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ジャンル入り混じります。ご了承ください。
趣味のクロスオーバーもあるかも
・完結見込みのない話も置いてあります。


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The last final 19
(ロキド) 2013/04/22

波の音も聞こえない夜の静寂。
耳を澄ませばいろいろな音は聞こえてくるが、この世界では何に備えようもなく気配を探ることも耳を欹てることもやめた。
気の抜けきった知覚に無音が煩く思える。その中に緩やかな寝息が微かに混じって聞こえるのを、唯一の音として認めていた。

気を張ることに慣れていない躰は連日の寝不足も相まって短時間の間でも深く眠りに落ちるようになったようだ。
頑なに浅い眠りを繰り返しおれを気にしていた男は今は疲れに負け眠りの底に落ちている。深い底に落ちる前に寝返りをしたのか、いつものように壁の方ではなく此方を向いて寝ていた。
そのうち、浅いところに戻って来ては慌てて壁の方へ向き直るのだろう。
整髪料のついていない髪が目元や頬にかかっている。線が細い優男なわけでもないのに、見知った男と比べると儚さを覚えた。
この世界で死んだトラファルガー・ローを思い続けているからだろう。後を追うこともできず、ただただ生きて、自分にもいつか訪れるだろう死を早く早くと待っているのだ。
無意識に伸びた手を寸でで寝乱れた髪のひと房に触れるだけに留めた。
手負いの獣も、拾われたのも己の方だと言うのに、この男と居るとまるで迷い猫を保護したような気分だ。






The last final 〜寝物語〜
(ロキド) 2013/04/13

「どうした、眠れないか?」

日付を超す間近になり、キッドはトラファルガーに促されるままベッドの壁際に寝そべった。
最近では慣れたと言うよりも諦めてこの現状を受け入れていたキッドだったが、今晩はどうにも素直に目を閉じる気になれずにいた。
普段はすぐに壁の方を向いてしまうのに仰向けのままそう高くもない天井を見る。
そんなキッドにトラファルガーはベッドに腰掛けた格好で問いかけた。
そうだとも違うとも言葉返ってこなかったが、様子を見れば眠れそうにないことは明らかだった。
これまで頑として背を向け、眠れずとも硬く目を瞑って長い夜をやり過ごしていた男が珍しいと、トラファルガーは思う。

「つい今まで夏の日差しが差していたと思えば行き成り雪がちらつく」
「…は?」
「そんな海を航海していた」

突然喋り出す男の背に、キッドの疑問符が飛んだ。

「航海には、先を示す指針…記録指針、永久指針が不可欠でそれを頼りに航路を決めて島から島へと渡って行くんだ。その道中にどんな厄介事があろうとな」
「厄介事…?」
「天候もだが、他の海賊船や海軍との抗争、海王類…島に上陸しても海軍や賞金稼ぎに追われもする」
「船って、やっぱりでかいのか?」
「そうだな。ただ、おれの船は潜水艦だ」
「…へぇ…」
「想像がつかねぇか?ふふ…まぁ、口でも説明は難しいけどな」

トラファルガーは思い返す様に目を閉じ、今日になるまで元の世界に帰るすべを見つけていられないことへの焦りを募らせる。
船長が居ない、指示も残していない己の海賊団がどうしているのかが気がかりでならなかった。

「……お前さ…」
「うん?」
「海、恋しい…とか?」

キッドの声に少しだけ背を振り返ると、しおらしくした顔が見えた。
どこか声も頼りなさげで、そんなキッドを見たトラファルガーは一度呆けて、そのあと肩をすくませてクツクツと笑う。

「クッ…フフフ…!」
「なっ!人が真面目にッ」
「わかってる、悪い悪い…クックックッ…ああ、そうだな…海が恋しい。ここじゃ潮の匂いも届かねぇし海と空の混じる地平線なんかも見えやしねぇからな」

トラファルガーが再び背を向ければ、皺を眉間に寄せるキッドの不満顔は見られることはなく。また、今も喉の奥で笑っているトラファルガーの表情も見られることもなかった。

「海……!」
「どうした?」
「あ…いや、…海、行ってみっか?」
「…海があるのか?」
「近くはねェけど…。電車乗って行けば1時間ちょい?」
「いつ行ける?」
「え、あ…次の休み…とか」
「そうか」

今度は身体ごとキッドへ向き直ったトラファルガーが口元に笑みを見せる。
キッドがさっき言いかけて止めた言葉は、トラファルガーの中にもあったようだ。
『海に行けばなにかあるかもしれない』
それを胸に、今トラファルガーは期待感を膨らませていた。

「…そんな、海が好きかよ」

キッドはぽそりと言葉を零した。そして言ってしまってから迂闊さに後悔する。
トラファルガーの視線から逃げるように目を逸らした。

「どうだったか…忘れたな。ただ、海には嫌われてる」
「…?」
「おれはカナヅチなんだ。海に入ると体の力が抜けて、全身が浸ると抗うことも出来ずに沈んでいく」
「…泳げねぇのか?海賊なのに」
「偏見だな。まあ…海に出る以上は泳げた方が身のためだが。おれは泳ぎ方を知っていても、泳げずに沈んでくのさ…海に嫌われっちまったからな」
「意味、わかんねぇんだけど…」
「瞬きせずによく見ておけ」
「は?…おわ!?ッ!?」

キッドの揺れた視界に、さっきまで自分が頭を乗せていたクッションが映る。
一瞬の間に頭の下から抜けたクッションの嵩が減り、キッドの頭が直接シーツへと落ちた。一瞬で消えたように思ったクッションは今はトラファルガーの手に乗っていた。

「手品…!?」
「能力、と言ってもらおうか。これが…これだけじゃないが、海に嫌われてカナヅチになる代わりに手に入れた能力だ」
「い、意味わかんねェ……!」
「お前の手足をバラすこともできるぞ?して見せようか」
「!?」
「なに…死ぬことはねェさ、多分な。ただ世界が違うって言うのがどう作用するか分かったもんじゃねえからなァ…近い場所の物の移動はできるようだが」
「お、おまっ」
「冗談だ。お前に死なれたら困るんでな…確証のない実験台にはしない」

キッドの反応に面白そうに笑いながら枕を返しトラファルガーはさっさと電気を落とす。
返された枕を不審そうに見て触れていたが、いきなり電気が消えると少しだけ驚いた後にもそもそと寝る体勢を整えた。

「…眠れないか?」
「寝れるわけねェだろッ」

トラファルガーに言わせれば『能力』、そんな変な能力を見せられた後にころりと眠れるはずもなく、語気を荒げるキッドに対して笑いを含ませた声がする。
文句の為、思わず壁に背を向けた躰に長い腕が乗った。

「あッ…」
「おやすみ」

鼻先に男の温もりを感じる。
向かい合った躰が眠りを迎えるのはまだまだ遠そうであった。



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閑話






The last final 18
(ロキド) 2013/04/06

躰を重ねたのはあれっきりだった。それでよかった…むしろもうそう言う行為を重ねたくなくておれは敬遠していた。
彼相手におれがいくら間合いを取って身を固くしようと、きっとその気にならずともやすやすと手を出すことは簡単だろうけど。
『借りはその都度返した方がいいだろ?』
そう言って口を重ねた男はその夜、不敵に笑って言った。
『"ロー"が恋しいならいつでも躰を貸してやるぜ?』
傷からの熱で火照った躰で迫ってくる彼を押しのけて『そういうつもりはない』と剣幕を立てるおれを見ても瑣末にも捉えず、顔を寄せてきた。
パシン、と乾いた高い音が掌から鳴る。彼の頬を這った手がじんと痺れ自分の起こした衝動に気が付いた。
『あ…』咄嗟に、やり返されると危惧しながらも、しかし謝るのもおかしい気がして言葉が続かなかった。そんなおれに彼は鼻を鳴らすとゆっくりと身を引いていった。
『うわっ!?』近かった躰が遠ざかって行き、気まずくとも少しほっとしたのも束の間、すぐに腕を引かれてベッドへと突き飛ばされる。
躰を貸すなんて言いながら強硬手段に出ようとでも言うのか。彼の行動に慌てて抵抗すると熱く、重い躰がのしかかった。
『もっとそっちに行け』
『なにっ』
『おれが寝れないだろ』
ベッドに乗り上げた脚でおれを端へ押しやって隣りに入り込んでくる。
セミダブルに大人、それも体格のいい男が2人はとてもじゃないが狭い。
『お前1人で…っ』
『お前はどこで寝る?』
『おれ…は、いいから!退けって、手ェ離せよ!』
『良くねぇな。風邪を引かれちゃいい気がしねェんでね。どうせほかに布団もないんだろ?それともおれを床に寝かすか?』
『〜〜…!』
『多少の寝返りは気にしねぇさ。とっとと横になれよ…おれも流石に疲れてるんでな、早くしてくれ』
『…電気』
『おれが消す』
腰かけていた腰を浮かせてトラファルガーが電気を消す。その間に壁の方を向いて横になる。
電気が落とされて闇に包まれた部屋に絹擦れの音だけが目立った。
ギシっと音を立ててベッドが沈む。トラファルガーが隣に身を横たえたのが気配で分かった。しかも、おれの方を向いている。
『……、おい』
『仕方ないだろ。仰向けかそっち向くしか出来ねぇんだ』
なら素直に仰向けで寝ればいいのにと、悪態をつきたくなった。傷のある肩を下にしては眠れないだろう、かといっておれとトラファルガーの場所を入れ替わると、仰向けになったりおれが寝返りを打ったりすれば傷に触ってしまう可能性もあった。
身じろぎするのも憚られる窮屈さに眠れそうもない。なによりトラファルガーの体温が背中に伝わってくるような気がして、吐息が側で聞こえて落ち着かない。
ただじっと壁を見ながら身を固くしていると、小さく、吐息で笑う音が聞こえた。
『眠れ』
ベッドが少し揺れる。トラファルガーが仰向けになったのだろう。
『部屋の中で起きて動き回られる気配があるとおれが落ち着かねぇ…、いっそこうしてる方がマシなんでな。大人しく…寝てくれ』
闇になれた目がぼんやりと部屋の輪郭を映す様になる。そっと躰を起こして隣りの男をみると目を閉じて緩やかに胸を上下させていた。




あの夜、ベッドを揺らさないようにゆっくり躰を戻して、冴えて眠れそうにない目を無理に閉じた。
男の微かな呼吸音を聞きながら、ローと同じように狭いベッドで寝ていたことを思い出していた。
足を絡め、身体を触れ合わせて眠った夜はもう2度と―――

「寝るぞ」
時計を見た男が読みかけの本をパタリと閉じた。おれを気遣っているのだろう、夜は日付の変わる前にベッドへ促す。
数日経った今も同じベッドで寝ていた。布団を買ってしまおうかと思ったがトラファルガーが要らないと言ったのだ。「おれが元の世界に帰ればもて余すことになる」と言いくるめられた。
その時は、そうだな…と思ったがこう寝る前になるとやっぱり買った方が良かったんじゃないかと思う。
いつまでこの男がいるのかわからない今、せっかく布団を揃えた日にふつりと居なくなる可能性も、このまま一月…もしくはそれ以上いる可能性もあり悩まされるままだ。
「寝れねぇことはないんだ。余計なものが増えなくていいと喜べばいいだろ?」
まだぐずってんのか、と男が笑う。
「おれは文句ねェと言っている」
「おれはあんだよ」
「拾いモンをしたのはお前だろ」
「……」
「フフ…」
腕を引かれベッドへ押し込まれる。電気を消した男はもう傷を庇うような仕種は見せず躰全体でベッドの端へ追いやられた。
「たまにはこっちを向いて寝ろよ。躰が凝るぜ?」
「…」
「…ハァ」
「なっ!?」
「腕のやり場がねェんだ、貸してくれ」
傷のある向こう側の腕がおれの躰に乗せられる。トラファルガーに背中から抱きしめられるような形になり、背中にトラファルガーの胸元が触れた。
「折角拾ったんだ…手の中にある内は好きに使えばいい。言っただろう…おれはローじゃないが、いつでも貸してやる」
囁かれる甘い言葉が耳を擽る。背中に伝わる熱が恋しがる気持ちを呼び覚まそうとする。
「おやすみユースタス屋」
目を開けているのか、閉じているのかわからなくなるような闇に声が融ける。
違う男だと分かっているのに。
この男はおれを少しも想っていないのに。








The last final 17
(ロキド) 2013/04/04

数日間を共にして、あんなに似ていると思った筈の彼を「そうでもないんだ」と思いはじめた。
あの日、彼を拾った日。似ているんではなく、おれは本当に『あいつ』だと思った。帰ってくるはずは無いのに、再び会うことなんて出来るはずないのに容姿がまったく同じ彼を見て浅はかに期待をした。

「おい」
「っ、んだよ…」
彼とあいつが似ていないと思うことの1つとして、いまだ慣れないこの距離だった。
おれ自身、身長があるので友人知人で目線の合う奴も少ない。自分が視線を下げることがあっても見上げることなんて滅多になかった、のに。
「この本は読んでもいいのか」
「ああ…勝手にどれでも読めよ。その辺のはローのだし…」
別の世界から来たらしいこのトラファルガーは、俺よりも幾分か背が高かった。
おれの知るローはおれよりも10cmくらいは低かったのに、同じ声がほぼ真横からそして振り向けば真っ先にかち合う目線がとても奇妙に思えた。
「…?なぜ視線をそらす」
「別に…、っちょ…や!」
「フフ。コーヒーを淹れてくれ…今のは礼の先渡しだ」
強引な手に顎を掬われて唇が重なり合う。硬く引き結んだおれの口をやんわりと食んで離れていった彼は唇をニヒルな笑みを乗せていた。

彼との生活は付かず寄りつかずだった。トラファルガーは基本的に無駄に動きもしなければ喋らなかった。この世界のことを度々、二言三言尋ねるほどで。
おれも最低限距離を置いて聞かれれば答えるに徹する。居心地がいい物ではないが、声に、雰囲気に、そこに居る気配に少しだけ安心していた。
ローが死んでから、ローのことを忘れるのが嫌であいつが読んでいた医学の本や辞書を本棚に並べていた。勉強に使っていたノートも数冊…本やノートから飛び出る付箋や、あの頃読んでいたハードカバーの小説に挟まれた栞が日々挟まる頁を進ませていくのを見るのが楽しみだった。
それらを今、彼が手に取り眺めている。組んだ足に本を支える手を預けて視線を上下させる。時折淹れてやったコーヒーをすすり、また頁を捲るそんな仕草の1つ1つ。
ローと重なっても、どこか違った。


このトラファルガー・ローはおれを好きではないのだ





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