並行世界.4

※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。



序章















目の前にいるのは突然現れた同じ顔の同じ声の同じ名前の三蔵一行…、と一緒に旅をする女の子2人。





「お前ら…!」
『やっほ〜。朱麗って言うの。よろしくね』
「は…?」
『清蘭って言います♪』
「……葵、です…?」
『葵、ね!でさ、唐突なんだけど…葵は女≠セよね?』
「!!?」




*話は数分前の葵が急に現れた熊をやっつけてしまったところに戻る…―――




『んー、誘き出し作戦失敗かー。…まぁ、熊が急に向かってきたら襲われると思うよな。普通』
『えー、葉月可愛いのに…』
『…ひとつ聞いてもいい?』
『なぁに?』
『清蘭、あんたの中の【可愛い】の識別ってなんなの??』
『え、それはあれでしょ!メスは【可愛い】でオスは【かっこいい】じゃない?』
『……………』




まさか過ぎる清蘭の回答に頭を抱える朱麗。そして心の中で義兄である三蔵の教育方針を疑う…。
そんな主人を慰めるように俊雷は朱麗の手をペロッと舐めた。それに応えるように朱麗は俊雷の頭を撫でながら奥の手を出すことにした。




『よし…しゃーない!俊雷で誘き出そう!』
『え!?本気で言ってんの!?だ、だって俊雷、オスだよ??絶対無理だって!!』
『清蘭、見なさいこのモフモフ感を!これを見た女子は確実にオチる。あと言っておくけど、そのオスとメスで可愛さを識別するの間違ってる』
『ふぇ……!?』
『てかさ、いまさらなんだけどあんたの精霊に雪女とか兎とか狐がいたわよね。なんでその子達出さなかったの??』
『だって朱麗、葉月出したときに何にも言わなかったんじゃん!!』
『それは忘れてたのよ!でも私はちゃんと【可愛い精霊】だしてね♪って言ったわよ!!?』
『えーーっ。って、あれ?俊雷もいないしあの子もいないよ?』
『え?あ、いない……』




仮にも隠れているなどということを忘れ、人目を気にせず大声で言い合いする清蘭と朱麗。…2人が気づいた時には葵はもう確認できるところにはおらず、それを追っていったであろう俊雷の姿も人混みにまみれもう見えなくなってしまっていた。

一方言い争いを始めていたあるじとは違い、賢い俊雷は葵に追いつき、他のみんなが葵から距離をとったところを狙い彼女の手をペロッと舐めた。


「なっ!…???」
『わんっ!!』
「………」



なにか生暖かいモノが触れたとあってか、とっさにその手を引っ込める。そしてその視線を下げればそこには尻尾をふる俊雷がちょこん、とおすわりしていた。
葵はそのモフモフの毛並みを見た瞬間パァァァっと顔を輝かせた。




「(かっ、かわいい…)触っても、イイ?」




【可愛い】と言う言葉を口にしなかったものの目を輝かせて近づいていく。それに軽く応えたのか中途半端に差し出された手に頭をふわっと押し付けた。…甘え方を知っている魔性の山犬である。(♂だけども…)

すると俊雷は(これはチャンス!)と葵の服を少し引っ張ってその場から離れようとする。



「お前、どこまで行くんだ?」




流石に何も言わずにみんなと離れてしまったことに気づいた様子の葵は、まだ先へと進む俊雷に声をかける。するとその声が届いたこのように進むのをやめ、振り返りまたちょこん、とおすわりをした。


「どうしたんだ?お前、ご主人様はいるのか?」
『はいはーい。そのご主人様ですよー』
「お前ら…!」




人混みがすこし避けたところから出てきたのは、異世界で自分の変わりに旅を続ける女の子2人組であった。




『やっほ〜。朱麗って言うの。よろしくね』
「は…?」
『清蘭って言います♪』
「……葵、です…?」



急な自己紹介に臨戦体制に入ろうと構えたチカラが溶け、流れに乗って何故か葵までもが自己紹介をしてしまった。



『葵、ね!でさ、唐突なんだけど…葵は女≠セよね?』
「!!?………俺は男だ」
『またまたー、バレバレの嘘つかないの!女の子ってね、男と比べて丸みがあるの。特に腰周りねぇ〜。あなたの腰周りはどう隠しても女寄りよ』
「お、女寄りな男だっているだろ!!」
『あー、確かに兄さんの腰周りめっちゃ細いよねー』
「(…兄さん?)」
『ここで三蔵を出さないでよ…泣くわよ?』
『朱麗だって充分細いよー?』
『アイツに比べたら…うん…』



葵が思わず自分の腰周りを隠そうとするのは、まさかの指摘に珍しく動揺を隠せないでいるからだった。
そして話をそらすように話題を変える。



「その犬………お前らのか?」
『そ。俊雷は私と清蘭の足なの。ジープの代わり、みたいな?ちなみにこの子はバイクに変化するのよ』
『あ、ちなみにさっき葵ちゃんのところに…』
「葵ちゃん!?」
『え?うん、葵ちゃん。だめ?』
「えーーーっと…」




今までで一番ありえない(?)呼び方をされてまたもや動揺を隠せない葵…。




『えっとなんだっけ』
『葉月の話?』
「(あ、続けるんだ…)」
『突進してた熊…葉月は私の精霊なの』
「…精霊?なんだそれ」
『はいはい、積もる話は歩きながらってことで!さっさとお店見つけないとね〜♪』



清蘭が精霊について説明しようとすると柏手をパンとうち話を止め、そして満面の笑みを浮かべながら葵の手を引き洋服屋を見つけるため歩き出し始めたのであった…。




「【神妖十二天将】か………それが清蘭たちの天地開眼経文を作った神なんだな。しかも妖怪の」
『そうなの、でも葵ちゃんの世界では釈迦如来しか作らなかったのね』
「あぁ、三蔵からはそう聞いている。…そういえばさっき三蔵のことを兄さんって」
『えぇ、玄奘三蔵法師こと江流の義理の妹なの!びっくりでしょー♪』
「…三蔵が兄貴とか似合わない。…えーと、朱麗だっけか。朱麗は他の奴らとどうやって出会ったんだ?流石に今度は血縁者じゃないだろ?」
『朱麗は悟浄の義理のお姉さんなんだよー。だから独角児からみたら義理の妹になるのかな?』
「…また血縁者かよ」
『えー、じゃあ葵ちゃんはー?』
「俺?俺はー…」




ふと歩きを止め、空を仰ぐ。……何も思い出せなかった。あの日三蔵に会ったあの日よりも前のことが。




「三蔵に拾ってもらった、みたいな」
『私と似たようなもんだね!』




清蘭はにこっと笑いかけた。葵は向けられたその笑顔になんとなく困りながら返事の代わりに清蘭の頭をふわっとなでる。急に撫でられた清蘭は少し不思議そうな顔をし、それをみた葵はクスッと笑いながら「清蘭、可愛いな」と言った振る舞いは男の子そのものであった。




『なっ…!からかわないでよ!』
「ホントだって。あ、そう言えばあの時出会ってすぐ言われた。お前、女だろ≠チて」




すこし苦笑いをした葵の顔がなぜだかわからなかったけど2人の頭に残る。女を捨ててしまいたい理由があったのだろうか。それとも女を捨てなければならなかったのか。…それがわかるのはいつになるのだろうか。



そんな中お目当てのお店を見つけた朱麗は2人のほうへと振り返る。



『さてついたわよ』
『……ブティック?また洋服買うの??』
『そ!けど今回は葵のお洋服を選ぶのよ〜♪』
「………げっ」
『そこ!嫌な顔しない!だってこんな格好してたらみんな気づかないわよー?それに絶対似合うと思うし!だーかーら、女の子らしい服装してもう女だとバラしたらいいかなーと思ったの♪♪♪』
「ふ、ふざけんな!!!余計なお世話だ!!俺はこれでいいの!!つか何よりお前みたいな年増に服なんか選んで欲しくないね!!!!」
『あっ、それ…禁句……』
「え?」




嫌すぎてプチパニックをおこす葵は、 朱麗を随分な言いようでけちらそうとする。…がそれは逆効果であり、年増≠ニいう言葉に清蘭と俊雷はとばっちりを食わないようにと朱麗と静かに距離を取る。そしてその張本人朱麗は笑顔を浮かべたまま固まっていた。
なんだか宜しくない空気に気づいたのか、そーーっとその場を後にしようとする葵を軽々と持ち上げてはそのまま店の中へと入っていくのであった。
朱麗の顔は般若に等しい形相を浮かべていたとか……。




「ちょっ、降ろせこの!!!怪力女!!」
『ぜーんぜん聞こえな〜い。というか言っておくけどねぇ?姉とは言っても悟浄と同い年だから』
「はぁ!!?ふざけんな!!年齢詐欺かよこのアバズレ!!!」
『仮にも女の子なんだからそんな言葉使わないの!』




にこにこと笑顔に見えるも、その裏にはなにかとてつもなく黒いものが潜んでいて…。もうそれは彼のような……。
そんな彼女の怖さを知ってか清蘭も俊雷も助けようとはしない…。



「ってえぇぇ!!背中の肉をつまむなぁー!!!!!!」
『ごめんね?ぶち切れた朱麗には関わりたくないの…。でも元はと言えば葵ちゃんが悪いのよ?朱麗に年増なんて言うから…』
「今清蘭も年増って!!」
『あの子はいいの!手を出すとシスコン野郎がうるさいから!!』
「はあぁ!?」
『くぅーん……』
「俊雷までその哀れみの目をやめろよ!!あーーー!!!!!!」
『お店の中よ!うるさい!はい、とりあえずこれとこれとこれ!着てみてね!着てる間に見繕っておくから!清蘭手伝ってあげてね!』
『はぁーい』
「あぁ…帰りたい」





こうして葵は着せ替え人形として遊ばれることになった。
だんだんと順に着た服が山を作っていく…。いつになったら終わりが見えるのかわからないこの状況葵の正気が失われ、ただ順に着ていくという流れ作業を繰り返すのだった。



『んー、やっぱりこの花柄ズボンよりこのパニエの方がいいかしら。あとせっかくならやっぱりちゃんとして、ウィッグもつけよっか!』
「……………スカートやだぁ」
『あ??わがまま言うな☆でもこのフリルがたくさんでふわっふわのワンピースも捨てがたいしなー』
「ノォオオオオオ!!!フリルは俺のプライドが許さない!!!!やめろ!!!」
『それともこのコルセットパニエを着せようかしらー。あぁ、楽しいけど迷っちゃう♪』
『…………そのコルセット付きのロングスカートと花柄のインナーはどうかな?』
『あ、いいわねこれ!すこしフリルがあっても可愛いけどなー』
「これでいい!!これが!!いい!!」
『あらそう?ミニスカートもあるわよ?』
「これがいい!!!!」
『そ。じゃあ早く着替えて頂戴?コルセットもしっかり締めるから』




何がなんでもフリルを着たくないのと、もういい加減におもちゃにされるのはゴメンだというので、幾分か大人しめの服を清蘭から受け取ると早々に試着室のカーテンを閉めた。


しばらくするとそのカーテンの中へと朱麗が入り、すぐさまギュウゥっとコルセットとが締められる。紐が締め上げられる度にお店に葵の声があがる。



『清蘭おまたせー!やっとできたよー。ほら葵出てきなさいって』
「…………」
『わぁ、葵ちゃん可愛いよ!!!』
「うるせー、つかあんま見んな………付け毛重たいし熱い」
『付け毛じゃなくてウィッグね!はーい、じゃあ会計済ませて見せに行こうか。あー、楽しかったっ♪』
『本当にごめんね、葵ちゃん』
「もう…なんにも言うな。逆に辛い……」
『そんなこと言わない!でもホント可愛いわよ〜?』






左から順に
【清蘭、葵、朱麗】





どうやら出てくるときにくすねてきたあの ブラックカード で葵の服の支払いを済ませると再び街へと歩き出した。
























***
いかがだったでしょうか!
今回学べたことは朱麗さんの前では「年増」と言わないことですね!!!……よし、近くには朱麗さんいないようです!!←おい


今回は葵さんがおもちゃにされる、という回でした!!些細な一言でしたけどね!まぁ、たぶん朱麗さんの性格からしてそんなことがなくてもこうなった気もしなくもないですね!!女じゃない、男だろ。と反対されていたことを早く間違えていました!と言わせるために…。

この場合わりと男だったとしても似合えば着せてしまいそうな感じもするですね☆〜(ゝ。∂)



あ、ちなみに?【神妖十二天将】のところの神妖十二天将がわからないよー!!って思いますよね!!ってことでこれ実はリンクですので、気になった方は見てみてください♪本編のあれも実はリンクなのです☆


次回ではお披露目?してぶわーーーーってなります!!!(雑か)
お楽しみに〜?

読んでくれてありがとうございました。
2015.06.18

黒音 未唯



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