B/M
2017.10.27 Friday
(Reign/クイーン・メアリー)
「時々、あなたを遠く感じるわ」
振り返らずにつぶやくメアリーの声に、寂寥がにじんだ。
スコットランド女王にして、フランス王太子の婚約者であるこの女性と、彼はつかず離れずの距離を保って関わりあっている。英明な女王は、その意図的な隔たりをとうに見抜いていた。
「バッシュ。私はあなたと、よき友でいたい。あなたは私と同じ気持ちではないの?」
セバスチャンは弟を思う。友ではなく、恋人という肩書を与えられた唯一の男。フランソワがいる限り、彼はつねに二番手だ。──だからといって、王の庶子である彼にはメアリーを略奪する力も、その気概もないのだが。
「俺はただ、ないものねだりをしたくないだけだ」
「それは、私にはあげられないもの?」
「ああ。……君には無理だ、メアリー」
彼は女王の背中を目に焼き付けた。遠からず、フランス王妃となる女性だ。その後ろ姿に恋焦がれていたことさえ、忘れなければならなくなる時が来るだろう。