩れ落ちた。
 …………果帆がスタンバトンで七瀬を殴ったんだ。背後から)
美海
「果帆……!!」
果帆
「…………聞きたくなかったんだよ、
 …………死んでいくやつの、悔いの言葉なんて」
冬司
「…………準備できたよ」
空太
(…………七瀬はそうして、首を吊られた。
 気絶から目覚めて、肌を鬱血させながら、えくえくともがいた。
 他に処刑されたみんなと同じように…………次第に、大人しくなった)
果帆
「…………七瀬…………ごめん」
空太
(動かなくなった七瀬を見つめて、
 …………果帆は、そう呟いた)



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