並行世界.11

※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。



序章









10








「そんなに気になるなら、本人達に直接聞いてみたらいいだけの話だ」





自分が思っていたことを全て投げつけたはいいが、流石に今日であったばかりの清蘭達にそんなことをぶつけるのは間違いだったのではないかと後悔する葵に対し三蔵は部屋の扉を勢い良く開けた。






『わぁっ!!』
「!!…朱麗に清蘭…?」
『三蔵≠チてどうしてこう変なところ敏感なのかしらね』
『確かに兄さんも気づかなくてもいいようなことによく気づくな〜』
「いや、そこは四六時中襲われる可能性があるから、気を配ってるんじゃないのか…?」
「それよりお前ら、何の用だ」





三蔵は話を戻した。まっすぐした眼で見据えれば清蘭がちょっと不安そうな顔をした。それに気づいたかのように目線を外すのだった。




『清蘭も私も、葵とちゃんと話がしたくて来たの』
「…葵」
「なに…?」
「過去のことを忘れずにいるのも大事だが、囚われては意味がない。現実をちゃんと受け止めることも大事だ」
「……?」
「それとお前」





三蔵はそう言うと今来た二人を中に入れた。自分は扉に手を掛けるとそこで何かを思い出したかのように振り返えると清蘭にもう一度目を向けて話しかけた。




『!!?』
「もし向こうの俺がここに押し入ったとして、まず先にここに来たのはてめぇ自身の意思だという事を伝えるように。じゃねぇと俺らが被害を被る」
『う、うん、わかった…』




清蘭の了承の声を聞くと扉の向こうへ消えた。





『アンタほんと愛されてるわよね〜』
「そんなこと…」
『それよりさ、葵にとって三蔵≠チてどんな存在?』
「どんな…?」
『私は一言で言うなら唯一無二≠ゥなぁ』
『あら、それはまた大きな存在ね』
『だってやっぱり家族だし、なりよりお互いに欠けたらいけない関係だと思うの…。悟浄とは違う愛してる≠チていう存在?朱麗は?』
『私?私は信頼できる≠ニ放っておけない≠ゥな』
『それはどうして?』
『同じように妹と弟を持つ身だから、かなぁ?なんとなく気持ち分かるのよ。放っておけないって言うのは不器用なところが可愛いと思ってるからかなー』




そう話す二人をみて葵は自分はどうなんだろうかと考える。姿形、声色の同じその三蔵について。同じでも違う自分の三蔵について。



「……」
『まぁ難しかったら良いわ〜。後でゆっくり聞く時間作ればいいだけだしね!それよりわたし達ね葵の話を聞きに来たの』
「話…?」
『昔の葵ちゃんに何があったのか聞かせてくれる…?』




はすこし考えてからその口を開いた。




「…5つ歳の離れた妹がいた。莉藍(リラン)はそれは可愛くて愛想もよく両親からも本当に好かれていた。俺はその反対に…」
『嫌われてた、の?』



葵は朱麗のほうを見ると目を伏せながらコクン、と頷いた。
両親から好かれる妹とそうではない姉。この差はどこから来たのだろう…。妹が産まれるまでは確実に愛されていた自分はどこが、どこが欠点なのだろうか。何度考えても何もわからない。言われるがままに勉強をこなし、武術に励み、いつか報われると信じていた。いつか、いつか…。



「憎まなかった、と言ったら嘘になるのかもしれない。でも…私≠ヘそれでも家族を愛していた。両親も、莉藍も……」
『葵ちゃん…』
「ある日珍しく4人で出かけたんだ。莉藍はね本当に先のこと考えないからよく迷子になるし、木に登れば降りられなくなったりするし困ったやつなんだ」



妹のことを話す葵の顔は、今まで見てきた男寄りの顔ではなくひとりの姉≠ニしての顔をしていた。




「その帰り際莉藍がいないことに気づいて、いつも見たく迷子になってるんだろうなって探しに行ったところで彼女の運命は勝手にも幕がおろされていたんだ」
『どういうこと…?』
「あの時の思えば異変≠ェ始まってたんだと思う」
『それって…』
『まさか妖怪のせいとか、言わないわよね…?』
「残念ながらご名答。朱麗の言った通り莉藍は妖怪に食いちぎられていたんだ。あの時は本気で血の気が引いた。何がなんだかわからなくて、ふと我に返って急いで両親の元へ走ったけどだめだった…」
『そんな…』
「嘘だったら良かったんだろうな、きっと。憎しみより愛の方が強いもんなんだなってたまに思うよ。自分よりも大事にされてる莉藍のこともちゃんと大事に思ってたみたい。莉藍の性格を知っていたんだから、本当は護れたんじゃないか、って今でも考えることがあるよ」
『本当は葵ちゃん妹さんが大好きだったのね…』
『妹を護れなかったから、か〜』
「違う、そうじゃない…。ホントは…ホントは分かってた……」
『葵…?』
「自分の考えを押し付けて、莉藍と清蘭重ねて、今度こそ護らなくちゃいけないんだ!って…勝手に思ってて、……だからっっっ……」




ぎゅぅうう、と葵の拳に力がこもる。言葉にもうまく表せなくなった。そんなに大事だと思ってたことにも気づかなかった。気づけていたら何かが変わっていたのだろうか。気づいたところで今からじゃ間に合わなくて…。





「ホント、なんで俺だけ生き残ったんだろうな…」





泪(ナミダ)を流すことなく笑ったその顔はとても哀しそうな顔をしていた。




『ねぇ…葵ちゃん、私の話も少し聞いてくれる?』
「え…?」





















***
ほい!もう少し行きたかった感もあるのだけれど、これ以上進と区切りにくいのでここで一旦区切りです!!

三蔵≠ニは!というお題?と葵の昔のお話(簡潔に)ですね。
わりと葵さんの中では三蔵≠チて明確じゃないと思うんだよねー。なぜついていくのか良く分からないところも少なからずあると思うの〜。

まぁそのへんは過去も一緒にいつか、ってことで←


今回のポイント?は葵さんが妹、莉藍のことを話すときには姉として話している、と言うところですかね。
これでもやっぱり根っこは長女です!しっかりやらなきゃ!が強いんだよねきっと。




ではまた次回!




読んでくれてありがとうございました。

2015.07.17
黒音 未唯


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