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*heart*
―ひとりごと――
ふとしたトキに こぼれるコトノハ
届けたいのか そうで無いのか
届かなくても
それは わたしのキモチ
母の日
 毎年、自分から何かをしてあげるなんて事は無かった。
 今年も何かしてあげたいなとは思いつつも、結局、なんの準備もせずにその日を迎えた。
 たくさんの人からお見舞いで花をもらっていたけど、綺麗なものを見てると癒されるから なんて言ってたし、カーネーションを贈ろうと思った。

 朝、目を覚ましはしたけど起きずにごろごろしていると、お父ぽんが部屋に来た。
「お母さん、意識ないみたいだから病院行くぞ」

 浮かんだのは、昨日見せた笑顔。見慣れたいつも通りの表情。
 ここ最近は、ずっと辛そうな表情だったのに、昨日は久しぶりに笑顔をみた。

 あぁ……もうだめなんだ。

 そう、漠然と感じた。

励まし


 いろんな人が駆けつけてくれた。
 返事が出来なくなっているお母ちんに、みんな沢山呼びかけてくれた。

「頑張れ」

 ……あたしには言えなかった。

「毎日いろんな人が来てくれて、帰り際にみんな「頑張れ」って言ってくれるのに、頑張っても頑張っても良くならなくて……。頑張りが足りないのかなぁ……」
 弱々しく呟かれたその台詞が思い出されて。

 他にかけてあげられる言葉が無いなんて分かってる。
 あたしも『頑張れ』って言葉は好きじゃないけど。

 出来るところまでしか出来ないんだし、なにも無理する必要はないんだよ。
 そう言ったけど、弱ってたからなぁ。

 無駄に頑張る人だった。
 だから、こういう結果になったんだけど。仕方ないね。

ありがとう


 下顎呼吸しているお母ちんの隣で、お父ぽんがメモ帳を見つけた。

『もう悔いはありません』

 そんな勝手な言葉を残していた。

 そんな事言える人なんていない。
 そんな全てを諦めたような台詞。

 まだ生きてはいるのに、突然あたしが泣き出したので、周りに驚かれ、お父ぽんに頭をこづかれた。
 本当に、嬉しくない感謝の言葉だった。


「お母ちんも泣かなかったんだから、泣かないで」

 そう、2年前に言われた。
 なぜか思い出してしまった。

 誰かが側にいるときは泣くのはよそう。
 みんな、お母ちんのために泣いてくれるし。
 あたしは泣かずにいよう。

見てられない


 一番は、祖母の姿。
 出棺の時、泣き崩れたあの姿は痛々しかった。
 本当に、酷い娘。

 お父ぽんも、なんだかぼんやりと一点を見つめるようになった。
 その姿にゃ不安をおぼえる。

 二人には元気で生きててもらわなきゃ困る。

そういえば


 あの日も寒い日だった。
 迎えにくるから寒くなるのかなんなのか、そんなこと分からないけど。今日も寒いなと思った。

 祖父(母方)の時もそうだったから。

当然か


 右手の中指にある指輪、凄く違和感。
 これをするには、まだ年齢的に早い気がするんだ。

 曾祖母の形見。指のサイズが合うのがお母ちんしかいなかったからって理由でもらったという。
 あたしもサイズ合わないな。緩くて動く。
 だって、“あたしの”じゃないんだもんね。

 慣れるまではまだまだ時間がかかりそうだ。


 我が家の要が居ないので、ちょっと大変。
 あたしは、お母ちんの代わりをしたいとは思わない。
 あたしはあたしだし、そもそも代わりなんて出来やしない。
 誰に何言われようと、あたしのやり方でやっていこう。
 助言は聞くけどね。

 ようやく、あの人の闘いは終わったんだ。もう苦しいところは無いね。これでゆっくり休めるね。
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