並行世界.16



※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。



序章









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『入って適当に座っといてー!ごめんねーもうすぐ髪乾くから〜』
「うん、わかった…」





葵はすこし戸惑った表情で部屋を見渡す。さっきまでみんなといた部屋と大差変わりない宿屋の部屋なのだが、なんとなく落ち着かないでいた。




『葵ちゃんどうかした…?』
「え?」
『なんかキョロキョロしてて落ち着きないから、どうかしたのかなーって』
「すごく…」
『すごく?』
「すごく女の子の匂いがする…」
『……葵ちゃん…?』
『で、なんだっけ?』





それと同時に朱麗はドライヤーの電源を切り、コードを丸めてフックへとかける。ドライヤーの音で聞こえていなかった会話を聞き返す。




「だから、すごく女の子の匂いがする…」
『……はぁ!?』
「な、なんだよ」
『って、清蘭なにしてんのよ』
『匂いがするっていうから、そんなに匂うのかなって思って…』
「あ、そうじゃなくて…」
『あー、そっか。アンタいつもあの4人目と一緒だから身近に女の子いないもんねー』
「そう、それ」
『なんだー、びっくりしたぁ』
「ご、ごめん」
『うん、大丈夫!急に葵ちゃんが壊れたのかな〜、とは思ったけど!』
「…それ大丈夫っていうのか…?」




そう切り返した葵に対し、どうかしたの? と言葉にしないものの頭を傾け訴える清蘭を見てそのまま朱麗を見る。が、朱麗にもすぐ目をそらされる。




『まぁ、それは置いといて』
「置いとかれた…」
『どんまい〜☆』
「おう…」
『女子三人だけになったってことでやっぱアレでしょ!』
「アレ?」
『わかった!アレだよね、朱麗!えーっと枕投げ!』
『……違うでしょ』
『ありゃ?』
『こーゆー時は恋バナ≠ェ鉄板でしょうに!』
『え、そうなの!?枕投げじゃないの!?』
『なんで女子が集まって枕投げしなきゃなんないのよ!…三蔵の教育ってやっぱりどっかおかしいわ……』
『葵ちゃんは知ってた〜?』
「いやだから知らねぇってば…」
『じゃあ私と一緒だね!』
「なんかそれはそれで嫌かも」
『えええぇ!?』
「そんでその恋バナ≠チて何話すんだ?」
『何って恋のはなし…?』
「…清蘭と悟浄の話とか、朱麗と八戒の話とかってことか?」
『まぁそーゆーこと。んじゃま、お手本に清蘭からヨロシク』
『おて、お手本!?恋バナにお手本って…』
「よろしく」
『まじですか…』
『まじです』
「まじです」

『…そこではもらなくてもいいじゃないの。んー、私と悟浄の馴れ初めかぁ………』



渋るような顔を見せるもののなんだかんだで話を始める清蘭。



『簡単に言えば、私から告白した』
『え、そうなの!!?てっきり悟浄からかと思ってたわ…』
『旅を一緒にする前からね、いつも悟浄が私のこと見ていたの。で、その顔を見てたらなんか悔しそうな、悲しそうな顔をしていたのよねー』
「いつものあの女の子を見る物色するような感じとかじゃなくて…?」
『あの悟浄が…?』
『うん、あの′蜿でもそんな顔をするんだなぁって思ってさ。で、たぶん私を通して誰かを思い出していたんじゃないかな。そんな悟浄見てたらさ、初めて男の人に対して虚しいなーって思ったの。なんでそんな顔するんだろうな、とかそーゆーこと考え始めてからだんだん悟浄のことを意識始めて、『もしかしたら好きかも…』ってなったんだと思ったのよねー』
『へぇー、初耳だなぁ』
『結局私を通して誰を見てたんだろうなぁ…』
「お母さん…」
『…?』
「悟浄のお母さんじゃない…?なんとなくわかるその気持ちわかる気がする」
『葵?』
「ほかの人には目もくれずにきっとお母さんはお兄ちゃんを可愛がってたんだと思うなー、前に話聞いたけど。同じなんだよね、アイツと」
『そっか…悟浄はお兄ちゃんだけ愛されてて、葵ちゃん…』
「莉藍(リラン)だけだった」




葵の言うように悟浄が昔の清蘭を通して見ていたのは悟浄の母親だった。三蔵にしか笑顔を見せず、三蔵にしか懐かずにいた清蘭を少し重ねてしまっていたのだろう。




『えーっと、じゃあ次私話すね』



なんとなくどんよりとした雰囲気を流すように朱麗は次の話に移った。



『私と八戒の馴れ初めは、なんかそのね………』
『あれでしょ?えーっとセフレ=cだっけ…?』
『なっ……だれに教えてもらった?その言葉』
『んーっと、悟浄!!』
『………やっぱりね。とりあえずあとでしばく』




清蘭から出るとは思わなかった言葉に朱麗は目を丸くした。そしてその思惑通りセフレ≠ネどと三蔵が教えないであろう下品な言葉を放ったのは、悟浄のタレコミのせいであった…。
大きくため息をつくと後で思いっきり蹴り飛ばしてやらないと気が済まない、と思いながら話を戻した。




『まぁ、そんな感じで始まったわけ。お互い大事な片割れを失った同士だからか、お互いにお互いの大事な人を重ねては何かを埋め合わせるように求めていたなぁ』
「ただ寂しかった、ってこと?」
『そう…でもあるのかなぁ。普段の生活に過去を振り返る暇なんてないほど忙しいのは葵自身もわかると思うけど』
「うん」
『たまに大雨とかそーゆー時にはどうしても立ち往生しちゃうわけで、そういう時とかハッと思い出すのよね…昔のこと』
『でも、今は違うんでしょ…?』
『そりゃあもちろんね。多分私も八戒もむなしくなっていたんだと思う』
「むなしい…。どうして?」
『求めているものは結局どうあがいたってもうこの世には居ないんだもの。それなのに別人の仮面を被せて求めあってって、とっても滑稽でしょ?』
『こっ、けい…。うこっけい??』
「いや、ウコッケイって言うのは鶏の一種で、滑稽って言うのは ばかばかしい とかそんな感じ」
『おぉ!葵ちゃん博識〜!』
「そうかな…」
『話戻すわよ?いい?』
『はぁーい!』
『えーっとなんだっけ…あ、そうそう。そんで、相手にちゃんと向き合って、本気で好きになりたいって思い始めたの。私を通して誰かを見るんじゃなくて、私自身を見て欲しかった。でもねー、最初はほんとにぎくしゃくしてたわ〜〜』
「へぇ〜。てっきり朱麗がサクッと告白したりしたのかと思った」
『私にだって色々あるのよ〜!でもまぁそのあと少しして水仙の花をもらって、私も八戒自身を ちゃんと見て愛そう と思ったから形見の指輪を捨てたの』
『大事にしてたはずなのになんで捨てちゃったの〜?』
『ん〜、過去にずっと縛られてる感じがするじゃない?それにここからがまた新しいスタートなんだ、って思えるように…かな。だから今の現状に悔いはないの』
『へぇ〜〜。じゃあ次は葵ちゃんの番だね!』
『…切り替え早いわね。あんたほんとに私の話理解した??』
『えー?だから八戒が好きなんでしょ?』
『うーーーん……』
『葵ちゃんはどんな話かな、ワクワク♪』
「えっ!?」
『えっ、って葵ちゃんも話してくれるんでしょ?』
「そ、そんな。2人みたいなそんな経験なんか無いし…」
『えっ、あんたいくつだっけ!?』
「一応18、だけど…」
『アイツらにあったのは!?』
「15の時…?」
『………あー、そっか…』
『えっえっ?どーゆーこと!?』
『ほら思い出してご覧。葵の家は妹ちゃんがすごく可愛がられてて、姉である葵はいろいろ大変だったのよ、ね?』
「ざっくり言うとまぁそんな」
『だから男に現を抜かすような暇は無いし』
『無いし?』
『ましてやその後の暮らしが一応男として≠セったわけだからそんなことにはならないわよね〜』
『でもさ〜自分自身は女だってわかってるわけだし、こーゆー時キュンッてするなーとか無いの〜?』
「キュンッ…って、どんな…?」
『どんな…ってえーーっと、』
『ドキッとするような』
「例えば?」
『買い物にでかけたら突然の雨で困ってたら傘を指して迎えに来てくれる、とか?』
「雨の日にわざわざ寺院から出ること滅多になかった」
『転んで手を貸してくれる!』
「三蔵は別に貸してくれなかったし、悟浄に足かけられそうになった時は全力で鳩尾を殴った」
『…それは痛い……』
『わかった!!!いつもは無愛想だけどたまにすごく優しい!!』
「…………」
『お????』




悩む葵を見て朱麗と清蘭は難題クイズの答えを当てるようになぜかだんだん楽しんでいた。





「優しい…とはあまり感じたことはない」
『あらら…』
「けど」
『けど??』
「三蔵の寝顔って綺麗だよね」
『……』
『確かに〜!兄さんの寝顔って綺麗かもね〜』
『葵ってさ』
「ん?」
『三蔵のこと好きでしょ』
「……どうして?」




朱麗はこの一瞬の表情を見逃さずにいたのだった。それは三蔵のことを話す時は顔が少し変わること。もちろん好きには人それぞれいろんな形がある。が、ひとくくりに好きでまとめてしまえば大差かわりはない。




『三蔵の話の時は顔が違うから』
「……」
『最後に一つだけ聞いていいかしら』
「…?」
『夕方に聞いたよね、葵にとって三蔵ってどんな存在?≠チて。その答えが聞きたいなって』
『あ、それ私も気になるかも!』




そう、あの時(11話)清蘭は唯一無二、朱麗は信頼と放っておけない。そう答えた。

葵にとっての三蔵。




「私≠ノとっての三蔵……」




その一瞬で今までのすべてがフラッシュバックする。一番最初の記憶まで巻き戻された葵の頭の中。そこで再生ボタン押せばその時の三蔵はこう言った。




「知るか。死ぬ定めのお前が生きるためにはそれ相応の対価があるもんだろ?それとお前はどう見ても女だ。ここは女人禁制なもんでな。お前が男にでもなるというなら別だが。=v
『…葵ちゃん…?』
「一番最初に三蔵はこう言ったの。だから男≠ニして生きるのが私の残された生きる道だった。両親から開放され、同時にただ1人私を尊敬してくれた妹をなくした。…でも三蔵はね、三蔵は私に生きるための選択肢をくれた。だから生きてるの。三蔵のために生きることにしたの」
『そっかぁ、命の恩人なのか〜』







人を好きになるなど、ましてや三蔵を好きになるなどおこがましい。そう、一番になずともそばにいて彼の任務をはなすのを見られればそれでいいのだ。



そのあとも3人の話は尽きなかったが清蘭が睡魔に負け眠りについたところでお開きになり、残りふたりも床につくことにした。




『……』




二人の寝顔を見比べる朱麗。

起きている時こそ男の子のようなきりっとした顔をする葵も寝てしまえばやはり女の子なのだと朱麗はそう思いながら葵の頭を優しく撫でる。


『…葵の世界のわたし達はどんな生活をしているのかしらね。悟浄や八戒達にも会わなかったから一緒に旅をしていない…。もしかしたら限と幸せに暮らしているのかしら……』



ひとつ歯車が違えばすべてが変わる世界。今いる自分の世界もこの先の未来もそうだ。自分がすべて選択し、また選択され道を踏みしめ進むのだ。偶然か、必然かそれはわからない。



「でも私、は朱麗や清蘭に会えて良かった。旦那さんや赤ちゃんを失ってしまったときはすごく辛かったと思うけど、だからこそきっと私は朱麗に会えた」
『葵……』
『むにゃ〜』




葵は寝返りをうって向き直したり、起き上がることなく朱麗に背を向けたまま話す。一方清蘭はというと気持ちよさそうに熟睡しているのだった。




『…ってアンタどこから聞いてたの!?』




なんとなく自分が話したことを思い出して恥ずかしくなったのか問い詰める。葵は頭だけを朱麗の方に向き直し、こたえる。




「頭を撫でられたところで目が覚めた」
『あ、ごめん…起きしちゃった?』
「いや、平気。でも」
『でも?』
「本音を言えば朱麗が羨ましいよ」
『…どうして?』
「…秘密。オヤスミ」
『……なにそれ』



そのあと葵が起きてくることはなく次に朱麗が目を覚ました時には隣にはすでに畳まれた布団だけで、葵の姿はなかった。逆となりではまだスヤスヤと眠る清蘭がいた。




























***

ひさびさの更新!←

『つけたし?』
ちなみに清蘭さんの男性恐怖症はだいぶん緩和しているから普通に話はできるようになってるけど、恐怖を感じたりナンパされたら過去を思い出してしまう。

とのことです。
日常的にはあまり支障はないけれども、男のそーゆー目線?とかに敏感ってことっすかね〜。



なんだろう話が長すぎて()あとがきに何かこうか悩まするな。
あぁ、えっと葵さんは三蔵を全面的に好き!ってなることは多分ないんだよなー。大事!何より大事!みたいな。
でもたぶん自分の命より大事!ってしすぎてたまにふざけんな!!!って怒られるんだと思います…笑


最後の朱麗さんは今の現状に後悔はないんだけどそれてやっぱりそんな未来もあったのかもしれないと思うと、少し愛おしく感じたんだと思います!

葵さんが羨ましいと言ったのは自分のそばにそうやって無茶やって向き合えるような女の子がいないところですね。たぶんまだまだ妹への未練があるんですね。
もっと、もっとこんなことやあんなことや、こうしたかった、とか。



失ってから気づいたって遅いんだよ!!!


っていつぞや喧嘩してましたもんね( ˇωˇ )

そんなことを思い出してもらえると幸いです(*´-`*)



ではまた


読んでくれてありがとうございました。

2015.09.11

黒音 未唯


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