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ジャンル入り混じります。ご了承ください。
趣味のクロスオーバーもあるかも
・完結見込みのない話も置いてあります。


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栄養不足編-8
(いつも隣りに) 2015/01/11

※栄養不足編の前話はカテゴリ『いつも隣に』から





ずうんと頭にのしかかるような頭痛に目が開かず、唸りをあげた。
悪酔いしたあげくにトラファルガーに八つ当たりした次の朝。滅多にならない二日酔いになった。

「ん゛ー…」

とくに出そうとしているわけではない唸りが漏れる。
時計が見たい。遅出だが今日も通常出勤だ。いつまでも布団に突っ伏してるわけにもいかない。
どうにか手に取った時計を漸く開いた片目で確認する。

「ッ…くそ…」

慌てて起き上がると鐘を突いたように頭痛が増して足元がふらついた。
いっそ寝過ごせばよかったものを、と悪態をつく。
急げばギリギリ間に合う時間なのが忌々しかった。





「あれ?珍しい…遅刻ですかユースタスさん」
「…ああ…ちょっと」
「わ。顔色悪いですけど平気です?」

普段ならギリギリ間に合う筈が、二日酔いの頭を抱えてだと10分余りの遅刻になった。

「そんな顔色悪ィ?」
「色が悪いと言うか色が無いです。まっっしろ」
「…二日酔いで…参ったぜ。頭割れそー」
「二日酔い!?」
「あ?つか、頭に響くからでかい声は勘弁して」
「ね、ね!聞きました?ユースタスさんが二日酔いしてきましたよっ」
「ええ?なに本当?ユースタスくん二日酔い?」
「うわ、君、昨夜どんな飲み方したの?」
「ユースタスさんを酔わせたお酒ってなんでしょう?蟒蛇みたいな人がこんなになるなんて」
「……はぁ…」

言いたい放題言い出した同僚達に何を言う気にもならなかった。
確かに二日酔いなんて、初めて仲間内で飲んで騒いだ明くる日、酒が抜けなかったことがあったくらいでこんなに酷いのは経験した覚えがない。

「ありゃ。話すのもしんどそうですね」
「忙しくないし、ユースタスくんコンビニでも行ってなんか二日酔いに効くの買って来なよ。それともおれが行こうか?」
「あ、ついでにわたしのお昼買って来てくださいー。からあげな気分」
「ぼくー、幕の内でおねがいします」
「君ら出無精だなぁ…お昼くらい外に食べに出なよ」

能天気な同僚の声の煩わしさに、なんで休まなかったんだろうと今更ながらに後悔した。






栄養不足編-7
(いつも隣りに) 2012/06/13

憂鬱だった気分が晴れた。


チチチチ、とガスコンロの火をつけて水を這った小鍋を火に掛けた。
夜食や小腹の空いた時にはお馴染みのインスタントラーメンを、菓子やらの食料を適当に保管している洗濯カゴのようなカゴから漁り出す。

ユースタス屋の部屋に行ったのが、確か19時前だった。ユースタス屋の帰りを待つ久々にのんびりした時間に、普段通りソファに長々と横になっていると訪れる眠気。
起こされるか、良い匂いに誘われて自然と目が覚めるか…どちらにしても、帰って来たユースタス屋が夕飯を作ってくれていて、俺はユースタス屋に「おかえり」を言って一緒に飯を食う。
今日もそんな日になると思っていたが、腹に降って来た軽い何かに揺り起こされて見ると驚いた顔をしたユースタス屋と目が合った。
腹に乗る仄かに温かいシャツはユースタス屋がたった今脱いで放ったのだろう。
微かに煙草の匂いがした。
寝起きの目には少し痛い煌々とした電気に照らされるユースタス屋の顔も若干赤く、飲みに行っていたんだろうと直ぐにわかった。
ユースタス屋が見る見る不機嫌に顔をしかめ、俺はバツが悪くなる。
ユースタス屋のこう言う表情が苦手だった。俺の言葉や行動が足らなかった時に良くこんな顔をするからだ。

『あー、今日はバイト休みでユースタス屋の帰り待ってた』
『休みで…って!俺、知らなかったぞ!?』
『あぁ、ごめん…言うの忘れてたんだ。メールしときゃよかったかも』

当りをつけて言い訳をすると、ユースタス屋は呆れと不満をまぜこぜにした。
(まるで、『先に聞いてりゃ飲みになんていかなった』って顔をしてたな)
思い返すだけ、ニヤける。
(優先されてる気がする)
いや、思い込みじゃないだろうな。
ユースタス屋はなんだかんだで俺を一番に考えてくれてるとわかる。

最近になって、自分の卑しさをまざまざと感じるようになった。
ユースタス屋があからさまに態度や表情に出す"それ"が心地良い。
言葉には出さないのに俺は分かってしまう。ユースタス屋が何に残念がって何に落胆して何に後悔したのか。

『今日飲みだった?あ、もう昨日だな…珍しいな、ユースタス屋がこんな時間まで外で飲むって』
『っ!普段はテメェがいるから…!』

「可愛いよな…」

ふーふー、と出来上がったラーメンを啜りながらユースタス屋の言い掛けた言葉を反芻する。
俺の所為、と言いたかったのではないだろう。
もっと…ユースタス屋が認めたくない感情があるはずだ。
でも俺は俺の所為にされてもいい。
俺が嫉妬するからユースタス屋は早く帰って来て俺を甘やかす。
そして飲み足らなかったユースタス屋に酌をしながら深夜まで付き合うのが好きだから。

今日はどんな飲み方をしたのだろうか。
仲間内や2人の時とは全く違う酔い方をしていた。
つつけば癇癪玉のように弾けるような語気と渋面は新鮮だった。
(赤味が差して潤んだ目は泣きそうだともおもった)

そんなユースタス屋におやすみとキスをした。
(朝飯を食う頃の俺は夕食時から続くだろう甘い甘いキス以上の夜を期待していたが)
しおらしく目を伏せたユースタス屋にここ数日で溜まりに溜まった悶々はすっかり消え去った。
けして淡泊ではないが俺の卑しさは現金なもので、ユースタス屋の"あからさま"を見ると純粋な愛しさが膨れ上がる。

「フフ…」

さて、今から本当に課題を片付けようか。
提出期限にはまだ余裕はあるやつだけど。


あと2週間ちょい…
深夜のバイトが終ったら、俺の卑しい心をちょっとだけユースタス屋に教えてやろうと決めた。







栄養不足編‐6
(いつも隣りに) 2012/06/12


久々に飲み過ぎたと思った。
トラファルガーもどうせ居ないのだし。と、誘われた飲み会に顔を出して久々に日付が変わる間際の帰宅。
普段より少し飲み過ぎてクラクラする。とてもじゃないが、これを気持ちの良い酔いとは言えなかった。
火照りが鬱陶しく感じる…悪酔いの方だった。
ガチャガチャ言わせながら鍵を開けて、乱暴にドアノブを捻る。
靴を脱ぎ捨てて、電気をつけた。
パチッ!とスイッチが些か大きな音を鳴らす。
部屋の奥まで大股で歩きバサリと脱いだ上着をソファへと放った。

「ぅ、…ん?」
「っ!?」

もそりと動くソファの上のそれに驚いた。
眩しいのが「うー」だの唸りながら目を擦るトラファルガーはむくりと身体を起した。

「お、まえ…」
「んん、ああ…ユースタス屋。おかえり」

くぁ、と欠伸をして胸元に乗る俺の放った上着をそっとソファの背に掛ける。

「なっ…!なんで居るんだ?バイトはっ」
「あー、今日はバイト休みでユースタス屋の帰り待ってた」
「休みで…って!俺、知らなかったぞ!?」
「あぁ、ごめん…言うの忘れてたんだ。メールしときゃよかったかも」
「…、」
「今日飲みだった?あ、もう昨日だな…珍しいな、ユースタス屋がこんな時間まで外で飲むって」
「っ!普段はテメェがいるから…!」

日付けが変わり、数分が経った。
トラファルガーはずっと寝ていたらしく、時間の経過に驚いている。
それもそうだろう。普段俺が仕事が遅くなっても、飲みに出かけてもまだ早い時間には帰宅する。
それに、別に互いにそうと決めたわけではなかったが、毎回飲みに出る時はトラファルガーにもそれを伝えていた。
トラファルガーも、殆ど出る事はなかったがたまに友人達と遊ぶ時には俺にそうと言ってくる。
恋人同士であるし、一緒に飯を食っている間柄に極自然と馴染んだのだ。

「…おれ?」
「……いや…違う。なんでもねェ…」
「…、ユースタス屋?酔っ払ってるか?」
「あぁ…悪い」

トラファルガーの所為にしようとした自分にハタと我に返る。
俺の語気の強さに、トラファルガーが苦笑してソファから立ち上がった。

「お前、飯は?」
「ああ。いいよ…寝てたから腹減ってねぇや」

立ち上がったトラファルガーが、そのまま帰ってしまう気がして咄嗟に出た言葉に「そう言えば」と今思い出したようにトラファルガーが返えす。

「おやすみ。ユースタス屋」
「…また、寝んのか?」
「いや。俺は今から課題しねぇと…寝てて全然やってねぇの思い出したし」

トラファルガーの体温の低い手が、火照った俺の頬に触れる。
寝起きで、まだ眠たげなトラファルガーの眼と眼が合った。

「朝飯、ありがとな。久々に食えたし美味かった」
「ん…」
「明日はおれ、早ェから…ユースタス屋も明日は寝坊してぇだろ?」

へら、と笑ってトラファルガーが短いキスをした。
くしゃ、と軽く頭を撫で「二日酔いにならねェといいな」と呟き近かった距離を離していく。

「おやすみユースタス屋。窓の鍵頼んだぜ」

開いた窓から夜風が微かに入り込み、そして直ぐにまた部屋の空気は籠る。









栄養不足編-5
(いつも隣りに) 2012/04/30


寝た気がしない。開かない目を擦り、気怠さを纏いながら無理矢理に起きた。

朝飯を食う気がしなくて、インスタントのコーンスープを腹に流し入れた。
それでも、もしかしたらとトラファルガーの分の朝食は用意する。
適当なあり合わせで軽く。皿に盛ってラップを被せて置いた。
わかってはいたが、トラファルガーは俺が出る時間になっても起きてこない。
静かにドアを閉め鍵をかけて仕事へと向かった。



◇◇◇

「……頭が重い…」

急に浮上した意識に完全に目が覚めた。起き上がると頭が鈍く痛む気がして、それを振り払うように溜め息を吐く。
携帯の時計を見ると朝の9時過ぎだった。
今日こそは早く起きてユースタス屋と朝飯食って、今晩のバイトは休みだって言おうと思ってたのに。
仕事に行くユースタス屋を見送ろうと思ってたのに…。
多分もう、普段通りならとっくに出かけているはずだ。
残念に思いながら、身仕度をして、なんとなく…なんとなく。ユースタス屋の部屋に行ってみる。
いつも通りベランダ伝いに窓から窓へ。
電気の消された、人の気配の無い室内が見える。

「…やっぱもう出て、…ん?」

から、と窓が開いた。
珍しいことに、ユースタス屋は出かけてしまっているのに不用心にも窓の鍵は閉め忘れられていた。

「珍しいな、ユースタス屋が鍵閉め忘れるとか」

確認すれば、玄関の鍵はちゃんと閉められている。
珍しいがりながらもふとテーブルを見ると、内側に水滴の溜まったラップのかけられた皿があった。
ラップをめくるとベーコンと野菜炒めとスクランブルエッグが盛ってある。
俺用の朝飯だろうか…温かい内にラップをかけたのだろう。
蒸気で少し水っぽいのも愛嬌だと思えた。
勿論、米と味噌汁と食べても美味いのだが、ユースタス屋流にトーストにはみ出るくらいに具を詰めてクラブハウスサンドにして食うのが俺も好きだった。

いつもなら、米かパンかを聞いてくれるユースタス屋は、今日は傍らにパン袋とインスタントのコーンスープの袋を置いてくれている。

「ユースタス屋、早く帰ってくりゃいいな…」

明日の朝は早いが今晩は十分に時間がある。
今晩はユースタス屋の作った飯が食えるだろうと、俺は待遠しく思いながらトースターにパンを突っ込んだ。










栄養不足編-4
(いつも隣りに) 2012/04/29


深夜、時計を見ると2時が近かった。
注意はしていても、どうしても鳴る物音。その音に浅かった眠りから揺り起こされる。
バイトを終えたトラファルガーが漸く帰って来たのだろう。
隣り合う壁にベッドを寄せているので、些細な物音も深夜の静けさに響いた。

隣りにいるのに、トラファルガーとは3日程まともに顔を合わせていない。
たかが、3日だ。恋人同士も、一緒に暮らしたり、学校や職場が同じでなければ3日会わないくらいは普通にあるだろう。
実際今までも、そんなもんだった気がする。
目が冴えてしまいぼんやりと輪郭のわかる天井を見ながら、この1年を思い返してみる。

…トラファルガーと過ごすようになって、飯を作るのが当たり前になっていた。
それまでは食いに出たり、飲みに誘われればそれに顔をだしたり、面倒なら惣菜だったりインスタント食品で済ませたり、自炊と半々くらいだった気がする。
仲間内で集まったり、キラーなど友人がくれば適度に腕を振ったりもしていた。
不味いと言われた事はないし、自分で食べても、まぁ妥当。と思うくらいだ。
そう言えば、その時々の恋人には手料理を振る舞われたことはあっても、俺が提供することはなかった気がする。
自宅で共に過ごす程、一緒に居なかったからだろうか。


あぁ、なんだか…。

「……チッ」

寝返りを打ち壁に背を向ける。今、酷く女々しい言葉が頭を過ぎていった。
その所為だろうか。前に付き合っていた女の事を思い出した。
忘れるにも、忘れられない思い出と引っ付いてくる…あれはトラファルガーが越して来た前の日だった。
その、女と別れた日は。
言っては悪いが、特別として覚えているわけじゃない。
トラファルガーの越して来た時の事が忘れられないから、序でとして覚えているだけだ。

なんで、その女と別れたのか…。
理由は、…嫌いになった訳ではなかった。むしろ、性格は捌けた方で気が強く、姉貴肌の気があって俺は好いていた。俺も素直に甘えてたし…ただ、そう。
あまり一緒には居なかった。
別れを告げたあの夜は、丁度お互いの虫の居所も悪く彼女が取り繕おうとしてくれたのも、俺は女特有の甘えだとか調子が良いとか、そう捉えちまったからキツい態度で追い返したんだ。


忙しさに苛立って、彼女のくれる気遣いのメールが素直に受け止められず、電話に出るのが億劫になり、やっと出来た休日を奪われるんじゃないかって思って存在が疎ましくなった。


トラファルガーは、慣れない事に苛立ってはいないだろうか。
下手に何か言って重荷に感じないだろうか。

充電器のホルダーから携帯を抜いて画面を開く。3時を過ぎていた。
トラファルガーの部屋から物音はもうしない。多分、寝たのだろう。
取ったばかりの携帯を再び元に戻す。

理不尽にも、あいつがいけないのだと思いながら壁に背を向けて無理矢理目を閉じた。







設定とか
(いつも隣りに) 2012/03/16

いつも隣りにのちょっとした小話
今後のネタばれ(笑)を含みますがいつ書くかもわからないので。

続き…




栄養不足編-3
(いつも隣りに) 2012/03/03


「お弁当ですかぁー?」



午前の仕事が終わり昼休憩になる。
事務所の一角にある商談、来客用のソファに腰を下ろして一息ついた。
来客用とは名ばかりで、大体はこうして従業員が好き勝手に使っている。

「あ、一緒していいです?」
「おう、構わねぇよ」

パーテーションの向こうから顔を出した同僚に頷くと、俺の向かい側に腰を下ろした。
ウチの仕事場きっての不思議系女子と言われるこの同僚。
確かに言動や様々な事に対して不思議なのだが、見た目や普段喋りのふわふわした印象に反し仕事はきっちりこなすので頼もしくはある。

「ユースタスさん今日お弁当ですかぁ?珍しいと言うか久し振りな感じ」
「ちょっと…余らせちまったからな。勿体ねぇだろ」
「前は良く持って来てましたよねー。最近はあんまりなかったけど」
「余る事がなくなったからな」
「もしや恋人さんです?」
「ノーコメントだ。そっちこそ、毎日牛丼喰ってっけどいい加減飽きねぇか?」
「毎日違うところの牛丼なんで全然です。昨日はコンビニLで、今日のは本場吉牛ですよ」

パキ、と割り箸を割ってさっそくと食べ始める。
なんとなく溜め息を吐きながら弁当替わりのタッパーを開けた。
昨夜の残りを詰めて来たこれは、つい、いつもの癖で作ったトラファルガーの分だ。

「うお!美味しそうっユースタスさんの女子力っ」
「女子力ってんだよ…俺が女子力なら、そっちはしみったれ過ぎだろ」
「ユースタスさん、私の紅生姜とお肉をちょっとだけあげるので全部をちょっとずつください」
「明らかに釣り合ってねぇ量じゃねぇか」
「じゃあ紅生姜を半分あげます」
「バカッんな要らねぇよっつーかなんだこの紅生姜の量は」

捨てるのも勿体ないから弁当にして持ってきたが、昨夜も全く同じものを食べたし正直あまり食べる気はしなかったから丁度いい。
少しだけ交換した牛丼の味。
遠慮なく箸をつける同僚に苦笑が零れた。

「晩飯、牛丼でも食いに行くかな」
「いいとこ教えましょう?お高いですけど贅沢するには持って来いです」
「高々牛丼に…」
「されど牛丼です!」

飯を作るのが面倒だなんて、久々に思った。









栄養不足編-2
(いつも隣りに) 2012/03/02


「いやぁ、仕事覚えるの早いし助かるよ!」
「はぁ…どうも」



深夜のバイトを始めて1週間が過ぎた。
朝っぱらからの講義を受けるため明後日のバイトは休みを貰ったが、深夜の数時間のバイトも7日出ずっぱりだと流石に疲れてくる。
大学は勿論、元からのバイトも忙しい時期ではないので日数と時間は少し減らしたが続けている。
深夜まで起きている事自体は良くあることだから苦ではないが、流石に動いているからか疲れは溜まって行く一方だ。
今日なんて講義を受けてからバイトへ行きその足でこのバイトへ来たのだ。2日目も同じ事をしたがあの時はまだ余裕だった。

「トラファルガーくん、これ頼むね」
「はい」

皿を洗ったり、酒や料理を運んだり…当初はその仕事だったが、何故か今日に至るまでにウーロンハイなど簡単に酒を割っただけの物を作らされるようになり、案内やオーダーまでとらされていた。
初日から伝票運びくらいはしてたが、この間、ちょっと喧しそうな客に呼び止められその時にやむを得ずオーダーを取ったのがいけなかったらしい。

「接客出来るんじゃん!悪いけどこれからオーダーも取ってきてくれないか。分からないことあったら他のスタッフ呼んでいいから」

…付け上がりやがって。
日増しに仕事がランクアップしていく。
バイトだと言えど仕事は覚えるのが当たり前だが、話が違う。
ホールに出て歩き回るのがこんなに体力使うとは思わなかったし、こんなことなら昼間のバイトは一時的に休むし、もっと短い間隔で休みも取ったのに。

「悪いなトラファルガーッ」
「…殺す」
「悪かったって!俺も休みないんだからお互い様だろーっ」

この店で働きだして1年だという、例の友人に矛先を向ながら溜まったグラスを洗う。
ユースタス屋と付き合うようになって皿洗いはお手のもんになった。
…ユースタス屋。
そう言えば、この1週間は朝飯を食うくらいしか顔を合わせてねぇ。
ユースタス屋が先に仕事行くとその日は顔を合わさねぇし、俺が時間ギリギリだとろくな会話もない。

「……一番、堪えんな」

はぁ、と溜め息を付くと同時に呼ばれる声がする。
短い返事を返しながら、賄いじゃなくてユースタス屋の作った飯が食いたいと思った。








栄養不足編-1
(いつも隣りに) 2012/03/01

『そうそう、トラファルガーさぁバイトしないか?』




大学で、学内を一緒にうろつく程度には中の良くなったいわゆる友人の中の1人にバイトの話を持ち掛けられた。

「21時から25時まで?」
「新しく出来た姉妹店に加勢で従業員出したら人出が足りねぇってんで、2週間から1ヶ月くらいのバイトを雇いたいらしくてな」

バー、と言ってはなんだか聞こえはいいが、その友人が言うにちょっとお洒落な居酒屋だ。
仕事内容は酒や料理を運んだりグラスや皿洗いらしい。
臨時バイトに求めるのは最低限の事だが、その最低限の仕事が減れば古参スタッフでなんとか店は回ると言う事だ。
時給は1350円。仕事内容からすれば大分良い値だが、これは臨時代金含んだ店長泣かせな値段らしい。
人出不足は深刻なようだ。

「まぁ姉妹店とも売上が上がる事を期待しないとな」と友人はやつれた顔で笑っていた。

「大丈夫なのか?」
「テスト期間とも被らねぇし、今やってるバイトと折り合いつけば、やらねェ手もねぇと思ってさ」

別に、今はバイトをしなくても生活費やらその他は親に甘えてしまえば十分なのだが、それだとユースタス屋がデートや、例えばプレゼント等をする時に良い顔をして受け取ってくれない。
考えずとも尤もだと思った俺は取り敢えず社会勉強も兼ねて今バイトをしている。
無理せずに休みや持て余した時間(ユースタス屋が仕事の日や時間)を選びバイトを入れているだけなので、今も金が欲しくてわざわざ深夜の臨時バイトを考えているわけではない。
ただなんとなく、誘われたのと気紛れだ。
それに時給がいいのも確かだし、短期間ちょっと頑張れば…ユースタス屋とちょっとした贅沢が出来る。

「まぁ、働くのはお前だからな…俺がなに言うこともねぇけど。俺の言いてぇ事はわかんだろ?」
「ああ。学校も、今のバイトもおろそかにはしねぇよ」
「…なら、頑張れ」

そう言って苦笑混りに笑ったユースタス屋に軽く頷いて見せた。

覚悟が少し足りなかったと、後悔することになるんだがな。




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