六桜+りんね?
2015.04.09 Thursday
「桜さまは、あったかくていい匂いがします」そう?と桜は目元を和らげた。彼女の膝の上にはころんと丸まって気持ちよさそうにしている六文の姿がある。優しく頭や背中を撫でてくれる桜の手にすっかり甘えきってゴロゴロと喉を鳴らしている。かたわらで戯れている一人と一匹を、内職の造花作りに集中するふりをしながらもりんねはチラチラと気にしている。主人の不機嫌にも気付かず、調子に乗った黒猫は甘い溜息をついた。「いつまでもこうしていたいなあ……」「ふふ。じゃあ六文ちゃん、うちの子になる?」「いいんですか!?」こほん、とりんねが咳払いした。「六文。お使いを頼んだはずだが、もう済んだのか?」「えっ、お使い?いつ頼まれましたっけ?」「なんだ。言い付けられたことを忘れているようじゃ、契約黒猫失格だな」冷たく言われて六文はしょんぼりと肩を落とした。不憫に思った桜が、その小さな身体を抱き上げる。「誰にだってうっかりミスはあるよ。六文ちゃんは、優秀な契約黒猫だもんね?」「桜さま、優しい──」うるうると目を潤ませる黒猫。当てつけのつもりが裏目に出てしまったりんねは、がっくりと項垂れた。