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・完結見込みのない話も置いてあります。


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The last final 16
(ロキド) 2013/03/28

ぐるりと肩を回すと、それを見ていた男は物を言いたげに顔をしかめた。可笑しい奴だ…自分の躰のことではないのに何故そうも心配できるのか。
縫合して4日経った傷は動かせば突っ張るがこの程度動かしたところで開くことはないだろう。"治った"と言うことにしてここしばらく傷を覆っていた包帯やガーゼを取り払った。
固定してた煩わしいそれらから解放され、再び肩を回せば凝り固まった筋肉が解れるような気さえした。
「そんな顔をするな。もう傷は塞がったって言ってるだろう」
「あんなに深い傷がか?」
「柔な躰には出来てねェんでな。下手に縫っても治りは早いさ」
「…」
「冗談だ」
男は余程、自分の施した縫合を気にしているようだが見目はどうであれ傷は付いたのだ。それ以上に望むのもがなければ傷が残って惜しい躰でもない。現に消えない傷は至る所にあるのだ。
「仕事に遅れるんじゃないのか?」
「ああ…」



あの男に世話になるとなってからこの世界のことを聞いた。元の世界よりよっぽど平和で、秩序に塗れている。自由に海賊をやっていた己としては退屈で、不自由に感じた。
けれど、自由の為にもルールや縦社会に居たおれは柵(しがらみ)の中に居るのと変わらなかったか。
この世界に来て1週間近くなる。はじめの2、3日はともかく、この数日は男の部屋に篭もりっぱなしだった。傷による熱はすっかり引いたが満足に動かない腕に、武器が持ち歩けないとなれば大人しくしているに限る。
男はここに1人で暮らしている様だがそのためにも稼がなきゃならないのは当然で、おれがここに身を置くことにした翌日もおれを気にしながら仕事へと向かった。故に日中は1人で過ごすことになる。
ここを出て行く、そんな気は今はない。テーブルに置かれた銀色の鍵はこの部屋の鍵だと言って男は置いて行った。探索に歩くなら…と言うことだろう。
それでおれがここに帰ってこなかったとして、あの男はどう思うのだろうか。…考えて、止めた。
数日で見慣れた男の表情はいつだっておれに似た男を焦がれ、おれの中のそいつを見ている。期待を滲ませる。そして失望して悲しげに目を伏せる。
おれがいることで苦しむくせに、おれがいることを喜んでいる男を見るのが心地よく思えた。






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