りん+魔
2015.03.30 Monday
(※行き触れネタ)
「お前は招かれていないはずだが?」
にやにや笑いながら御祝儀袋を押しつけてくる悪魔に、花婿はおもいきり不快そうに眉をひそめた。
「なぜお前がここにいる?誰が中に入れた?」
「まあまあ、そう水臭いこと言うなよ、りんねくん。お祝いは多めに入れておいたんだからさ」
訝しみながら御祝儀の中身を確認すると、中身は一万円が四枚──。
りんねの肩がぶるぶると震え出す。
「お前、わざと二で割れる枚数にしただろう!」
「あれっ、そうだっけ?」
「しかも、数字が縁起悪いっ!」
「おっと失礼!なにしろ地獄暮らしなもので、現世の習慣には疎いんでね」
とぼけてみせる悪魔。祝いの席に水を差された花婿は、今にも死神の鎌を取り出しそうな勢いだ。
「まだ桜にちょっかいを出すつもりなら、魔狭人、今日という今日は引導をくれてやるぞ!」
「晴れの日に物騒なことを言うなよ、りんねくん。──ところでこんなところで油売ってていいのかい?ドレスアップした花嫁が、首を長くしてきみを待っているんじゃないか?」
それもそうだ、とりんねがそわそわし出したところで、魔狭人は不意に真顔になる。
「りんねくん」
「なんだ、まだ用か?」
りんねの、薔薇の花を一本入れた胸ポケットに、どん、と拳を突き当てて、
「絶対に幸せにしてやれよ」