りんさく
2015.04.06 Monday
距離が前よりも近づくと、かえって気兼ねしてしまうこともある。後先考えず、とくに意識せずにできていたことが最近ではできなくなった。たとえば真宮桜の手をとること──。何とも思わなかった頃は平気だったのに、今はもう安易に触れることなどとてもできない。そばにいるだけで、心臓がうるさい。何か行動を起こすたびに、かたわらの彼女がどう思うかかがいちいち気にかかる。自分の嫌なところはなるべく見て欲しくない、と思う。今まで自分の体面など頓着がなかったはずなのに。「六道くん、行かないの?」振り返った真宮桜が手招きをする。きっともう二度と気楽にとることのできない手を、自分は今どんな目で見ているのだろう。