014.2日目『夜の時間』


空太
(そんなわけで、今日の襲撃先は直斗になった。
 これで何事もなければ、直斗も『村人』に確定されることになるんだ。
 投票先は昨日と同じ方法で、筒井と竜崎が担当してくれることになった。

 いよいよ投票の時間…………結果は、決選投票で引き分けだ。
 昨日と同じように、処刑もしなくて済むことになった)
空太
「ふう…………やっぱり緊張した」
果帆
「こればっかりは仕方ないよな」
直斗
「まあ何事もなかったからいいじゃないの」
勝平
「もういいだろう。風呂入ろうぜ」
美海
「ふふ、疲れちゃったものね」
由絵
「待って勝平〜、ちょっとお話ししよ?
 お風呂なんて後でもいいじゃない〜」
勝平
「いや、風呂入って寝る」
由絵
「もう! ちょっとくらいワガママ聞いてよ!」
勝平
「今日は勘弁してくれよ、疲れてんだよ。
 …………白百合、こいつ連れてってくれ」
美海
「え、ええ〜?
 勝平くん、すこしくらい付き合ってあげたら?」
由絵
「そうだそうだ〜! ぷんぷんしちゃうぞ〜!」
勝平
「頼んだわ、白百合。
 ってことで風呂」
由絵
「もう!」
美海
「由絵、あたしの部屋でお話ししよ?」
由絵
「うえ〜ん、美海〜」
美海
「よしよし」
空太
「俺も風呂入ろうかな」

「俺も。
 …………朔也も行こうぜ」
朔也
「あ、ああ」
直斗
「俺はあとにするわー」

「おっけー」

「花菜、今日はあとで一緒に入りましょうか」
花菜
「え! いいの?」

「ええ」
花菜
「おっけー! 背中流すよ!」

「ふふ、よろしくね」
惣子郎
「俺たちも適当に入るから気にしなくていいぞ」
圭吾
「いってらー」
果帆
「いってらー」
空太
「じゃ、またあとで」
(こうして、俺と勝平、朔也とアキラで風呂に入ることになった)





 ――――2F、浴場
勝平
「さて、ちゃっちゃか済ませてちゃっちゃか上がろう」
空太
「うん」
(勝平は真っ先に頭を洗い始めた。
 置いてあるシャンプーは女子用の高価そうなものだ。
 昨日も思ったけどフローラルのいい香りがするし、なんか使うのもったいない……)
空太
「こんな高価そうなものじゃなくて全然いいんだけど……」

「まあ俺らはねえ」
勝平
「白百合とか和歌野は髪に気を遣ってそうだからいいんじゃねーの?」
朔也
「そうだな…………」
空太
(朔也…………ほとんど喋んないしやっぱりおかしい)
勝平
「よし、んじゃ俺先にあがるわ」

「おー」
空太
「湯船浸からないの?」
勝平
「今日はいい。じゃ」
朔也
「…………俺もそろそろ」

「まあまあ。湯船はいろーぜ?
 …………話したいこともあるし」
空太
「…………話したいこと?」
朔也
「…………なんだよ?」

「ちょっとな」
空太
「? お、俺、出た方がいい?」

「いや、空太も残れよ」
空太
「お、おう」

「さて。ところでなんだが……、
 お前ら、犯人の本当の目的はなんだと思う?」
朔也
「…………それはさっき、
 アキラが自分で言ってたことじゃないのか?」

「……と言うと?」
朔也
「犯人は俺たちのことを徹底的に調べあげてるんだろうな。
 アキラの言った通り、中等部時代の俺たちに執着してるってのも、本当にその通りだと思う。
 ……快楽目的だっけ? 絶対に殺し合いなんかしなさそうなメンバーが、殺し合うところが見たいんだろ。
 ……ってことは、やっぱり、親友同士や、幼馴染み、相思相愛のカップルが仲違いして崩壊する場面ってのは、犯人が一番期待するところなんじゃないのか?」

「そうだな。快楽も目的の一つなのは間違いないだろう。秋尾と都丸の件も、崩壊ではないが、かなり悲劇的なやり方だしな。
 しかし、どこで俺らのことを知った? 心の中身まで、その変態さんは」
朔也
「…………行きずりはありえないんだろ?
 たまたま目撃して、なんてわけは一番ないよな」

「ああ。……まあ、その可能性があるとしたら、美海だろうな」
朔也
「…………たまたま目撃した美海を気に入って、その近辺を寄せ集めた、みたいな?」

「ああ。しかしそれだと、中等部時代の連中のみを狙った意味がよくわからない。
 美海は今のクラスにもかなり馴染んでるし、昔のクラスメイトより、今のクラスメイトの方がより身近なだけ、悲惨だと思わないか?
 他から寄せ集めるとしても、俺とお前、果帆くらいで」
朔也
「確かに。美海と縁がある人なんて、他にいくらでもいるだろうしな」
空太
「……………………」
(犯人の目的は白百合なんじゃないかって二人は疑ってたってこと?)

「ああ。つまり、ってことは」
朔也
「やっぱり、この中等部のメンバーじゃないといけない理由があった」

「ああ。行きずりの犯行はありえない。
 つまり学校関係者じゃないとすると、誰かがリークしたってことだ。
 異常性癖の変態さんに、俺たちのことをな」
朔也
「なるほど……」

「しかしわからないことがあるんだ」
朔也
「なんだよ?」
空太
「…………?」

「リークした奴の目的だよ。
 そいつも単純に異常快楽主義者なのか、それとも怨恨なのか。或いは別の目的があるのか」
朔也
「……怨恨ねえ……」

「動機としては一番納得しやすいんだよな。なんてったって、デス・ゲームだし。
 まあ、なんらかの強い思い入れがあるんだろう、そいつにも」
朔也
「それは……クラスにってこと?
 それとも……特定の誰かにってこと?」

「…………どっちも、だな……」
朔也
「それじゃあ……リークした犯人は、やっぱり俺たちの知り合いってことにならないか?」

「そうだな。……下手したら、今ここにいる誰か、って可能性もないわけじゃない」
空太
「…………!!」
朔也
「まさか……さすがにそれは、考えられない」

「まあ、それは俺も同感だけどね。
 もしそんな奴がいたら、処刑も襲撃もなしなんて状況、黙って見てるはずないからな。なにかしら、積極的に輪を乱しにかかるだろう。
 ……けど、まだわからないが、そんなやつはいない」
空太
「…………和歌野は?」
朔也
「ん?」
空太
「いや…………和歌野ってちょっと空気読めないんだなって思ってたところだから」

「サキちゃんはなー、……普段からあんな感じだ。
 カリカリしやすいんだよな」
空太
「そっか…………」
朔也
「ああ。
 ……話を戻すけど、それじゃやっぱり、どこか遠いところで傍観してるってことだよな? 俺たちのことを。
 ……誰なんだ、いったい」

「誰かまではわからないが、誰に執着してるのかは、だいたい予想がつく」
朔也
「…………。」

「このメンバーの中で、その可能性があるとしたら、俺、朔也、勝平、筒井、そして、美海だ」
朔也
「…………俺たちが知らない人間関係だってあるだろ」

「まあな。だからこれは、俺が推測可能な範囲での話だ。
 俺もお前も、女がらみで怨みを買った覚えは?」
朔也
「…………あると言えばあるし、ないと言えばないさ」

「俺は大あり。まさかの人選ミスで傷付けちゃった子が、何人か思い当たる」
朔也
「俺も……プライドの高い子は、結構傷付けたかもしれないな。
 だからと言って、自分を殺して付き合うなんてことできないんだから、間違いじゃなかったと思ってるけど」

「勝平は女がらみと言うよりは、今まで負かした誰かだろうな」
朔也
「報復か」

「ああ。筒井と美海は……嫉妬かな」
朔也
「美海はともかく筒井は…………生徒会長を狙ってた奴にか? そうしたら、生徒会役員ってことにならないか?
 俺たちに縁があって、役員をやってるのって……」

「泉沢だろ」
朔也
「ああ……」
空太
「…………ああ」
(泉沢……、泉沢 千恵梨いずみさわちえり
 中等部時代の三年間、筒井と一緒に学級委員長をしていた女子だ。
 活発で清々しい感じの女の子だったけど、朔也を好きすぎるあまり、佐倉を仲間はずれにしたり都丸を保健室送りにしたり、結構ねちっこいことしてたんだよな。
 これは、果帆からの情報で最近知ったことだ。
 俺は泉沢のそう言う一面を知らなかったから、めちゃくちゃしっかりした仕切り屋の委員長って感じで見てたけど、…………人間ってこえーよな)

「泉沢と考えると腑に落ちるところがあるんだよな。筒井、七瀬、佐倉、お前、俺、そして、美海」
朔也
「……嫌われてたもんなー、お前」
空太
「…………そうなの?」

「ああ。な? お前……朔也と仲良いってだけでな。
 とにかく……泉沢がリークした犯人だとすると、繋がりが見える。お前に対する異常な執着もそうだし、筒井や七瀬、佐倉や美海に対する復讐でもあるってわけだ。」
空太
「復讐って…………」
(どういうこと?
 朔也に異常に執着があるのはわかったけど、他のメンツにはどんな理由で復讐があるってんだ?
 アキラは朔也と仲が良いから…………ってそれは直斗もじゃない? 直斗もその対象なのかな……白百合はたぶん、朔也の想い人だからだし…………佐倉は、朔也のことが好きだからか。
 筒井は生徒会長の候補で競ってたからだとして…………七瀬は? 七瀬はどんな理由があるってんだ?)

「…………最近変わったしな、彼女」
朔也
「…………そうだな」
空太
「そうなの?」

「ああ。なんと言うか、覇気がなくなったんだよ。
 あんなに快活だったのにな」
朔也
「…………聞いた話だが、父親と血の繋がりがないらしいんだ。
 彼女にもあったんだろう…………そう言う、人には言えない様々な事情が」
空太
「…………だとしても、佐倉や都丸にしたことは許されることじゃないけどね」
朔也
「過去のことだ…………とも、言えないしな」
空太
「朔也は気付いてたの? 泉沢の…………そーゆー気持ち」
(好きって言う気持ち…………)
朔也
「…………おう」

「あれだけ露骨じゃさすがのお前も気付くよな」
朔也
「…………鈍感って言いたいのか?」

「ご名答」
空太
「ははっ」
朔也
「…………なんだよ?」
空太
「…………少しは元気出た?」
朔也
「…………悪いな、心配かけて」
空太
「全然平気」
朔也
「……………………」
朔也
「!! 空太!!」
空太
「(びく!)……な、なに、突然」
朔也
「お、お前…………菫谷と仲良かったよな?」
空太
「菫谷…………? 菫谷昴のこと?」
朔也
「そう、それだ!」
空太
(…………菫谷 昴すみれたにすばる。中等部時代、仲が良かったクラスメイトのひとりだ。
 容姿端麗だったが自己中でマイペースなやつだった。いつもバカにしたように笑うから、クラスメイトの評判は最悪に低かった。
 …………でも、俺は菫谷が子猫の世話してるの見かけたことがあって、それで、好感持ってたんだよな……。
 その菫谷がどうしたってんだ?)
「う、うん、仲良かったけど…………それがどうかした?」
朔也
「…………ごめん、なんでもないんだ」
空太
(朔也…………?)

……………………。


「さて、俺はそろそろ上がるかな。
 ゆっくりしてっていいぜ?」
朔也
「ああ。俺は…………もう少し」
空太
「じゃ、俺も」

「おうよ、じゃあな」

………………。

朔也
「空太…………俺、心配かけてたよな?」
空太
「うん。…………あ、でも、
 始めに気付いたのは俺じゃないんだ。
 その…………佐倉がさ、朔也の様子が変だって気付いてさ」
朔也
「…………佐倉が?」
空太
「うん。…………心配してたよ」
朔也
「そうか…………ありがとう。
 …………そろそろ上がるか」
空太
「そうだね」
朔也
「…………あまり、俺のことは気にしなくていいぜ?」
空太
「え?」
朔也
「…………たぶん、疲れが出ただけだからな。
 …………佐倉にも言っておくよ」
空太
「そうだね。…………うん、それがいいと思う」
朔也
「…………ありがとうな」
空太
「いいっていいって。
 …………それじゃ、上がろ」
朔也
「おう」
空太
(心配されるのって、逆に疲れたりするもんな。
 …………朔也のことは、白百合とかアキラとか他のメンバーに任せよう)

空太
(…………こうして、2日目の時間は過ぎて行った。

 …………犯人の目的。
 正直俺の頭じゃからっきしなんだけど、そこはまあ、アキラたちに任せればいいか。
 警察…………早く見付けてくれないかな…………)





――――2日目、終了



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