六桜+りんね?

2015.04.09 Thursday


「桜さまは、あったかくていい匂いがします」そう?と桜は目元を和らげた。彼女の膝の上にはころんと丸まって気持ちよさそうにしている六文の姿がある。優しく頭や背中を撫でてくれる桜の手にすっかり甘えきってゴロゴロと喉を鳴らしている。かたわらで戯れている一人と一匹を、内職の造花作りに集中するふりをしながらもりんねはチラチラと気にしている。主人の不機嫌にも気付かず、調子に乗った黒猫は甘い溜息をついた。「いつまでもこうしていたいなあ……」「ふふ。じゃあ六文ちゃん、うちの子になる?」「いいんですか!?」こほん、とりんねが咳払いした。「六文。お使いを頼んだはずだが、もう済んだのか?」「えっ、お使い?いつ頼まれましたっけ?」「なんだ。言い付けられたことを忘れているようじゃ、契約黒猫失格だな」冷たく言われて六文はしょんぼりと肩を落とした。不憫に思った桜が、その小さな身体を抱き上げる。「誰にだってうっかりミスはあるよ。六文ちゃんは、優秀な契約黒猫だもんね?」「桜さま、優しい──」うるうると目を潤ませる黒猫。当てつけのつもりが裏目に出てしまったりんねは、がっくりと項垂れた。


りんさく+翼

2015.04.08 Wednesday


午後の体育は昼食後のいい運動になる。広いグラウンドでサッカーボールを追う翼は生き生きとしていた。対照的なのは、腹ごしらえをしていないりんねだ。翼とは敵のチームなので翼には知ったことではないが、動きが恐ろしく鈍くまるで勢いがない。「なるべく余計な体力を使いたくないんだが……」ボールをめぐる小競り合いからは少しはなれたところで、空腹をかかえたりんねはひもじそうに呟いていた。さらにもっと遠くから、桜を含める女子たちがその試合を眺めている。「十文字くん、頑張ってるね」「桜ちゃんのこと、ちらちら見てるよ」桜の視線を感じたらしい翼は、調子よくゴールを目指すが、惜しくもシュートは逃してしまう。敵のプレイヤーが横やりにボールを奪い、遠くへ蹴り飛ばした。あっ、と皆の視線が距離を伸ばすボールを追う。ボールが向かうところにはりんねしかいない。「六道くん、頑張って!」桜はつい声を張り上げてしまう。するとボーッとしていたりんねが、しゃきんと姿勢を正した。空からとんできたボールをうまく受け止め、くるりと振り返って、シュートを決める。「よくやった、六道!」りんねのチームメートがわらわらと駆け寄ってきた。遠くから桜がこっそりVサインを出すと、それを見届けたりんねは少しだけ自分が誇らしくなった。


りんさく

2015.04.06 Monday


距離が前よりも近づくと、かえって気兼ねしてしまうこともある。後先考えず、とくに意識せずにできていたことが最近ではできなくなった。たとえば真宮桜の手をとること──。何とも思わなかった頃は平気だったのに、今はもう安易に触れることなどとてもできない。そばにいるだけで、心臓がうるさい。何か行動を起こすたびに、かたわらの彼女がどう思うかかがいちいち気にかかる。自分の嫌なところはなるべく見て欲しくない、と思う。今まで自分の体面など頓着がなかったはずなのに。「六道くん、行かないの?」振り返った真宮桜が手招きをする。きっともう二度と気楽にとることのできない手を、自分は今どんな目で見ているのだろう。


りんさく+鳳

2015.04.05 Sunday


「ちょっと見ない間に、まーた年食っちゃって」鳳の軽口に、りんねと桜は揃って顔を見合わせた。特に気分を害された様子もなく、桜がクスッと笑う。「そういう鳳は、全然変わらないね」「当たり前じゃない。死神と人間は違うんだから」「やや貫禄がついたようにも見えるな」「ちょっと、やや、って何よ?こう見えても私、結構偉いんだからね」ふふん、と得意気に胸をそらす死神。「孫達だって優秀なんだから。全員、死神一高を狙わせてるのよ」「ふうん。確か、架印とれんげのところの子は合格したんだっけ?」「そうなのよ!あいつらには絶対に負けないんだからっ」りんねはやれやれと肩を竦める。「自尊心だけは、相変わらずだな」


実写秋直

2015.04.03 Friday


(※LGF放送記念)
「キスされると思ったか?」口角を持ち上げてしらじらしく笑う秋山に、直は顔を赤らめて反論する。「あの状況だったら、誰だって勘違いしますよ!」「そうか?」「当たり前じゃないですか!秋山さんって、本当に人を騙すのが上手なんだから──」でもこんなふうに騙され続けていたら、心臓がもたないです。背中を向けた直がこぼす一言に、秋山はふとまじめくさった顔になる。彼とてあれは意図してとった行動ではなかった。リップクリームがほしいなら、素直にそう頼めばよかっただけのこと。わざわざあんな風に近付いて触れたりする必要はなかった。あらぬ期待を抱かせることはわかっているのに。元来合理的なたちのはずが、なぜああして回りくどいことをしなければならなかったのか。「……たとえ嘘でも、ドキドキしちゃいました。思い出すと、ほら、まだ心臓がうるさいです」胸をおさえてささやく直。背中を向けてはいるが、どんな顔をしているかは手に取るように分かる。こんな時に限っては、馬鹿正直な彼女が羨ましくも思える秋山だった。


りん+翼

2015.04.02 Thursday


(※行き触れネタ)
「えーっ、やっぱり桜ちゃんと六道くんって付き合ってたの!?」リカの大袈裟な驚きぶりに、一年四組はにわかにざわめいた。突然の告白のあまりの打撃に翼はめまいがしたらしく、病人のように青い顔をしてふらふらと机に手をつく。「あの──。嘘だよね、真宮さん?」当の桜が答えるよりも先に、隣のりんねがとどめを刺した。「嘘じゃない。俺と真宮桜は付き合っているんだ」「い、いつから?」「一ヶ月ほど前から、だったか?」とぼけた顔で桜を見やるりんね。目配せする二人はすっかり距離を縮めている様子だ。なぜ今の今まで気付かなかったんだろう?失ったものの大きさに翼は半泣きになった。「くそ、抜けがげしやがって──!許さんぞ、六道!」自分のほうが、ずっと好きだったのに。片時も、忘れたことはなかったのに……。そう言ってやりたかったのに、どことなく照れているような桜の顔が視界の端にあって、その目がとても穏やかで満ち足りていて、ああ、これはもう、横恋慕でしかなくなってしまったんだと、思った。


りんさく

2015.04.01 Wednesday


エイプリルフールにどんな嘘をつくか?という話題になった。リカとミホが「彼氏彼女ができた、っていう嘘は無難だよね」などと言い合っているので、りんねは彼女達のやりとりにニコニコしながら頷いている桜をちらりと見遣った。さて、自分の番が来たら何と答えよう?すると横槍に、翼が一言物申した。「エイプリルフールについた嘘は、向こう一年間実現しないそうだぞ。もし俺だったら、絶対に真宮さんを槍玉には挙げないね」ふふんとなぜか得意げなお祓い屋。りんねは目からうろこだ。真宮桜は俺の彼女だ──、なんて冗談にもならない嘘はやめておこう、と思った。


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