りんさく

2015.03.29 Sunday


いつもの放課後、ひと仕事を終えたりんねは手伝ってくれた桜を家まで送り届けている。
途中喉が渇いたらしい桜が自動販売機でアップルジュースを買い、栓を開けた。
「本当に六道くんの分も買わなくてよかった?せっかくだからおごるのに」
気持ちだけ受け取っておく、と丁重に断るりんね。いつも甘えている身で今更と言われればそれまでだが、あまり厄介になりたくなかった。
桜はジュースを二口三口飲むと、隣のりんねに差し出した。目の前の缶にりんねはきょとんとする。
「喉渇いてるでしょ?遠慮しないで」
にっこりと笑う彼女には、善意しかない。
だが、これはいわゆる「間接キス」になるのでは?
聞きたい。けれど聞けない。
桜のくれた缶ジュースからはとろけるように甘い匂いがした。


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