りんさく

2015.05.04 Monday


(※行き触れネタ・その後)
わたしたちは手を繋いで、遠巻きにその二人を見守っていました。
大きな薔薇の花束を抱えた桜さんは、差し出した手に真新しい指輪をはめてもらっています。
優しくて控えめな桜さんは、いつもこの公園のみんなの人気者でした。
そんな桜さんのこころを射止めたりんねさんも、物静かで決して親しみやすい人ではないけれど、いつだって面倒見が良くて、みんなから慕われていました。
どうやら桜さんからもらい泣きをしてしまったようで、りんねさんは手の甲でごしごしと目を擦っています。桜さんが屈んでなだめていると、りんねさんは感極まったように、ぎゅっと抱き締めてしまいました。
大きな薔薇の花束。思わず、うらやましい、とつぶやいたら、となりで彼が咳ばらいをしました。
ぼくだって、大きくなったら──。
そう言って、彼はほっぺを真っ赤に染めました。
りんねさんは桜さんを離そうとしません。苦労して、苦労して、やっとつかんだかけがえのない幸せです。桜さんもりんねさんを抱き締め返します。そうしていると、ほんとうにお似合いでした。
春の日の柔らかな陽射しが二人に降りそそいでいます。
──袖振り合うも、他生の縁。
そう言ったのは、だれだったかしら。
死神さん、よかったね。いつまでも、しあわせにね。
いつかわたしたちも、あんなふうになれるといいな。


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