013.2日目『犯人は』


 ――――PM18:00、ダイニングルーム
空太
(カラオケ大会が終わった俺たちは各自2時間の休憩、と言うか自由時間を過ごした後、再びダイニングルームに集合していた。
 白百合や七瀬等のお馴染みのメンバーが、今晩は中華料理を振る舞ってくれた。
 チャーハン、シンジャオロース、エビチリ等、かなり豪華で、みんな満足していた。
 料理をしている間、果帆や白百合の楽しそうな笑い声が聞こえてきてた。
 昨日とはうって変わって、穏やかな時間だ)
圭吾
「ご馳走さまー!」
美海
「ふふ、お粗末様でした」
結翔
「あー、旨かったぁ」
和華
「作った甲斐があったわ」
惣子郎
「七瀬…………君は、良いお嫁さんになるな」
空太
「おお……っ?」
和華
「ちょ、っと…………どうしたの突然、照れちゃうじゃない」
直斗
「…………ひゅー」
勝平
「いちゃつくなバカ」
冬司
「勝平くん、それ人に言える?」
勝平
「…………(ちら)」
由絵
「なあに? 勝平?」
勝平
「…………だよな」
空太
「…………ですよねー」
小桃
「うふふ」
果帆
「…………(じろり)」
空太
「…………もちろん果帆もなると思うよ」
果帆
「おう、わかってるなら良し」

「美海もいい嫁さんなるぜ?」
美海
「もう、アキラったら…………人前で……」
朔也
「……………………」

「な、朔也」
朔也
「っ! あ、ああ」

「なんだよ、ぼーっとして」
美海
「まだ疲れが取れない?」
朔也
「あ、ああ…………取れてないのかもな」
空太
(あれ? 朔也、ますます様子がおかしい感じがする…………。
 …………もしかして人狼を引いたのか?
 …………まさか、だとしたら今更だよね。昨日は普通だったんだし)
冬司
「ねえ、アキラ」

「なんだ?」
冬司
「朝食のとき、話したいことがあるって言ってたでしょ?
 その続きが聞きたいな」

「犯人の目的の話か?」
冬司
「そう。それ」
惣子郎
「俺も聞きたいな。
 俺は和歌野が言ったように、怨恨の可能性が高いんじゃないかって思うんだが」

「ここにいる誰に? 全員に?」
惣子郎
「……………………」
冬司
「……………………」

「怨恨として考えると、16人ものメンバーを集めた理由がよくわからないんだ。
 誰かに恨みがあるなら、極端な話、そいつ個人をぶっ殺しちまえばいい話だろ?」
惣子郎
「それは…………確かにそうだな」
圭吾
「俺、恨みを買った覚えなんかないしよー」

「怨恨と言うのは、自分の意図しないところで発生するものよ」
圭吾
「……まあ、和歌野が言ってることも一理あるけどさ」
果帆
「でも、だとしたら理由はなんだ?
 これだけの人数を誘拐して、…………殺し合いを強要する意味は」

「俺はな、快楽目的じゃないかって思ってるんだ」
直斗
「…………快楽目的?」

「ああ。要するに、異常な趣味趣向のあるやつの悪趣味なゲームってわけよ、そのまんまだけどな」
冬司
「じゃあなに? 特別な理由はないってこと?」

「ああ。…………強いて言えば、2年前の宍銀学院3年B組に執着があるってことくらいだ」
勝平
「……ここにいる誰かに、ってことじゃなくて、3年B組事態に執着があるってことか」

「そうだな。だがそれだと、なぜこの16人なのかがわからない。
 …………一つ考えられるとしたら」
冬司
「だとしたら?」

「気付いたと思うが、俺らはカップルや親友ばかりなんだよ。
 俺と美海、空太と果帆、勝平と由絵、それに筒井と七瀬。…………秋尾と都丸もそうだったろう。
 それに、朔也と直斗は俺の親友だ。サキちゃんと花菜にしたって、ただの友達にしては親しすぎるところがあるだろ。
 美海は果帆の親友だし、果帆と由絵は幼馴染みだ。
 筒井と竜崎もそうだろ?」
惣子郎
「そうだな」
圭吾
「否定はしないぜー」

「あとこの際だから言うけど、目黒は美海にベタ惚れじゃん?」
結翔
「ちょおおいちょちょちょっちょ」

「見ろ、この動揺を」
結翔
「ちちちがあうああいやそうじゃ、なくないけどあぁあああぁ……」

「…………ここからはプライバシーの話になるから控えるが、
 小田切や佐倉も、人には言えないそう言う感情とか、抱えてんじゃないのか?」
小桃
「…………プライバシーもなにもないわね。
 でも、そうね。当たりよ、道明寺くん」
冬司
「…………俺はノーコメントってことで」
空太
(…………やっぱり佐倉、まだ朔也のことが好きなんだ…………。
 ノーコメントって言ってるけど、小田切もそうなのかな? 否定しないってことは、暗に肯定してることでもあるし。
 小田切が、ここにいる誰かを好き…………? ちょっと想像できないけど、今まで浮いた話がなかったってのは、そーゆーことだからなのかも。
 片想い……なんだろうなあ…………。

 …………誰に? まさか果帆じゃないだろうなあ……)

「ま、そーゆーわけで、つまりなにが言いたいかってーと」
冬司
「信頼とか、愛情とか、そう言うので繋がれてる俺たちが壊れるところを見たいってこと?」

「そーゆーことだな。つまり、快楽目的。
 更に言えば、犯人はかなり用意周到に俺たちに目をつけてたってことだ。心の中までな」

「さいってーね」
花菜
「サキ…………」
惣子郎
「なるほどな。だから、学校関係者もありえるってことか」

「そうだな。じゃなきゃ、わからないだろ、俺らのことなんて」
惣子郎
「確かに…………」
冬司
「行きずりの犯行はありえないってことだね」

「さすが小田切、飲み込みが早いな」
冬司
「アキラの言うことは確かに筋が通ってるよ。
 確かに、宍銀学園はお金持ちも多いからね」
直斗
「かと言って、こんなこと考え付くやつが、俺らの知り合いの中にいるとは思えねえよ」

「…………まあな」
勝平
「だが、犯人が誰かなんて、俺らが突き止めたところでどうにもなんないんだよな?
 警察が見付けてくれること以外に打てる手はないだろう」

「そう、それなんだよ。
 …………まあ、気長に待とうぜ。
 快楽目的なら俺らが崩壊するところが見たいはずだ。この何事もない時間も奴らにとっては楽しみのひとつだろうさ」
惣子郎
「アキラはやっぱり、犯人は複数だと思ってるのか?」

「そりゃそうだろ。
 秋尾たちも含めて、18人も誘拐してるんだぜ?」
圭吾
「そりゃそうか」
冬司
「…………ますますわからないね」
圭吾
「だよな」
小桃
「…………快楽のためだけに、ここまでするかしら」
和華
「そうよね。それに、物理的に可能なのかしら」

「だからまあ、組織的な可能性が高いってことだよな。
 …………心当たりがある者、いないか?」
果帆
「ないよ」
圭吾
「ありまっせーん」
美海
「…………そうよね」
勝平
「とにかく、考えたって仕方ないだろ。
 道明寺、お前が言うように気長に待つのが一番だと思うぜ」
小桃
「みんな…………忘れてるようだけど」
空太
「…………?」
小桃
「…………弥重のこと」


全員
「……………………」


「…………はっきり言うけど、
 都丸は、どうしようもない」
小桃
「……………………」

「人質の都丸を救うなら、俺らが殺し合うしかない」
冬司
「…………認めたくないけど、そう言うことになるよね」
小桃
「……………………」
美海
「…………結局、誰かを犠牲にするしかないのね……」
花菜
「美海…………」


全員
「……………………」

果帆
「…………ぼちぼち、投票の時間になるぞ」
空太
「…………ほんとだ」
冬司
「どうするの、今日は誰と誰?」
惣子郎
「昨日はアキラと朔也に押し付けてしまったから、
 今日は俺と圭吾でやるよ」
直斗
「んじゃついでみたいだけど、襲撃先は俺ってことで」

「いいのか?」
直斗
「まかせとけって。
 ってことで用心棒の人、よろしくな!」





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