並行世界.13




※注意※
『』の表記が咲夜≠フところの三蔵一行、清蘭、朱麗
「」の表記がわたくし黒音側の葵を含む三蔵一行の会話になります。



序章









10
11
12















「……なんか…」≠サう呟いた葵を清蘭と朱麗が見つめる。





『あー、なんかごめんね?こんな話しちゃって』
「……うんん」





モヤモヤしたような悔しそうな顔をして小さく首を横に振った。





『これでも一応乗り越えてきてるから、大丈夫。ね、清蘭』
『うん。…まぁまだフラッシュバックしちゃったりすることたくさんあるけど今は兄さんや悟浄とかいるし!』
「……」
『なにそれ!私はーっ?』
『もちろん朱麗もだよ〜っ!!…葵ちゃん?どうか…した?』
『葵ー?』









泣きたくなったのは、なぜだろう
甘えたくなったのは、なぜだろう

誰が一番辛いとか、誰が一番恵まれてるとか
そんな過去の話じゃなくて


素直に 今 妹 に逢いたくなった。







『…泣きたい時は泣くのがいいのよ?』




…そうだ。最初に見破ってきたのも朱麗だった…。






朱麗は葵の頭を優しくなでた。それがなんだかとても心地よくていつまでもこうやって甘えていられたらいいのに、と思いそうになる。





「な、泣かねぇし!!!」
『あれ?違った〜?』
『え?葵ちゃん泣いてたの?』
「だから!!泣…『清蘭!!!!!!!』




今いる部屋はちょうど階段を上がってすぐ隣の部屋…。階段の下から聞こえるのはどうやら三蔵兄さん、の声のようだ…。



『……あちゃー』
『清蘭!!!ここにいるんだろ!!』
『ちょ、ちょっと兄さん!もう少し静かにしないと、ほかの人に迷わ…』
『お前なぁ!勝手にどこか行くなってあれほど!!朱麗も朱麗で、俊雷だけを置いていかないで最低限書き置きくらい残すのが普通だろう!!!清蘭に何かあったらどうするんだ!!!!』
『はぁ!?私の心配はなしかよ!!』
『うるせぇ!!そもそもなぁ!』
「………」





人の話をまるで聞く気のない三蔵兄さんのお出ましに、葵はそそくさと距離を取る。





『もう!本当にいい加減にしてよ〜っっ!!だからここに来たのはわたし自身の意思で、葵ちゃんや、まして向こうの一行に仕組まれたことじゃないって何回いえば!!!』
『だからそんなことはどうでもいい!帰るぞ!!』
『話はまだ終わっていの!聞いてるの!?兄さん!!』




さすがの喧嘩に部屋の扉をこっそり開けると、悟浄悟空が覗いていた。どうやら二人の言い争いにはケリがつかないようで、それを見かねた朱麗が『三蔵、先に謝っとく』となぜか険しい顔で伝えたと同時に思いっきり急所を蹴り上げた…。




「「!!!?」」




影から見ていた悟浄悟空は片手で自分の急所を覆うと、そのまま被害に合わないうちに部屋へと引き返した…。





『ちょ、朱麗!?』
『ん?』
『さすがにそれは…』
『だっていつまで経っても人の話聞こうとしないし、まぁそれに対していつまでたっても歯向かっていくし?ケリをつけたのよ?』
「蹴りだけに…?」
『そっ!って、なんで距離とってたのよ』
「いや、巻き込まれたくなかったし…」
『なるほど』
『そこ納得するとこなんだ…』
『とりあえず向かいのお店でご飯にしてるから葵達も来てよね!ちゃんと5人分席あけとくから!』
「え、一緒に飯?」
『あら嫌なの?』
「いや別に、まぁいいや。後で行く」
『そう、じゃあ先に行ってるから!』
『最後バタバタしちゃってごめんね葵ちゃん。また後でね』
「う、うん」





この時葵は自分自身押しに弱いんだと気付く。同じ顔とは言え極度に男性を嫌う清蘭にとって三蔵達、特に悟浄がトラウマにならないのかが頭に引っかかった気がするが、朱麗が誘ってきたわけだしどうにかなるだろうと清蘭達を見送ったあと三蔵達が待ってる部屋へ向かった。





「あの、さ」
「飯だろ!!早く行こうぜ三蔵!!」
「黙れ猿」
「どうかしたのか、葵ちゃん=cやめろ抜けたらどうする!」
「知らない」





話を遮られたのを続けてやろうと声をかけた悟浄であったが、わざとらしくつけられたそのちゃん≠ノ悪意を感じ取りとりあえずその触覚を引っ張った。





「それでどうしたんですか?」
「いや…大したことじゃ、ないんだけど、さ…」
「ん?」
「俺…って、男として生きようってしてたけど、それに意味はあったのかなぁ…って……」
「意味、ですか…」
「なーに、めんどくさいこと考えてんだよお前。男として生きようが女として生きようが関係ないだろ、そんなの」
「そう、なのかな」
「うわ、この葵、珍しいほど弱気…いやホントやめて?抜けちゃう」
「……チッ」
「おー、怖い怖い〜。どこかの三蔵様そっくり」
「あぁん?」
「なんでもないデース!」
「…確かに男だからとか女だからというより僕たちには、今現在≠ェ重要なのではないでしょうか」
「あとは西に向かっていることだ」
「それと美味いメシー!!」
「………………悟空のはなんか全部違う」
「違くたってそんなん関係ない!!!メシーーー!!!!!」








そのあと5人のうち1人がとてつもなくうるさいので、とりあえず朱麗に言われた店に向かうことにした。悟空はお腹を満たすことと、お昼に食べそこねた杏仁豆腐を食べることで頭がいっぱいらしく、既によだれがたれかかっていた。






「今更女の格好をしようがお前には変わりないだろ?決めかねるくらいなら嘘ついてまで男になるのなんて辞めちまえ」
「…え」





通りすがり三蔵の声が耳に入る。独り言なのか、わざと向けた言葉なのかは分からなくいつもと変わらないムスッとした仏頂面で通り過ぎていった。
その後ろ姿を見てから、自分の一部だけ長くなった髪に手櫛を通して途中で握り締める。



嘘ついてまで男になるのなんて辞めちまえ




その言葉が頭をもう一回転し終わったとき、葵はそれを行動に移したのだった。


















***

なんとなく変化が訪れてます!
そもそものこの並行世界≠ノコンセプト(全体を貫く基本的な概念)はあまり深く考えてなくて、お互いの三蔵一行が仲良くなればいい、とかではなくて
どちらかといえばばったりあったらどうなるだろうか。
みたいな感じですからどこへ向かってるやら、なのですが
この話を終えてどのオリキャラ達もどこか成長できていればいいのになぁ、と思うのです。


この話をしたのに意味はあまりない!←



ではまた!

読んでくれてありがとうございました。

2015.07.25
黒音 未唯


WILD ADAPTER7巻発売おめでとうございます!!


[ 73/116 ]





[モドル]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -