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ジャンル入り混じります。ご了承ください。
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The last final 27
(ロキド) 2015/04/30

未だ帰らない男に焦れ、今朝のことを気にして帰らないつもりなのかと呆れてくる。
自分の家なのだから帰ってきておれが気に食わないなら叩き出せばいいものを。
もう日を跨ぐぞ…。
自分の所為だと自覚がある分、男が帰らないことにしたくもない心配と苛立ちが湧いた。
遠くでサイレンが鳴っているのが聞こえる。この世界では珍しくない音だとはわかっているが今聞くのには癇に障った。



星も月も隠れた夜道はこの世界でも暗かった。街路灯は途切れ途切れにあるが細い通りになると寝静まりつつある町は闇と静寂が広がっていた。
おれには好都合であるから人目を気にせず道なりに歩く。この周辺は最初で歩き回った時に覚えた道だが、今も目的や当てがあって歩いているわけじゃない。
男の帰らない部屋から出て、いったいおれは何をしているのか…。まとわりつくような湿った風を鬱陶しく感じながら、また気づけばあの場所だった。代わり映えのないひっそりとした夜道。
感傷的になるのは下らないと足求めずにその場を過ぎ去った。

車も稀にしか通らない。男がどこでなにをしてるかも検討すらつかないと言うのに、男の家周辺を歩いて何になるのだろうか。
そう思っていると微かな音が聞こえた。甲高い、しかし虫の声とも違うもっと機械的な。
耳を澄ましたところですぐに聞こえなくなってしまったその音の方向へ何故だか足が向いた。
しばらく歩くと低い樹木に囲われたそう広くはない公園を見つける。音の聞こえた方にに向かって歩いてきたが音の出どころはわからなかった。
ただ、遠目にも街灯に照らされたベンチ座る人影を見つける。様子を見る限り一人でいるのに何か喋っているようだ。
確証があるわけではなかったがその人影に向かい歩み寄る。脱力したようにベンチに凭れて座るのはあの男だった。

この世界で言う"携帯電話"で男は時折困ったような顔をして微かに笑いながら話していた。
男の声を聴いている限り頷く声だけが多く、時折辟易とした表情をして見せる。
歩み寄って行くうちに街灯の真下に入り、眩しさに少し顔を顰めると男の顔がこちらを向いた。
目を見開き驚いた男は電話相手への返事を吃らせた。慌てて取り繕いながら男は頻りに「平気、大丈夫だから」と繰り返しておれから顔を背けるように背を丸める。
「もう切るぜ…ああ、大丈夫だって……ありがとう、な」
最後は消え入りそうな声で礼を言い通話を終わらせた男は動きの悪い人形の様に身を固く強張らせていた。






The last final 26
(ロキド) 2015/04/29

長く眠っていたと思ったがまだ昼も過ぎていなかった。男が仕事へ出ていってから数時間…何に備える必要もないこの世界では身体が鈍りそうだ。
その証拠に、こうして深く眠り平穏な昼下がりを迎えようとしてる。まったく自堕落な生活だ。
身体を起こせばツキリと引き攣る肩の傷を煩わしく思い、わざと大袈裟に傷のある肩を回した。

しかしやることのないこの世界では腑抜けもすると言うものだ。この世界のトラファルガー・ローが所持していたと言う医療知識の詰まった本は大半読み終えた。
知っている知識も多かったが、この世界ではさらに発展し画期的な治療法が日々産み出されているらしい。
この世界のトラファルガー・ローは古い医療技術にも興味があったようでそれらの本も稀にあった。
ただ、最初にこの部屋で目覚めた日に見たアルバムは目の届く場所にはないようだ。
あの日はテーブルの上に出されていたから元々の在り処はわからない。だが、しまうならこの本棚だろうとは思っていたがそれらしき物はなかった。
男が意図的にしまう場所を変えたのだろう。家探しすれば簡単に見つかりそうだがそこまでする理由も目的もない。
トラファルガー・ローが書き溜めたノートの一冊を手に取り捲る。
書いた覚えのない、自分と似た筆跡の文字を奇妙に思いながら目で追った。




日が暮れ、部屋に差し込んでいた西日も落ちてからどれだけ経ったか。男はまだ帰ってこなかった。普段なら多少のばらつきがあってももう帰ってきてもいい頃のはすだが。
そう思い始めてからも時間は過ぎて行き、暗闇に慣れた目で部屋の輪郭を眺めていた。
「チッ…」
無意識に出た舌打ちが嫌に耳に付く。今朝の男とのやり取りを思い出した。

昨夜眠れずに外へ出た。浅い眠りの中、隣りで啜り泣く男の声を聴いて過ごす趣味もない。
確かに、おれ自身がイラついていたのもある。この世界の微温湯のような平穏さ加減には気が狂いそうだ。
そのイラ立ちを男にぶつけるのは道理ではないとわかっているから下手な干渉をするのもされるのも拒んだ。
男が起きる時間に戻ったつもりだが、それよりも早く起きていた男は外から戻ったおれを見て驚き、そしてあからさまにほっとした顔を見せた。
その顔から次いで出てくる言葉は想像がついた。案の定、何処へ行っていたのかと問う男に『お前には関係ない』と返す。その言葉で意味を汲み取った男はそれ以上詮索せずに口を噤んだ。

もう一度出そうになった舌打ちを堪えて溜息を零す。
「関係ねェ…か」

自嘲の笑いがでる。随分自分勝手な物言いだ。
こうしてあの男に取り入っている身の上だと言うのに。






The last final 25
(ロキド) 2015/04/28

湿った風が頬を撫でて行く。朝には雨が降りそうだ。
おれはベンチに腰を下ろしたまま動けないでいた。連日の解けない緊張と取れない疲れに加えて、飲酒して憂さを晴らす様に動かした身体はどんどん重くなっていく。
ふと、ポケットの中で携帯が震え静かな夜闇にけたたましい音が鳴った。先ほど別れた同僚からだった。

「…はい」
出ないわけにもいかなくて通話に出る。酔いに任せていた先ほどの陽気な様子とは違い大分落ち着いた同僚がまたおれを気にかけて連絡を寄越してきたようだ。
同僚たちにつられるように笑っていたおれが、同僚の目には無理していると映ったようだ。
「ああ…平気。久々だったからはしゃいだだけだ」
心配される自分をどこか客観的に感じて思わず笑う。それを聞き咎めた同僚は間をおいて心配しているのだと言ってくれた。
生返事を返すと、まだ完全に酔いが醒めてないのかどこか説教臭く同僚が喋り出す。
苦笑いをしながら繰り返し返事を返していると、視界の端に街路灯に浮かんだ陰が目に入り肩がはねた。
「あ、いや…なんもねェよ。ああ…わかったから。もう平気だって」
こんな夜更けに音もなく人が現われたらただでさえ驚きもすると言うのに、現われたのが彼…トラファルガーだった。
息を詰まらせたおれを不審そうにする電話の向こうの同僚に慌てて返事を返す。少し離れたところからじっと寄こされる視線から逃れるように顔を背けた。
ドクドクと胸が煩く鳴り響き、同僚の声は半分も聞き取れなかった。






The last final 24
(ロキド) 2015/04/27

「おら、次お前の番」

ぼうっとしていたら陽気な声に促された。

「行け!スペア狙えスペア!」
「いや、無理だろ…なんだよあの残し方」

同僚と仕事終わりに飲みに行き、何かの拍子にボウリングをしようってことになり断る暇さえ与えられずずるずると付いてきてしまった。
こうした遊びに乗るのもローが死んでからはじめてだった。思えば誘ってくれた同僚は、ローとの関係を知っていた少ない友人だったからあの日からも度々気を回してくれていたんだ。
おれは素直にそれを受けとれなくて断るばかりだったけど。
酒の入って気の大きくなった同僚たちが野次を飛ばし、ペアを組んでいる同僚は「左からカーブかけて際どいとこ狙おう」なんてわけの分からない指示を飛ばす。
家に帰らなければと思う反面、帰りたくないと足を竦ませる自分がいる。
背中に野次を受けて切り離されたような日常に思わず笑みがこぼれた。さっきまではまったく酔えないと思いながら啜っていた酒が今頃回ってきたのだろうか。
思い切り腕を振り放ったボウリングの球がスピードを落とさずピンへ向かっていった。左右に割れて残っていたピンは、パワーボールに弾かれて跳ね飛んだ左のピンが上手い具合に右へ行ったが惜しくも当たらず1本残ったままだった。

「惜しかったなァ!あとちょっとだったよ」
「すっげーなユースタス!ピンぶっ壊すかと思ったぜ」

ケタケタと笑う酔っ払いに交じって声を立てて笑う。
同僚の冗談に乗って腹を抱えて笑っても、ボウリングのピンをいくら力任せに弾き飛ばそうとも少しも気が晴れなかった。




散々騒いで投げて、誰もがくたくたになって帰路についた。力んで投げた腕と肩を痛めたおれも悪酔いに変わった酒が抜けずに重い足を引き摺って歩く。
勿論足が重い理由はそれだけではないけど。星の見えない夜空は靄がかって見えた。街路灯の灯りを頼りに歩いては気が重くなる。
普段ならもう寝てる頃だろう。日付は超えてしまったが仕事は休みだから気にすることろではないが。
ふと、俯けていた顔を上げれば公園が目に入った。この公園の道を曲がるか、外周に沿って行くかで自分の家までの道のりが変わる。
いつもは大回りになっても外周を沿って歩く方を選ぶ。1年前からだ…ローの死んだあの道を避けて通るにはそうするしかないからだ。
小さい公園だが、この辺には集合住宅がある。平日でも就学前の子供を遊ばせている親が多く昼間は賑やかだが深夜になれば流石に人気はなかった。
ふらりと立ち寄ってベンチに腰を下ろす。
自分の家なのだから気にせず帰ればいいのだ。それにまた、昨夜の様に彼はふらりと出ていくかもしれない。と言うか彼が夜に出歩いてくれるのなら自分は気兼ねなく一人、ベッドで寝ることができるじゃないか。

『どっちにしろ…お前にはきっと後悔させるだろう』
そう彼が言った通りに、彼を匿ってからというもの後悔ばかりだ。もし、匿わなければ一度きりの後悔で済んだのだろうか。

「そんなわけ…ねえよな……」

きっと後悔の日々に苛んでいたに違いない。なら彼を助けて…よかったんだよな。
「ロー…」
答えてくれないとわかってるのに呼ばずにはいられなかった。






The last final 23
(ロキド) 2015/04/03

『…ロー…』

掠れた呟きが頭から離れない。


昨夜、月の光に誘われるまま外に出た。
夢の中で死んだ男を探して泣いている男の傍で眠れるはずもなく、目的も宛てもなく歩いた。
寝静まった通りを歩き、この世界のトラファルガー・ローが死んだ場所にたどり着く。2度目…おれが現われたとされる時を含めるとここに来るのは3度目だ。
風にさらわれたのか、誰かが片づけたのか、男が供えた花束の残骸はもうそこにはない。
「…1年経ってからおれを呼んだ理由はなんだ」
不思議と、一点から目が離せなかった。そこへ向けて零れた言葉を誰が拾う筈もないが。
『ロー』
悲しみに濡れた声がする。哀叫も出来ず一人夢の中で今も男は探しているのだろうか。


仕事へと出かけて行った男の部屋。
男が起きる頃を見計らって戻った。何処へ行っていたのかと問う男には答えなかった。
トラファルガー・ローの死んだ場所へ行ったのだと聞かせたところで、あの男の憂いが晴れるわけでもない。
仮になにをしに行ったのかと問われたとしてもそれについて返してやれない。

一人で眠るには十分なベッドに寝そべるおれを一瞥し、男は噤んだ口を開くことなく部屋を出ていった。
ドアの閉まる音の後、ふと息を吐く。


いつまでこの世界に留まり続けるのか。
船員たちは…仲間は、おれの船はどうなっているのか。
勝手の分からない世界に焦りと苛立ちが日に増して行くのに加えて、この世界のユースタス屋はじれるほど弱い男だ。
いっそ壊してやりなくなるほどの衝動を抱かせる。

「あるいは……。それを待ち望んでるのかもしれねェ」

しくしくと、治りかけの傷が疼いた。




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