りんさく
2015.03.27 Friday
普通の女子高生になりたい。いつもそう思っていた。幽霊が見えることにはすっかり馴れたものの、いつまでもそのままでいたいわけではなかった。
「幽霊が見えたって、私には何のメリットもなかったから」
少し意地悪だと自覚しながらも、それがありのままの本音だったので、直球に告げる。すると隣のりんねが、真面目くさった顔をした。
「お前にとっては、確かに無意味なことかもしれない。でも俺には、奇跡のようなことなんだ」
「──奇跡?それは大袈裟じゃない?」
「いや、本当のことだぞ。おばあちゃんには感謝してるんだ。おばあちゃんがうっかりミスをしてくれたおかげで、いま、お前はこうして俺を見てくれてるんだから」
はたはた、と黄泉の羽織が風にひるがえる。刺繍にあしらわれている金の糸が、きらきらと目に眩しい。
「今の私にとっては、もう無意味なことなんかじゃないよ」
目を細めながら一言。今の本音は、こっちだ。
「こうして六道くんを見ていられることは」
空飛ぶ死神の少年は、滅多に見せない笑顔をちらつかせた。