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惇淵

※現代パロ

ずっと側にいてくれるのは嬉しい。
俺の隣りには必ずしも惇兄がいてくれる。
いつも思うのは女がやたらと惇兄に声を掛けてくる。 
誰よりも格好いいからだろうなあ。
だから一緒に歩いていても惇兄に視線が集まるのはわかる。
スタイルいいし、顔も整っているから女も男の俺でさえ見惚れてしまう。
惇兄はその事を知っているのか知らないのか解らないがいつも出掛ける時は俺と一緒に出掛ける。
だからなのか女達からの視線が痛かった。
肩身が狭い思いをしながらいるのもいつもの事だ。
夏侯淵は口には出せずに目的の場所まで夏侯惇と一緒に歩いた。
目的はデパートで新しく服を購入するんだけど自分の服ぐらい自分で選びたい自由に動けると思っていたがやはり惇兄は服まで似合いそうな物を片っ端から集めては試着させる。

「惇兄…、あのさ服ぐらいは自分で選ぶからさ惇兄は自分の服を選んできたらどうなんだ?」
「俺の事など気にするな、淵が似合う服を俺が探してはいけないか?」
「そんな事はないけど、たまには俺にも好きな服を選びたい」
「そうかわかった。淵よ、俺は喫煙所にいるから」
「う、うん…」

夏侯惇はあっさりと夏侯淵の言葉に従いその場を立ち去った。

(やけにあっさりと引いてくれたなあ。早く決めて行かないと惇兄に悪いな)

夏侯淵はそう思いながら服を選んでいった。
自分の好みの服を選びながらラックから服を取り値段を見つつ試着出来るものを買い物籠に入れていく。
自分は見た目よりも太ましい。
着痩せするタイプだから着る服も大きい物になる。
サイズで悩む事が屡々とある。
減量しないといけないとなあと思ってはいるが理想と現実はそれを上手く事を進めない。
夏侯淵は試着を終えると何着かはラックに戻し欲しい服を数着籠に残してはレジに向かい会計を終えた。

「だいぶ待たせてしまったから早く惇兄の所に戻らないとなあ…」

買い物を終えた夏侯淵は足早に夏侯惇の元へと歩みを進めた。
喫煙所に近づくと夏侯惇を見つけたが夏侯惇は数人の女性に囲まれていた。
黄色い声で夏侯惇を逆ナンパしている女性は自分をアピールして一緒に遊びたいと誘っている。
夏侯惇は眉間にシワが寄り不機嫌であった。
女性を無碍に扱わない夏侯惇は逆ナンパしていた女性達の誘いを断っていた。
そんな姿を見ていたら、やっぱり夏侯惇は格好いいんだと思う。
スタイルも顔も良い女性達にとっては素敵な異性だろう。
見逃す訳もない。
夏侯淵は壁に寄りかかり溜め息をついた。
あの輪に入り声を掛ける勇気ないなあ。
邪魔したら女性達の視線が痛い。
でもこのままじゃらちがあかない。
そろそろ助けないとマズいだろう。
夏侯淵は夏侯惇の元へと向かった。

「惇兄…待たせたな」

夏侯淵が夏侯惇に声を掛けると夏侯惇は安心したかのように表情はやわらかくなり夏侯惇は夏侯淵に笑顔を浮かべ話かけた。

「すまんが連れが戻ってきたから今の誘いは断る。別の男でも誘えばいい…」

夏侯惇は女性達に冷たく言い放ち夏侯淵の腕を掴むと足早に立ち去る。
女性達は夏侯惇を引き留めようとするが無視を決めたかのようにどんどんと距離を離していく。
女性達からは夏侯淵を貶す声も挙がっていたが夏侯淵にはその言葉を耳には届いた。
文句を言う暇等はなく、夏侯惇に連れられて歩くしかない。

「ちょ、待ってくれよ。惇兄…」
「…………」

夏侯惇の脚の速さに夏侯淵は慌てて静止の声を上げる。
暫く歩いていたがようやく夏侯惇は歩みを止めた。

「すまなかったな淵。お前に嫌な思いをさせてしまったな…」
「惇兄…」

先程の女性達の言葉が夏侯惇にも届いてはいた。
自分だけならともかく、大事な人を陥れようと、嫌味を言い貶す声には怒れずにはいられない。
女性達に手を挙げれば些か厄介事に巻き込む事になるだろう。
大切な人と一緒にいる時間を大切にしたい。
夏侯惇は夏侯淵の頭を撫でた。

「淵、帰ろう。俺達の家に…」
「ああ…」

夏侯淵は夏侯惇の言葉に笑顔を浮かべた。
この笑顔が見れただけでも満足なんだ。
愛しくて大切だから誰にも触れさせたくはない。
そんな思いが夏侯惇の内に秘めていた。
考え事をしながら歩いていたら突然、夏侯淵は隣にいる夏侯惇の掌を握る。

「惇兄、歩くの早すぎだから、こうして手を握ってれば遅れないし、それに誰からも見たら恋人同士にみれるかもな…」

夏侯淵は恥ずかしそうに言いながら照れていた。
従弟の行動は何時も驚かせられる。
自分を独り占めにできるのは目の前に居るのに言葉で伝えるよりも行動で示した方が分かりやすい。

「もしかして…淵は、女に嫉妬してるのか?」
「なっ、違う、俺は嫉妬なんかしてない!!」

慌てる姿が何よりも証拠。

「安心しろ、俺は淵以外を愛する気はしない。一番大切なお前が居るのに他人に振り向く事はない」
「惇兄…」
「愛してるぞ淵…」

夏侯惇は夏侯淵の唇に軽く口づけを落とすとすぐさま離れる。

「家に帰ったら今以上の事の続きをするぞ…」
「へっ、なっ、何言ってんだよ!」
「嫉妬なんて無意味だと実感させてやる」

夏侯惇は夏侯淵を半ば強引に車に押し込ませたと思ったら車を急発進させていく。
夏侯淵は家に着いたら思わせるだろう。
夏侯惇から深く歪んだ愛情をその身に受ける事を。

嫉妬深い男に愛された男の末路は誰も知るよしはない。







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10th.Nov.2014



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