並行世界.12


※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。



序章









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『ねぇ…葵ちゃん。私の話も少し聞いてくれる?』
「え…?」



泣いていない筈なのにその顔は泣いてるように見えた。自分にしかわからない辛さ、自分にしかわからない恐怖…それを人それぞれ抱えていて、きっとそれをうまく誰に話すこともせずきたのだろうかと思いながら清蘭は話始める。




『私が男性恐怖症なの、知ってるよね』
「うん…」
『それにはね、理由があるの。私がまだ7、8歳だったかなぁ。お師匠様が亡くなったあと兄さんと一緒に【聖天経文】を探してる道中でね、山賊に襲われたの。山賊から逃げてる途中、繋いでいた手をうかつにも離してしまって…わたし達は離れ離れになったわ』
『……』




清蘭はその血の気の引いた手でさりげなく朱麗の手を握った。自分が感情的ならないように、取り乱さないように…。
朱麗もそれがわかってるのか優しく握り返し、彼女を安心させるようにもう片方の手をそっと肩へと置いた。

葵は清蘭の表情が話しをするに連れ曇っていくのをただ見ていた。





『はぐれた兄さんを探してる道中で変な集団に囲まれて、そのままそいつらのアジトみたいなところに誘拐されたの。そして、そこで…ね………』
『清蘭私が話そうか…?』




心配した朱麗が代わって話そうかと持ちかけるが、清蘭は辛そうな顔をしながらだったがそれに耐えるように目をつむり首を横に振った。その握った手を先程よりも強く握って…。




『………強姦…と、暴力を受けたの。私が………女神の【天后】に似ているから、そんな理由で。私と交わり支配下におくことで、この桃源郷を支配できると思ってたんだって』
「そんなの…バカげてる…」
『そう、だよね』




清蘭の口から語られた幼い頃の辛い過去に葵は驚きを隠せず、そしてその行動をした山賊の考え方を知り、より一層得体の知れない恐怖を感じるのだった。




『なんとか見つけ出して助けに来てくれた兄さんの精神的もボロボロになっててさ…。私は私で助けを乞う声も出せなくなってて…あんなに悲しそうで怒りに満ちた顔はそれまでも、今までもあの時以外見たことなかった。
それでね、その怒り、悲しみ、辛さをそのままぶつけてその教団を壊滅させたの』




悲しそうに微笑む姿には少し無理があった。ナンパされたときや妖怪に囲まれたあの時の怖がりようが納得できた。それほど辛く深い過去の傷なのだろう、と。
そう思いながら葵どう声をかけたらいいのかもわからなくて、でもなんとなく悔しくて下唇を噛みしめた。




『ずっと、思ってた…。……私が弱いから、私は兄さんの【お荷物】なんだ、って。あの時、後ろから兄さんを殺そうとした信者を殺したの。……それ以来何かにとりつかれたように兄さんは、私を戦わせないように私の分まで血を浴びて行った。でも私は私の足でこの地に立って、自分の意志でみんなについていくの。守られる≠トいるだけで弱い≠セけの存在の私が、嫌なの…』
「……それは…違うと思う」
『…?』
「もしその時から清蘭が今みたいに戦えたとしても、三蔵は兄として、1人の人間としてちゃんと守ってやれなかったって悔いたと思う。…弱いから、強いからじゃなくて、それだけ清蘭が大事なんだと思う」





具体的に伝えて行かないものの葵は弱いから守る≠フではなく大事だから守る≠ニいうことを伝えたかったようだった。次、手放さないために、次、失わないために護る≠ニいう選択は全てにおいて間違い≠ニなるわけではないのだと。





「大事な人が居なくなるのは、自分が怪我を負うより辛いから…」
『そっか…そういう考え方もあるのね』
『確かに清蘭はどんな時でも『自分だって戦える!』って聞かなかったもんね〜。戦えない≠ェダメ、じゃないものね』
『うぅ〜っ、だって〜』




清蘭は長い間兄である三蔵にたくさんの迷惑や心配やいろいろかけてきたから、自分を守ることで三蔵達が傷を負ったりするのが嫌で強くなって戦えれば!お荷物から抜け出さなきゃ、そう思ってた。そうやって強くなってきたから根本的に考え方の違う葵とぶつかったことはきっとしょうがないことなんだろう、と納得した。





『じゃあ、次は私ね!私には八戒の前に限(ゲン)っていう旦那がいたの』
「急に話変わったし、てか旦那!?」
『葵、清蘭が話したんだから順番でしょ?それでね働いてたバーの買い出しの途中でチンピラに囲まれた時に助けてくれた、それが限との初めての出会い』




朱麗は悟浄からくすねていたハイライトに火をつけるとその紫煙を過去の話を話すのと同じように窓の方へと吐き出す。
そのまま窓際に腰掛けると目を伏せて続きを話始める。それはまるで物語を話しているかのように見えた。




『その後彼がね働いてたバーに来てくれてたの。すぐに仲良くなって恋仲になっていったわ。…悟浄も……まぁ、一応限のこと認めてくれて、義兄として接しようとしてたの覚えてるなぁ…。そしてその後身篭ったの、大好きなあの人との子供を』



この時の朱麗の見せた顔は本当に幸せそうな笑顔だった。もちろん八戒といるときにも彼女は幸せそうに見えたが、きっと今の笑顔には勝るものはないのだろう、と思うほどに綺麗な笑顔だった。




『もともと限は他の場所で働いてたみたいなんだけど、私の妊娠をキッカケにその仕事を辞めて一緒に長安に暮らそうって決めたの。そのことを報告するために仕事場に戻っていった。…けどね、それがあの人を見た最期の姿だった』



先ほどの幸せそうな笑顔と消え一転。吸い込んだ煙を吐き出すと暗い表情で灰皿へトントン、と灰を落とす。そして思い出すように天井を見上げて話を進める。



『雨の日だったわ。バーにね限の同僚の人が来たの。傘も刺さずにきて、びしょ濡れの彼に手渡された箱には何が入ってたと思う…?……お揃いで買った婚約指輪をつけた、彼の…左腕が入ってた。状況を飲み込むのに流石に時間がかかったわ。だって渡された箱を開けたら左腕、なんてねぇ…』



急展開すぎる話に葵は唖然とし、その悲しそうな顔から目線を外しぼんやりと床を眺めていた。



『仕事場で事件が起きて、限は巻き込まれちゃって死んだって聞いたわ。受け入れないといけないのに、そんなことうまく受け入れられなくて…。もう全部が信じられなくなって、そう思ったらすごく不安で……。なんで、なんで限が死ななきゃならなかったの!って……。お腹の子はねそれを聞いた夜に流産してしまったみたいなの。妊娠がわかったばっかりできっとうまく着床してなかったんだと今ならわかるわ。でもあの頃は限が死んだって聞いて、精神的にダメになった私のせいで流産を起こしてしまったんだと自分を責めた。そうして旦那とお腹の子を同じ日に一度に亡くしたの。たくさんたくさん責めたわ』
「そんな、朱麗のせいじゃ、ないのに…?」
『…私に出会わなかったらきっと限も死ななかった、とかそんなことばっかり考えたわ。それでもやっぱり限が忘れられなくて、大好きで……。そうして限と赤ちゃんのとこに行こうとして自殺を図ったわ。けど、ちょうど良く、というのか 運悪く、というのか…悟浄に見つかっちゃってさ。殴られたなー。悟浄があの時ちょうどウチを訪ねてきてくれて、私を見つけて説得してくれてなかったら、多分今ここにいないわね』




朱麗は話が終わると肺に溜まった紫煙を全て吐き出し、灰皿へと擦りタバコの火を消した。そのまま葵を見れば二人の話を聞き終えて難しい顔をしていた。


「……なんか…」





















なにかが胸につっかえる。そんな感覚が襲ってくる。


誰が一番辛い思いをしてきたとか
そう言う事ではなくて…なんか…。





















***
以上が二人の過去(簡略版)ですね。
こちらも多分咲夜さん本人がいつか過去編としてことでしょう!!
気になる方はそちらもチェーック☆




今回はどーーしても描写が多くて私もなんか長い?あれ??って迷ったデス。
でもまぁ切ってしまったらわかんなくなっちゃうしここはドーンと。


描写があんまりなくて深く詰めるところがないので今回はこのへんで〜←




読んでくれてありがとうございました。

2015.07.22
黒音 未唯



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