詠み人らず

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の色は移りにけりないたずらに我が身世にふるながめせしまに
ほととぎす鳴きつる方をむればただ有明の月ぞ残れる
来ぬ人を帆の浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ
吹くからに秋の草木のしをるればむべ風を嵐といふらむ
奥山に紅葉踏みわけく鹿の声きく時ぞ秋は悲しき
あをによし良の都は古りぬれどもと 霍公鳥ほととぎす鳴かずあらなくに
ほととぎす鳴くや五月さつきのあやめ草あやめも知らぬもするかな
夕づく夜小倉の山に鳴く鹿ののうちにや秋は暮るらん
うち渡す遠方人をちかたひとに物申す我そのそこに白くけるは何の花ぞも
しのぶれど色にでにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
わがいおは都のたつみしかぞすむをうぢ山と人はいふなり
初瀬川古川の二本ふたもとある杉年を経てまたも相見む二本ふたもとある
吹けば峯にわかるる白雲の行きめぐりてもあはむとぞ思ふ
春日野の飛火の野守いでてよ今いくかありて若菜つみてむ
筑波嶺つくばねの峰より落つる男女川みなのがわ恋ぞつもりてとなりぬる
種しあればにも松は生ひにけり恋をし恋ひば逢はざらめやも
思ひいづるときはの郭公ほととぎす唐紅からくれないのふりいでてぞなく
逢はむ日をその日と知らず常闇とこやみにいづれの日まであれひ居らむ
吹く風の色の千種ちくさに見えつるはの木の葉の散ればなりけり
かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじなゆる思ひを
五月来ぬ忘草わすれなぐさもわが恋も今しほのかに匂ひづるらむ
の初花染めの色深く思ひし心われ忘れめや
世の中は夢かうつつうつつともとも知らずありてなければ
散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにかしかるべき
我が背子せこと二人しれば山高み里には月は照らずともよし
天の川相向き立ちて我が恋ひし来ますなり紐解きけな
逢ふこともに浮かぶわが身には死なぬ薬も何にかはせむ
忘るなよ別れ路におふるくずの葉の秋風吹かばかへりこむ
瀬を早見にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
君により思ひならひぬ世の中の人はこれをやといふらむ
君がため惜しからざりしさへながくもがなと思ひけるかな
千早振る神代かみよもきかず龍田川たつたがわに水くくるとは
古も今も変はらぬ世の中にの種を残す言の葉
幾かへり露けきを過ぐしきて花の紐解く折りに会ふらむ
間ゆく水の白浪立ち返りかくこそは見めあかずもあるかな
ちはやぶる神の斎垣いかきも越えぬべし今はわが名しけくも無し
み人知らず

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