ハク千
2015.05.17 Sunday
(Twitterログ)
見渡す限りの向日葵畑が青空との境目まで続いていた。千尋は背の高い向日葵の陰に隠れてはハクを驚かそうとした。彼女の居場所なんて隠れていようがお見通しのハクだが、眩しい笑顔が見たくて、何度も姿の見えない千尋を探すふりをした。二人で両腕一杯に花を抱いた。あれは永遠の夏、千尋がいた季節。
蝉が鳴くのをやめたら私も帰るよ。どこへ帰るのと千尋は聞くがハクは答えない。また離れ離れになるというのに悲しそうな様子は微塵も見せずにただ静かに微笑んでいるだけ。噴水のしぶきが光の粒になって二人に降り注いだ。夏が来ればまた会える、彼は言う。なぜなら私とそなたは夏に約束をしたから。
空色のシャーベットが溶けて千尋の腕を伝った。ハクは少し首を傾けて何とはなしにそれを舐めとった。くすぐったいよと俯く千尋に、このままの方がくすぐったいだろう?澄んだ声で笑う。ハンカチは?この方が早かったから。夏の日差しがじりじりと首筋を焦がす。つねに涼しげな龍が羨ましい彼女だった。