操仁
寒い、痛い。
どうしても冬になると身体の節々が痛みを伴う。
戦場で受けた傷は特に痛む。
自分は盾と矛で敵をのしてきた。
曹操の為に奮闘した結果、身体にはいくつかの傷を受けた。
戦場で受けた傷は誇り。
勝利の為に受けた傷、恥もない。
周りからは影であらぬ事を言われる。
曹仁は気にもとめない。
全ては曹操の為に受けた傷なら甘んじて受けよう。
曹操は傷だらけになった自分を嫌う事はなく、受け入れてくれた。
優しい声で話、自分を励ましてくれた。
抱きしめてくれた曹操に更なる恩義を感じた。
ああ、自分はこの方の為なら命など惜しくない。
この方の為にこの身を捧げようと更に思うようになった。
「子孝よ、また傷が増えた…」
「殿…」
「痛むのか?」
「いえ…」
「あまり無理をするな…、儂は子孝を失いたくない…」
「はい、善処します…」
「約束してくれ、無理はしないと…」
「はい…」
貴方を欺くようで心苦しいが守れる為に受けた傷は受けると誓った。
貴方が望む事なら従いたいものだが。
上手くいくかわからない。
「子孝…、生きてくれてありがとう」
「…殿?」
曹操は曹仁を抱きしめた。
「お主を抱きしめていると生きていると感じる…」
「そうですか…」
「だから無理はするな…」
「はい…」
寒い、寒い。
痛い、痛い。
でも、帰る場所があるなら生きて帰ろう。
愛しい貴方の為に。
「愛してます。孟徳…」
曹仁は曹操に思い伝えたのであった。
終
操仁
夜空に流れる天の川(操仁編)
「今日は七夕か…」
曹操は七夕飾りを目にして呟いた。
古くからの伝統を現在に伝えるのか笹の枝に沢山の飾りと短冊を見ると思わず笑みが零れる。
幼い頃は信じてやまなかったが大人になるとそれさえも忘れてしまう。
曹操は願う事もしない、欲しいものは自分の手で得ていた。
だから七夕伝説も偽りであろうと思っていた。
彼と一緒にいる時が増えてからその伝説を信じてみたくなった。
本当に自分らしくもない。
「殿…こんな所においででしたか」
「子孝…待ってたぞ」
「本当に綺麗な星空ですな。ずっと輝きを失わない美しさに私は惹かれてしまいます…」
「子孝は七夕の伝説を信じているか?」
「ええ…大人になってもこの伝説は信じてみたくなります。一途な恋を稔らせた二人が一年に一度だけ会う事を許された日。私と殿が離れ離れになったとしても私は貴方の元に出向きます…」
「会う事が出来ないかもしれぬのにか?」
「私は貴方を愛してます。愛しい人を命を掛けて守ると誓った。愛しぬくと願ったから…」
「子孝…嬉しい事を言うな」
「殿はもし願いが叶うとしたら何を願いますか?」
「そうじゃな…儂は子孝が側におればいい。子孝を離したくはない」
「そうですか、良かった。私と殿の願いが同じで。嬉しいですぞ…」
「いつまでも儂の側でいてくれ子孝…」
「ええ、殿の願いは私の願いでもあります。ずっと貴方の側におります…」
曹仁は曹操に抱き着いた。
この温もりを失いたくはない。
この満天の星空に誓う。
ずっと一緒に生きていく事を。
「…孟徳、愛してますぞ」
「儂も子孝を愛しておるぞ…」
二人はゆっくりと唇を重ねていく。
愛しくて大切な人といる幸せを感じたのであった。
終
お題配布元:ALLODOLA
http://id17.fm-p.jp/313/allodola1000/
操仁
夢を描くのは人に生まれたから。
自分も人であったら良かったのに。
羨ましかった貴方が。
どうした自分は無様なんだろう?
貴方の傍に居られたらどんなに良かったのに。
苦しみ悲しみ痛み全てを分かち合えたら良かったのに。
それさえも出来ない。
だから別れが来る時、貴方は私を想い涙を流すでしょう。
そんな姿を見たくはない。
ただ貴方の為だけに。
自分は貴方に誇れる武将として生きなくてはいけない。
「子孝…」
「どうしました、殿?」
「お前はどんな事があろうとも儂は子孝だけを愛しておる」
「殿…」
嬉しかった。
その一言があれば悔いは無い。
「私はいつまでも貴方の傍に…」
この世界が終わりの時が来ても私は最後まで貴方の傍に。
「子孝、愛している」
「孟徳、私も愛してます」
私は貴方の為ならこの命差し出しても構わない。
曹仁は曹操に優しく微笑んだのであった。
終
操仁
(学園パロ)
私立無双学園の理事長である曹操は悩んでいた。
教員の一人である曹仁とあまり会う機会がない日々を過ごしていた。
優秀な教員であるとともに役員会のメンバーなのだが、曹仁は曹操に対して恋人として接してはいない。
曹操は理事長としてみているが為に態度は冷たくみえる。
従兄弟だが、好きなのは変わらない。
昔からアピールしてやっと恋人として結ばれたのだが、曹仁の態度は相変わらず変わらない。
理事長としての仕事を放りなげてしまえは秘書官である司馬懿は黙ってはいない。
「たまには子孝と一緒にいたいのお〜」
思わず溜息が漏れる。
同じ従兄弟の夏侯惇や夏侯淵に愚痴った所で悩みは解決なんてしない。
見ているだけで羨む馬鹿ップルな二人に言うだけ無駄だと言う事だ。
「何とか子孝と一緒にいる方法はないか…」
曹操は思考を働かせる。
「そうじゃ…思いついたぞ。これなら子孝と一緒にいられる!」
曹操は思いつくと呼び出す為に机に置いてあった電話から受話器を取ると内線で曹仁に連絡を取った。
内線を受けとった曹仁に連絡をすると曹仁は断る事はなく理事長室へ行くと返事を返し内線を切った。
それから暫くすると曹仁が曹操の元に訪れた。
「理事長、何用か?」
理事長室に入った曹仁は曹操に声を掛けた。
「相変わらず、他人のような態度は止めよ。今は二人っきりなんだぞ…」
曹操の言葉に曹仁は溜息をついた。
仕方ないと恋人同士として話す事にした。
「で、何の用だ。孟徳…俺は忙しいのだぞ」
「忙しいのはわかるが、最近は子孝に会えなくて寂しかったんじゃ」
曹操の呆れた言葉に曹仁はまた溜息をついた。
「そんなに寂しかったのか孟徳…」
「ああ、そうじゃ…」
曹操は曹仁の側に近寄ると抱きしめた。
「子孝は冷たい。せっかく恋人同士になったのにいつまでもつれない態度でおる…なのに関羽や妙才や元譲には優しくせっしておる」
「何だ、ヤキモチを妬いているのか?」
「悪いか。儂もお主に甘えたいし、甘えられたいのだよ…」
「それは切実な願いか孟徳?」
「ああ、切実じゃ。儂は子孝と一緒にいる時間を大切にしたい」
「だが、学園内でイチャつくのは駄目だ」
「何故だ?」
「孟徳の仕事が滞るからだ。そうなれば司馬懿の雷が落ちるぞ…」
「うっ、それは嫌だ…」
「だから仕事中は上司と部下という関係を保ちたいのだ…」
「子孝、儂の為にそこまで考えていたとは…儂は嬉しいぞ」
(本当は自分の仕事が滞るのが嫌なだけなのだが、笑顔で言われたら本当な事は言えないな…)
「まあ、今回だけはイチャついてもいいぞ。時間が許す程度だからな…」
「本当か子孝…!」
「まあ、司馬懿に見つからなければ良いが」
「邪魔したら追い出せばよい」
「おやおや、強気な発言が出たな…」
「とりあえず、寂しかった分の埋め合わせをしてもらうぞ子孝…」
曹操は曹仁をソファーに押し倒した。
「こら、孟徳、昼間っから盛るな…俺は授業とかあるんだぞ」
「知っている。そんなものは後回しだ…」
「馬鹿言うな、冗談ではないぞ!」
曹仁は曹操の頭を殴った。
「痛いぞ、子孝!」
「だから、こんな所で盛るなと言っている。やりたいのであれば今日の仕事が終わったらでいい…」
「嘘ではないのだな?」
「ああ…とりあえず、不埒な事を学園内ではしないでくれ。俺もお前もよからぬ噂が立って立場を失うのはやばいぞ」
「それはそうじゃな…だがこうして抱き合うぐらいならよいじゃろ?」
「全く勝手にしろ…時間になったら俺は戻るからな…」
「ああ…」
曹操は短い時間でも曹仁の温もりを感じる事が出来て幸せであったとさ。
終
操仁
(マフィアパロ)
曹仁は葉巻を好んで吸う。
匂いが良いと気に入っているようだ。
曹操はそんな従兄弟に高級な葉巻を贈った事があったが曹仁は勿体なくて使えないときっぱりと断るが曹操は持っておれと強引に渡した。
曹操は曹仁を一番大切な人として側においている。
愛しい者に贈り物を贈る事が曹操にとって儀式なようなものであった。
曹仁は仁義ある男。
薬を扱うが取り引きの道具として扱い自ら薬をその身体に取り入れる事はない。
曹操の右腕として生きていながらも曹操の恋人として生きている。
だが肝心の曹仁は興味がないように装う。
仲間であろうと敵であろうと容赦のない彼には冷たい態度は当たり前だと周囲は捉えていた。
だが曹操と二人っきりの時は甘える姿は想像は出来ないであろう。
「孟徳、また無駄なシャブ(覚醒剤)が出回っているが?」
「いや、儂等が扱うものではないぞ。多分下っ端が質の低いシャブを売っているんだろう」
「そうか、なら回収はするのか?」
「放っておけ。どんな事があろうと儂等には害は及ばぬ」
「あい、わかった…だが何かあればシャブを売り付けた奴は消すがよいな?」
「ああ、子孝に任せよう…」
会話が終わるなり曹仁は懐から葉巻を取り出すとジッポーで火を点けて煙りを吸い、匂いを堪能する。
「子孝…その葉巻、使ってくれておるのか?」
「孟徳が折角くれたものだから使わないとな」
「使ってくれて嬉しいぞ…」
「孟徳が強引に渡すからだろう。嫌だったら仲間にあげていたが」
「素直に嬉しいと言えばよいものを…」
「そんな恥ずかし事言えん」
曹操の言葉に曹仁は顔を真っ赤に染めた。
素直に為れない曹仁の姿に曹操はにこやかに微笑む。
いつもはツンケンとしているのにデレてくる曹仁に曹操は慣れていた。
「一応は礼を言っておこう…」
「相変わらずつれないのお」
「そのつれないのが好きなのにな」
曹操は曹仁の側に近寄る。
「子孝は儂の事が嫌いか?」
「何で?」
「態度が冷たいぞ」
「甘えて欲しいのか?」
「ああ、そうしたら儂は嬉しいぞ…」
「そうか…善処しよう」
「そうしてくれ」
相変わらずの態度な曹仁だが善処すると呟く彼に曹操は淡い期待を持ち、曹操も新しい葉巻に火を点け吸ったのであった。
終
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