並行世界.9

※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。




序章














「なぁ、ちょっといいか。特に清蘭と三蔵…」



急に改まる葵。その表情には迷いなどはなくどちらかといえば怒りが見える。その怒りはなぜ清蘭と三蔵に向けられたのだろうか…。




「馬鹿なのか!?」
『…え?』
「清蘭に言われて俺、ちゃんと考えたんだ。なんでそこまでして護りたかったのか。清蘭達の戦い方はもちろん、個人個人もちゃんと強い。でも俺が言いたかったのは、護ると言い張ったのはそこが問題じゃない。弱いとか強いとか、そういうじゃなくてもっと…自分を大事にしろよ!!」
『でもこんな傷…』



一旦自分の傷ついた足をみるが大したこともなく、どうやらいつもどおり八戒の治癒があれば治ってしまうだろうと軽く答えようとする。そこへ葵がだんだんと切羽詰った声でたたみかける。



「こんな傷、八戒なら治せるからいいとか言うのか?もし治せないような傷だったら?その状態になって誰が喜ぶ!?誰が一番悲しむ!?考えろよ!!強いのはわかった、戦えるのもわかった!けど!!それは少し過信し過ぎだろ!!」
『それはっ…』



さすがの気迫にか清蘭は、押され気味である。



『言わせておけば!コイツのこと誰が育てたと!』
「そんなん誰だって俺の知ったことじゃない!!第一に、大事だとそう思うなら怪我一つさせないように援護してやれよ!!兄貴だからこいつはできるって信じてやるのも大事だけど、清蘭をたてるって『守られるのが嫌いだからじゃあ守らない。好きに戦え』って…それだけじゃないだろう!?ほんと、馬鹿なのか!?!?」





すべてを言い切った葵は息を切らし、肩を大きく揺らしハァハァと息をする。微かに涙をためたその目をぐっと拭った。




「帰る」
「おいどこに行くんだ」
「これ以上頭に血が上った状態で話してたって、アラを探してお互いが嫌に思うだけだから、一旦帰る。帰って、シャワー浴びる」





葵はスタスタとその場をあとにした。
清蘭達はといえばなんだか戦い疲れたのも重なり、葵の話をぽかーんと聞いていた。



「なぁー?さっき妖怪とか人間とか言ってたけどなんだったんだ?」
「ようは清蘭さんが人間で、朱麗さんは妖怪、ということですよね」
「なんかよくわかんねぇ設定だな」

『そこに突っ込まないでくれる?…ってあぁぁぁぁぁっっっ!!!!』
『なんだよ姉貴!急にデッケェ声出すなよびっくりすんだろ!』
『ちょっとなによ、朱麗…。耳がキーンってしたじゃない』
『ごめん、でもあの子せっかくセットしてあげたウィッグはかぶってないし、スカートは破かれてたわよね!?どういうこと!!』
「えっと…」



***


「あー、もうやだ。もうホント無理」



そう言って編み込んだ三つ編みのゴムをとり、ウィッグを脱ぎ捨てる。そしてロングスカートの端を刃で切れ目を入れたかと思えばそこからビリビリと動きやすいようにと、スリットを入れてしまった。



「ん。これならまだ動きやすい」
「あ〜ぁ。もったいね」
「でもまぁこのほうが葵らしいですけどねぇ?」
「半分だけいつもの葵だな!」
「…悟空、一言余計」
「おめぇら気ィ緩めてんじゃねぇよ。さっさとヤレ」
「へぇーい」



三蔵の一喝と、悟浄のやる気のない声が残った。


***





「この第
話のところですか?そうですよね、みなさん?」
「…八戒、お前はどこのどいつにはなしかけている」
「ええっと画面の向こうの方々に…僕たちをずっと見ていたと思うので」
「いや、意味分かんねェよ……」

『もう、ホンット信じられないっ!!!』
『あ、姉貴そこはスルーなんだ』
『三蔵2人して女の子をまともに育てられないの!!?』
『おい、俺は立派に育てぞ』
『ふざけないでよ!カワイイの定義がオスかメスかで区別するなんて立派に育てられても、それは正しいとは言えないわ!!』
「俺は育てた覚えない。勝手にあぁなった」
『そうだと思ったわ!!!』
『つーか三蔵の場合、途中から姉貴に任せたじゃねぇか』
『まぁ女性しか知らないこともありますし、そこはしょうがないですよ』
『男しか知らないことは俺が…って清蘭?どうかしたのか?』
『葵ちゃん、なんであんなに怒ってたんだろう…』
「あぁー、そういうことはたぶんうちの三ちゃんが詳しいと思うからオマカセシマス」
「…チッ」





舌打ちをしながらギロリ、と悟浄を睨む。ひと呼吸おいて三蔵は簡略した葵の話しを始めた。





「一度しか言わない。質問も極力受け付けない、いいな」
「そう言えば僕らも葵の昔の話を聞くのは初めてですね」
「あー、そういやそうかもな。アイツあんま辛い時とか顔に出さねぇしな」





八戒は話す時間を使って清蘭の足の傷を治癒していく。立っているのもなんなので各自適当な場所に座る。



「あくまでも俺と出会った所からの話と俺個人の解釈だ。詳しく知りたかったら葵本人から聞くんだな」
『…わかったわ』
「自分をもっと大事にしろ≠チて言ってたのを覚えてるな?アイツには家族がいた。両親と双子の妹。成り行きは詳しく知らねぇが、俺と初めてあったのはその家族を失った日だ」
「俺も見た!あの時の葵は、なんかすごく、後悔した顔をしてた…」
「どういう経緯だかは俺は知らない。失う恐怖というものを強く感じた葵は、怪我を負い、無理してまで荷物になりたくないから≠ニ戦うオマエを見ていたくなかったんだろうな」

『……』
「でもどうして清蘭だったんだろうな?」
「そりゃやっぱ清蘭ちゃんが怪我してたからじゃねェーの?」
「そうかー?でも大した怪我じゃないよな?」

『それはわたし自身も思った…。痛いは痛いけど歩けるし…』
『まぁ、そこは葵本人に後で聞いてみましょ?』
『…うん』



あんまり気にしないで、と言うかのように朱麗は清蘭の肩をポンポンと叩いた。
話が軽くまとまったところで二人の悟空のお腹の虫がもう限界だと鳴く…。





「なぁ」『なぁ』




「ハラヘッター!!!」『ハラヘッター!!!』


















***
葵さんきれました。
詳しい理由は本人の口から?次回話せるはず!

ちらっと覗いた過去の話についてはプロットを書き直して載せましたので、諸注意からも設定へ飛べます!よければどうぞ!
そのうちその過去編についても 化け猫 にて書きたいなぁ。
過去編 からの 旅に出るまで みたいな。

まぁそれはまた別場所で出せれば!!



ではまた〜!



読んでくれてありがとうございました。

2015.07.12
黒音 未唯


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