ハク千
2019.12.31 Tuesday
─ つごもり ─
こたつの中で、つま先がハクの脚に触れた。みかんを剥く手をそのままに、彼は視線をちらと千尋へ向けてくる。
「テレビはもう飽きてしまった?」
「年末の特番ばっかりだもん。──ハクはおもしろいの?」
うん、と笑ってうなずく彼。「でも、千尋がしたいなら、もう一度花札でもして遊ぼうか」
千尋は今さっき自分の分を食べたばかりだったが、ハクが剥いたみかんのひと切れも口の中に放りこんだ。調子に乗って冷たいものを食べすぎたせいか、ぶるっと身震いがする。
するとこたつの中で、そっと手を握られた。温かい手だった。
「何をして、遊びたい?」
このままでいい──、心地よさにとろりと目を閉じかけながら、千尋はつぶやいた。
りんさく
2019.12.25 Wednesday
─ to be jolly ─
桜はそっと頬をおさえた。かすめるように触れてきたあの感触が、消えないように手の中に閉じこめた。
「……ジンクスだと聞いたから」
「誰に?」
おふくろに──と足元に視線を落としてつぶやくりんねは、まだ耳の先をほのかに赤くしている。寒さのせいか、それとも恥らいの名残か。
「宿り木の下では、その……こうしてもいいんだと……」
「……最近の小学生って、おませさんなんだね」
街灯に飾られた宿り木を見上げて、桜はほのかに笑う。"本物の"キスでも良かったのに──つかの間そう思ったけれど、目も合わせられずにいる二人には、まだ気の早い話かもしれない。