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013.2日目『犯人は』
――――PM18:00、ダイニングルーム
(カラオケ大会が終わった俺たちは各自2時間の休憩、と言うか自由時間を過ごした後、再びダイニングルームに集合していた。
白百合や七瀬等のお馴染みのメンバーが、今晩は中華料理を振る舞ってくれた。
チャーハン、シンジャオロース、エビチリ等、かなり豪華で、みんな満足していた。
料理をしている間、果帆や白百合の楽しそうな笑い声が聞こえてきてた。
昨日とはうって変わって、穏やかな時間だ)
「ご馳走さまー!」
「ふふ、お粗末様でした」
「あー、旨かったぁ」
「作った甲斐があったわ」
「七瀬…………君は、良いお嫁さんになるな」
「おお……っ?」
「ちょ、っと…………どうしたの突然、照れちゃうじゃない」
「…………ひゅー」
「いちゃつくなバカ」
「勝平くん、それ人に言える?」
「…………(ちら)」
「なあに? 勝平?」
「…………だよな」
「…………ですよねー」
「うふふ」
「…………(じろり)」
「…………もちろん果帆もなると思うよ」
「おう、わかってるなら良し」
「美海もいい嫁さんなるぜ?」
「もう、アキラったら…………人前で……」
「……………………」
「な、朔也」
「っ! あ、ああ」
「なんだよ、ぼーっとして」
「まだ疲れが取れない?」
「あ、ああ…………取れてないのかもな」
(あれ? 朔也、ますます様子がおかしい感じがする…………。
…………もしかして人狼を引いたのか?
…………まさか、だとしたら今更だよね。昨日は普通だったんだし)
「ねえ、アキラ」
「なんだ?」
「朝食のとき、話したいことがあるって言ってたでしょ?
その続きが聞きたいな」
「犯人の目的の話か?」
「そう。それ」
「俺も聞きたいな。
俺は和歌野が言ったように、怨恨の可能性が高いんじゃないかって思うんだが」
「ここにいる誰に? 全員に?」
「……………………」
「……………………」
「怨恨として考えると、16人ものメンバーを集めた理由がよくわからないんだ。
誰かに恨みがあるなら、極端な話、そいつ個人をぶっ殺しちまえばいい話だろ?」
「それは…………確かにそうだな」
「俺、恨みを買った覚えなんかないしよー」
「怨恨と言うのは、自分の意図しないところで発生するものよ」
「……まあ、和歌野が言ってることも一理あるけどさ」
「でも、だとしたら理由はなんだ?
これだけの人数を誘拐して、…………殺し合いを強要する意味は」
「俺はな、快楽目的じゃないかって思ってるんだ」
「…………快楽目的?」
「ああ。要するに、異常な趣味趣向のあるやつの悪趣味なゲームってわけよ、そのまんまだけどな」
「じゃあなに? 特別な理由はないってこと?」
「ああ。…………強いて言えば、2年前の宍銀学院3年B組に執着があるってことくらいだ」
「……ここにいる誰かに、ってことじゃなくて、3年B組事態に執着があるってことか」
「そうだな。だがそれだと、なぜこの16人なのかがわからない。
…………一つ考えられるとしたら」
「だとしたら?」
「気付いたと思うが、俺らはカップルや親友ばかりなんだよ。
俺と美海、空太と果帆、勝平と由絵、それに筒井と七瀬。…………秋尾と都丸もそうだったろう。
それに、朔也と直斗は俺の親友だ。サキちゃんと花菜にしたって、ただの友達にしては親しすぎるところがあるだろ。
美海は果帆の親友だし、果帆と由絵は幼馴染みだ。
筒井と竜崎もそうだろ?」
「そうだな」
「否定はしないぜー」
「あとこの際だから言うけど、目黒は美海にベタ惚れじゃん?」
「ちょおおいちょちょちょっちょ」
「見ろ、この動揺を」
「ちちちがあうああいやそうじゃ、なくないけどあぁあああぁ……」
「…………ここからはプライバシーの話になるから控えるが、
小田切や佐倉も、人には言えないそう言う感情とか、抱えてんじゃないのか?」
「…………プライバシーもなにもないわね。
でも、そうね。当たりよ、道明寺くん」
「…………俺はノーコメントってことで」
(…………やっぱり佐倉、まだ朔也のことが好きなんだ…………。
ノーコメントって言ってるけど、小田切もそうなのかな? 否定しないってことは、暗に肯定してることでもあるし。
小田切が、ここにいる誰かを好き…………? ちょっと想像できないけど、今まで浮いた話がなかったってのは、そーゆーことだからなのかも。
片想い……なんだろうなあ…………。
…………誰に? まさか果帆じゃないだろうなあ……)
「ま、そーゆーわけで、つまりなにが言いたいかってーと」
「信頼とか、愛情とか、そう言うので繋がれてる俺たちが壊れるところを見たいってこと?」
「そーゆーことだな。つまり、快楽目的。
更に言えば、犯人はかなり用意周到に俺たちに目をつけてたってことだ。心の中までな」
「さいってーね」
「サキ…………」
「なるほどな。だから、学校関係者もありえるってことか」
「そうだな。じゃなきゃ、わからないだろ、俺らのことなんて」
「確かに…………」
「行きずりの犯行はありえないってことだね」
「さすが小田切、飲み込みが早いな」
「アキラの言うことは確かに筋が通ってるよ。
確かに、宍銀学園はお金持ちも多いからね」
「かと言って、こんなこと考え付くやつが、俺らの知り合いの中にいるとは思えねえよ」
「…………まあな」
「だが、犯人が誰かなんて、俺らが突き止めたところでどうにもなんないんだよな?
警察が見付けてくれること以外に打てる手はないだろう」
「そう、それなんだよ。
…………まあ、気長に待とうぜ。
快楽目的なら俺らが崩壊するところが見たいはずだ。この何事もない時間も奴らにとっては楽しみのひとつだろうさ」
「アキラはやっぱり、犯人は複数だと思ってるのか?」
「そりゃそうだろ。
秋尾たちも含めて、18人も誘拐してるんだぜ?」
「そりゃそうか」
「…………ますますわからないね」
「だよな」
「…………快楽のためだけに、ここまでするかしら」
「そうよね。それに、物理的に可能なのかしら」
「だからまあ、組織的な可能性が高いってことだよな。
…………心当たりがある者、いないか?」
「ないよ」
「ありまっせーん」
「…………そうよね」
「とにかく、考えたって仕方ないだろ。
道明寺、お前が言うように気長に待つのが一番だと思うぜ」
「みんな…………忘れてるようだけど」
「…………?」
「…………弥重のこと」
「……………………」
「…………はっきり言うけど、
都丸は、どうしようもない」
「……………………」
「人質の都丸を救うなら、俺らが殺し合うしかない」
「…………認めたくないけど、そう言うことになるよね」
「……………………」
「…………結局、誰かを犠牲にするしかないのね……」
「美海…………」
「……………………」
「…………ぼちぼち、投票の時間になるぞ」
「…………ほんとだ」
「どうするの、今日は誰と誰?」
「昨日はアキラと朔也に押し付けてしまったから、
今日は俺と圭吾でやるよ」
「んじゃついでみたいだけど、襲撃先は俺ってことで」
「いいのか?」
「まかせとけって。
ってことで用心棒の人、よろしくな!」