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ジャンル入り混じります。ご了承ください。
趣味のクロスオーバーもあるかも
・完結見込みのない話も置いてあります。


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The last final 24
(ロキド) 2015/04/27

「おら、次お前の番」

ぼうっとしていたら陽気な声に促された。

「行け!スペア狙えスペア!」
「いや、無理だろ…なんだよあの残し方」

同僚と仕事終わりに飲みに行き、何かの拍子にボウリングをしようってことになり断る暇さえ与えられずずるずると付いてきてしまった。
こうした遊びに乗るのもローが死んでからはじめてだった。思えば誘ってくれた同僚は、ローとの関係を知っていた少ない友人だったからあの日からも度々気を回してくれていたんだ。
おれは素直にそれを受けとれなくて断るばかりだったけど。
酒の入って気の大きくなった同僚たちが野次を飛ばし、ペアを組んでいる同僚は「左からカーブかけて際どいとこ狙おう」なんてわけの分からない指示を飛ばす。
家に帰らなければと思う反面、帰りたくないと足を竦ませる自分がいる。
背中に野次を受けて切り離されたような日常に思わず笑みがこぼれた。さっきまではまったく酔えないと思いながら啜っていた酒が今頃回ってきたのだろうか。
思い切り腕を振り放ったボウリングの球がスピードを落とさずピンへ向かっていった。左右に割れて残っていたピンは、パワーボールに弾かれて跳ね飛んだ左のピンが上手い具合に右へ行ったが惜しくも当たらず1本残ったままだった。

「惜しかったなァ!あとちょっとだったよ」
「すっげーなユースタス!ピンぶっ壊すかと思ったぜ」

ケタケタと笑う酔っ払いに交じって声を立てて笑う。
同僚の冗談に乗って腹を抱えて笑っても、ボウリングのピンをいくら力任せに弾き飛ばそうとも少しも気が晴れなかった。




散々騒いで投げて、誰もがくたくたになって帰路についた。力んで投げた腕と肩を痛めたおれも悪酔いに変わった酒が抜けずに重い足を引き摺って歩く。
勿論足が重い理由はそれだけではないけど。星の見えない夜空は靄がかって見えた。街路灯の灯りを頼りに歩いては気が重くなる。
普段ならもう寝てる頃だろう。日付は超えてしまったが仕事は休みだから気にすることろではないが。
ふと、俯けていた顔を上げれば公園が目に入った。この公園の道を曲がるか、外周に沿って行くかで自分の家までの道のりが変わる。
いつもは大回りになっても外周を沿って歩く方を選ぶ。1年前からだ…ローの死んだあの道を避けて通るにはそうするしかないからだ。
小さい公園だが、この辺には集合住宅がある。平日でも就学前の子供を遊ばせている親が多く昼間は賑やかだが深夜になれば流石に人気はなかった。
ふらりと立ち寄ってベンチに腰を下ろす。
自分の家なのだから気にせず帰ればいいのだ。それにまた、昨夜の様に彼はふらりと出ていくかもしれない。と言うか彼が夜に出歩いてくれるのなら自分は気兼ねなく一人、ベッドで寝ることができるじゃないか。

『どっちにしろ…お前にはきっと後悔させるだろう』
そう彼が言った通りに、彼を匿ってからというもの後悔ばかりだ。もし、匿わなければ一度きりの後悔で済んだのだろうか。

「そんなわけ…ねえよな……」

きっと後悔の日々に苛んでいたに違いない。なら彼を助けて…よかったんだよな。
「ロー…」
答えてくれないとわかってるのに呼ばずにはいられなかった。






The last final 23
(ロキド) 2015/04/03

『…ロー…』

掠れた呟きが頭から離れない。


昨夜、月の光に誘われるまま外に出た。
夢の中で死んだ男を探して泣いている男の傍で眠れるはずもなく、目的も宛てもなく歩いた。
寝静まった通りを歩き、この世界のトラファルガー・ローが死んだ場所にたどり着く。2度目…おれが現われたとされる時を含めるとここに来るのは3度目だ。
風にさらわれたのか、誰かが片づけたのか、男が供えた花束の残骸はもうそこにはない。
「…1年経ってからおれを呼んだ理由はなんだ」
不思議と、一点から目が離せなかった。そこへ向けて零れた言葉を誰が拾う筈もないが。
『ロー』
悲しみに濡れた声がする。哀叫も出来ず一人夢の中で今も男は探しているのだろうか。


仕事へと出かけて行った男の部屋。
男が起きる頃を見計らって戻った。何処へ行っていたのかと問う男には答えなかった。
トラファルガー・ローの死んだ場所へ行ったのだと聞かせたところで、あの男の憂いが晴れるわけでもない。
仮になにをしに行ったのかと問われたとしてもそれについて返してやれない。

一人で眠るには十分なベッドに寝そべるおれを一瞥し、男は噤んだ口を開くことなく部屋を出ていった。
ドアの閉まる音の後、ふと息を吐く。


いつまでこの世界に留まり続けるのか。
船員たちは…仲間は、おれの船はどうなっているのか。
勝手の分からない世界に焦りと苛立ちが日に増して行くのに加えて、この世界のユースタス屋はじれるほど弱い男だ。
いっそ壊してやりなくなるほどの衝動を抱かせる。

「あるいは……。それを待ち望んでるのかもしれねェ」

しくしくと、治りかけの傷が疼いた。






Place of my heart
(ロキド) 2015/03/20

たまに抱かれる男に、好きとか愛しいとかそんな言葉を吐かれる。
自分のモノになれ、好きなものを与えてやるからとヤった後の気怠い微睡みの中に笑いたくなるほど真剣に説く。
折角、気持ちのよい微睡みに身を任せていたのに。そんな残念な気持ちになりながら横たえていた身を起こしてさよならを言う。
次はもうない。用なしの携帯をテーブルに置き去りにして、代わりに煙草とライターを貰って行く。

「そう言うのは間に合ってる」


薄暗くなって行く街中にネオンが映え出す頃。
暗がりに紫煙を漂わせながら、目的の場所へと足を運ぶ。
いかにもオッサンが好みそうなキツイ煙草が不味く煙草を吸ってるのにイライラしだす。がじ、とフィルターを噛んでみてもちっとも気が張れなかった。

にゃお。
愛相程度の鳴き声に足下をみる。見知ったネコが尻尾をくねらせながら、靴先に頬擦りした。
しゃがみこんで猫の額を指先で掻いてやり、ふと前に言われた言葉を思い出した。

お前の吸う煙草の煙は、猫のしっぽみてェだな

ふうわりと帯がたなびくように煙る。うねり、揺れながら行き先を探す煙りが目の端へ流れてはスゥと消えた。

ボイラーと排気ダクトの唸りが繁華街の賑やかさを追いやる路地裏。
酒瓶のケースやゴミの積まれた小汚ない場所に、見知った猫は4匹に増えていた。

「おっと…今日は1匹多いな。フフ…お前らの取り分が減るァ」

ギッ、と耳につく軋んだ音をたてて店の裏口が空く。
中の灯りが外に漏れ出して、おれは眩しさに目を細めた。
猫たちは尻尾を立てながら、店の中から出てきた男の前に集りだす。

「久しぶりだな。誰かに拾われたのかと思ってた」

毛色だけは良いからな…なんて声を聞き、腰エプロンの長い裾が見える足下から視線を上げればゆるりと笑っている顔があった。
男は猫に擦り寄られないように注意しながら上背を屈めて猫たちの前に皿を置いた。途端に群がる猫がカツカツと皿に盛られた餌を頬張りはじめる。
あれほど男に愛想振り撒いていたのに、餌を与えられればもう男の方を見向きもしない。

「お前ももう少しまめに愛想を振り撒きにくれば可愛げもあるのにな」

揶揄されて苦い顔をするおれにもう一度声に出して笑い、吹かすだけの煙草を取り上げた。
一口吸って溜め息混じりに紫煙を吐き出す。

「こんなオッサンしか吸わねェようなキツい煙草…趣味が悪ィ」

そう言うなり外の水道脇にあったバケツの中に煙草を投げ捨てた。
じゅっと火の消える音を微かに聞き咎めて、すっかり皿を空にした猫たちはダクトの下で顔を洗い始めていた。

「入れよ。食いっぱぐれのままじゃ可愛そうだからな」

猫には触れなかったその手でおれの頭を一撫でして中へ促す。


「おかえり。ユースタス屋」

おれが来る度そう言って迎えながら。


ーーーーーーーーー
猫のようなキッド。
携帯は遊び相手がまるで首輪代わりに持たせてやってる設定。要らなくなったら返すか捨てます。
エプロン男は勿論ロー。最近上がり込んでくるようになった猫が可愛い。







おはようにしちゃ早すぎないか
(DMC) 2015/01/11

登場人物・初代・バージル(3)、若、ヒゲ

それは珍しくも朝、と言うよりもまだ夜が明け切らぬ時間帯。

「お、バージルか。おはよう…にしちゃ、早すぎねぇか?ジィさんもびっくりだ」
「ふん。それは貴様も同じだろう」
「違うね。俺は今から風呂に入って寝るんだ。だから俺に言ってくれるんなら"おやすみ"だぜ」

そんな早朝よりも早い時間に、初代とバージルは起きていた。初代を含めダンテ達は須く不規則な生活をしていて、朝に寝て昼…ともすれば夕方近くに起きてくることも更だ。
今日も本人が言うようなのだろう。
対してバージルは性格からか、いくら寝るのが遅くとも朝は9時迄には必ず起きる。大体は7、8時前後に起きていた筈だ。
依頼や本に夢中になっていたのだろうか、この時間にバージルがプライベートルーム意外に居るのも珍しいことだった。

「風呂は今使っているぞ」
「ああ。分かってるよ」

バージルの言葉に初代は頷きながらもスタスタと風呂場へのドアに向かって行く。
バージルは片眉を跳ね上げながら初代の前に通さないとばかりに腕を伸ばす。

「…なんだよオニィちゃん」
「先に使って居ると言った筈だが?」
「だから、分かってるって。別に一緒に入ろうが俺達の勝手だ…あ?」
「貴様…、なんだ?」
「風呂もしかして若が入ってんのか?」
「そうだ」
「…だいぶ前に、ヒゲも風呂に入りに行ったんだ」
「なんだと?」

ばっ、と2人がそろってドアを見る。
半分悪魔だと言ってもそれが透けて見えるわけでもないので、2人の目には古く褪せたドアしか映らない。が、聴力や気配を感じることは人並み以上であり、初代とバージルは音と気配を拾う為しばし黙りこくった。

「…愚弟が」
「遅いと思えば」

バージルの瞳に嫉妬や憤怒が燃え、苦々しく言葉を洩らす。
初代は呆れ混じりのため息を吐き、ドアのぶを捻った。


「はっ、はっ…あぅッ…おっさん…おっさん、俺とけそう」
「っ…ふ…、ふ…ぅ」

初代とバージルの耳に流れて来たのは濡れた吐息と喘ぎ声だった。
若と、ヒゲの。

「何をしてる」
「ッ!?あ…バージル…っ」
「うぅっ…若…やめっ」

バージルが冷めた切った声を掛けると、夢見心地のような顔で腰を揺らしていた若が冷や水を被ったかのように弾かれたように顔を上げる。
瞳は潤み、紅潮した顔には汗かシャワーを浴びた為か髪の毛が張り付いていた。

「何をしているんだ、と訊いている」
「痛っ!怒るなよ…バージル」

バージルに髪を鷲掴みにされた若は身体を竦めて見せるもヒゲの腰から離れようとはしない。
逆に縋るように腰を押し付けて、掴んだ腰を更に強く引き寄せる。
始まった双子の争いに巻き込まれたヒゲの呻く声が哀しく浴室に響いた。


−−−−−−−−
初代×ヒゲ。情事後、ヒゲが先に風呂に行ったら若と鉢合わせになり、初代に続き若にまで食われたヒゲダンテの不運。






栄養不足編-8
(いつも隣りに) 2015/01/11

※栄養不足編の前話はカテゴリ『いつも隣に』から





ずうんと頭にのしかかるような頭痛に目が開かず、唸りをあげた。
悪酔いしたあげくにトラファルガーに八つ当たりした次の朝。滅多にならない二日酔いになった。

「ん゛ー…」

とくに出そうとしているわけではない唸りが漏れる。
時計が見たい。遅出だが今日も通常出勤だ。いつまでも布団に突っ伏してるわけにもいかない。
どうにか手に取った時計を漸く開いた片目で確認する。

「ッ…くそ…」

慌てて起き上がると鐘を突いたように頭痛が増して足元がふらついた。
いっそ寝過ごせばよかったものを、と悪態をつく。
急げばギリギリ間に合う時間なのが忌々しかった。





「あれ?珍しい…遅刻ですかユースタスさん」
「…ああ…ちょっと」
「わ。顔色悪いですけど平気です?」

普段ならギリギリ間に合う筈が、二日酔いの頭を抱えてだと10分余りの遅刻になった。

「そんな顔色悪ィ?」
「色が悪いと言うか色が無いです。まっっしろ」
「…二日酔いで…参ったぜ。頭割れそー」
「二日酔い!?」
「あ?つか、頭に響くからでかい声は勘弁して」
「ね、ね!聞きました?ユースタスさんが二日酔いしてきましたよっ」
「ええ?なに本当?ユースタスくん二日酔い?」
「うわ、君、昨夜どんな飲み方したの?」
「ユースタスさんを酔わせたお酒ってなんでしょう?蟒蛇みたいな人がこんなになるなんて」
「……はぁ…」

言いたい放題言い出した同僚達に何を言う気にもならなかった。
確かに二日酔いなんて、初めて仲間内で飲んで騒いだ明くる日、酒が抜けなかったことがあったくらいでこんなに酷いのは経験した覚えがない。

「ありゃ。話すのもしんどそうですね」
「忙しくないし、ユースタスくんコンビニでも行ってなんか二日酔いに効くの買って来なよ。それともおれが行こうか?」
「あ、ついでにわたしのお昼買って来てくださいー。からあげな気分」
「ぼくー、幕の内でおねがいします」
「君ら出無精だなぁ…お昼くらい外に食べに出なよ」

能天気な同僚の声の煩わしさに、なんで休まなかったんだろうと今更ながらに後悔した。






ペンキラ
(ロキド以外) 2015/01/10



「傷だらけだな…」
「…お前もおれと変らない」

背後からキラーを抱き締めてペンギンは腕の中にある無数の傷に濡れた身体を眺め、まだ新しい今にも血の滲みだしそうな傷を指先でなぞった。
かく言うペンギンの身体にも大小様々な傷があるがキラーの身体にある傷程数は多くはない。

「この傷は痕にならずに治るな」
「…別に今更痕になろうが気にしないが…」
「おれは気になるかな…。おれ以外に傷付けさせたくないし?」
「…う、うるさい…っ」

耳元で囁かれた言葉をキラーは予測など出来てるはずもなく戸惑い、身体に這う指を捕らえ自分でも驚く程に上ずった声で咎めた。

「キラー」
「ッ…」

普段は着けている仮面を早い内にペンギンによって取り払われていたキラーは素顔を晒している。
その顔中にキスをし舌を這わされ堪らずに身を捩った。
顔に走る大きな傷跡…。それを隠す為に仮面を着けているのだが、キラー自身、歪な傷のある自分の顔が醜く思い嫌っている。
しかしペンギンはそんなことに構わずキラーの素顔を初めて見た時には綺麗な顔だと言い切り、顔の傷に触れキラーの目を見つめてこの傷さえ愛しいとキスをした。

「なぁ…直ぐに下向かないで。おれを見てよ」
「…、それは…」
「おれの顔見るの嫌?」

口付けた後、直ぐに俯いてしまうキラーにペンギンは難をを示すが強情にもキラーは俯けた顔を上げようとはしない。
「そうじゃないっ…」
「ならちゃんとおれの顔見て。そんなに顔逸らされたらおれ、自信なくしちゃうだろ?」
「……自信、あったのか」
「あ、ひでぇなァそれ」







The last final 22
(ロキド) 2014/01/17


こんなにからっぽで無気力でも仕事はできるのもなのだと知ったのはそれこそ一年前のことだ。
ローの家族でもなんでもないおれはローの葬式の為に3日間仕事を休んだ。
名分は「友人」の葬式なんていうもので、おれは翌月の給与明細に付いた休暇のしるしを見て淋しかった。

考えないように、ただ仕事をしていたらあっという間に一日が経つ。同僚のやっと終わったという気だるげな溜息に交じって、嘆息する。
彼は、どうしているのか。
『お前には関係ない』耳に残る声が帰宅を躊躇わせた。いっそ、今朝方の様にどこかへ出ていればいいのにとさえ思ってしまった。
匿うと決めたのは自分なのに。

「ユースタス。最近すぐ帰るけどいい人でもいるのかよ」
そんな同僚の声に鼻で笑い飛ばしながら悪態を返してやる。
鼻で笑ったのは脳裏に浮かんだ彼に似た男の姿を打ち消したかったからかもしれない。
「そんなんじゃねェよ」
「じゃー、たまには飲んで行かねェ?」
「……1杯くらいは奢りだろ?」
「はー?…ま、しゃあねーなァ、誘っちまったの俺だし」
「マジで!?お前の奢りかよ」
「お前らには奢らねェよ!」
他に数人寄ってたかってくる同僚に交じって笑いながら、おれは帰りたくないと思うままに久し振りに同僚に誘われることにした。

そうだ。どうせ関係ないのだから…。






The last final 21
(ロキド) 2013/09/13

夢を見た。細部まで覚えてはいないけれどそれはローの夢だった気がする。
何かを話すローの声は聞こえなかった。パクパクと動く唇を読み解こうとおれは必死になっていたような気がする。
手を伸ばしてもローは遠ざかるばかりなのに、おれの頬を拭ったのは、誰の指だったのだろうか。




差し込んできた朝の光に起こされる。窓を見ればカーテンが少しだけ開いていていた。しっかり締めなかったのだろうかと昨夜のことを思い出しながら、ふと己の横を見る。
トラファルガーの姿がなかった。
「…いない…」
シーツを撫でてみても温もりは残っていなかった。先に起きているのだろうかと耳をそばだてても部屋のどこからも物音や気配を感じられなかった。
「彼奴の世界に帰ったのか…?」
その呟きに帰ってくる声もなく、外から聞こえる車や生活音に掻き消される。
ローの夢のあとに、似た存在とは言え彼が居なくなっていることが哀しく思えた。胸に冷たい何かか流れ込んでくるような気さえする。
「……」
動かなければ。仕事もあるし、と立ち上がるとそれが目に入った。トラファルガーの刀だ。
これを持たずに帰ったのか…?手を伸ばしかけたところで、玄関のドアノブが回る音がした。
「…!…トラファ…」
「あぁ…。起きてたか」
外に出ていたのか、トラファルガーは部屋に入るなりドサリとベッドに仰向けに寝転んだ。その時丁度アラームが鳴り、トラファルガーはその方向を見ずに少しだけ後ろに伸ばした手で煩わしい音を止める。
「何処…行ってたんだ…?」
「その辺だ。…お前には関係ない」
そう言って目を閉じてしまった彼は、今から寝るつもりなのだろうか。詮索をするなと暗に言われたその言葉におれの言葉は続かなかった。

朝の支度をして、ベッドに寝そべったきりそのままの姿で動かない彼をチラリと伺う。目を閉じてはいるがきっと寝ていないだろう。
軽い朝食を飲み物と共に流し込み、居心地の悪い部屋から彼に声を掛けることなく出た。
彼の分の朝食はテーブルにそのまま…気が向けば食べるだろうし、食べないならそれでいい。

彼は同じベッドで過ごすことに飽きただけだろう。怪我も治ったと自分で言っていたし。行こうと思えば何処にだって…だから、何処へでも行けばいいんだ。


(ロー…)
お前を焦がれる思いだけが膨らんでいく。






The last final 20
(ロキド) 2013/09/12

「…ロー…」
ぽつりと閉じた瞼から水が落ちていく。暗がりに慣れた眼でそれは十分に見て取れた。
ぐずりと涙にぬれた声音がおれのものではない名を呼ぶ。
夢の淵での再会を果たしているのか、それとも別れの際を繰り返し見ているのか…男の夢を覗き見ることなんてできないので、泣いている理由もわからなかった。
時折動く指先は何を求めているのだろうか。
だが、夢の中の『ロー』は男を連れて行くことはないだろう。姿を見せては離れて行くはずだ。
男を…ユースタス屋を置いて。
「苦しむなら見なければいい…」
夢は記憶の焼回しだ。
「そいつを焦がれて今さら何になる。夢に逃げてその度に泣くつもりか」
眠る男に語りかければ固く拳を握っていた。浅い夢に眼球が動き瞼を震わせている。
「馬鹿な男だ」
濡れた目尻に指を這わせ、涙を拭ってやった。
ふ、と息を吐きくたりとこちらを向く横顔を異様に明るい月明かりが映し出していた。






The last final 19
(ロキド) 2013/04/22

波の音も聞こえない夜の静寂。
耳を澄ませばいろいろな音は聞こえてくるが、この世界では何に備えようもなく気配を探ることも耳を欹てることもやめた。
気の抜けきった知覚に無音が煩く思える。その中に緩やかな寝息が微かに混じって聞こえるのを、唯一の音として認めていた。

気を張ることに慣れていない躰は連日の寝不足も相まって短時間の間でも深く眠りに落ちるようになったようだ。
頑なに浅い眠りを繰り返しおれを気にしていた男は今は疲れに負け眠りの底に落ちている。深い底に落ちる前に寝返りをしたのか、いつものように壁の方ではなく此方を向いて寝ていた。
そのうち、浅いところに戻って来ては慌てて壁の方へ向き直るのだろう。
整髪料のついていない髪が目元や頬にかかっている。線が細い優男なわけでもないのに、見知った男と比べると儚さを覚えた。
この世界で死んだトラファルガー・ローを思い続けているからだろう。後を追うこともできず、ただただ生きて、自分にもいつか訪れるだろう死を早く早くと待っているのだ。
無意識に伸びた手を寸でで寝乱れた髪のひと房に触れるだけに留めた。
手負いの獣も、拾われたのも己の方だと言うのに、この男と居るとまるで迷い猫を保護したような気分だ。




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