2016/03/07
今書いている物語の断片。
***
「申し訳ありません……。私の魔力はこの土地との相性があまりよくないようです」
「構わないよ。君のような美しいレディが戦いに加わってくれるというだけでも、私としては非常にありがたい」
先の戦いでの出来事について詫びを言う銀色の巻き毛の魔術師に応えながら、美しい容姿と真紅の瞳を持つ王は、ごく自然な動作で彼女の方に手を伸ばして、その肩を抱こうとする。
王の行動に気付いたフリーダは一瞬目を見開いて硬直したが、すぐに相手の動きに合わせて逆の方向へ静かに移動した。その結果、ルセリウスの手は誰もいない空間に伸びて虚しくさ迷う。
「……ともかく、ここではまだ勝手がわからないことも多いだろう。君には誰か人を付けるから、何かあればその者に聞くといい」
空振りした片手を下ろしはしたものの、ルセリウスは整った顔立ちに甘い微笑を浮かべてなおもさりげなく氷使いに歩み寄る。
その美貌と洗練された物腰によって女たちの熱烈な思慕を集め、数々の浮き名を流している王が魔術師に近づくのと同じ速度で、彼女は今度は後方に足を動かす。そうして退がりながら慇懃に礼を述べた。
「お心遣い、ありがたく存じます」
[
あとがき]
2016/02/26
リアル多忙のため「擬人物語」の執筆が停滞しています。
代わりに、数日前から「ルセリオ王国の栄光」のフェリアのエピソードを執筆中。
***
「これがシノフ軍最強を名乗る黒鳶隊か……。口ほどにもない」
長いローブに身を包んだ人物が火の海のただ中で嗤う。
「お前たちはガルネアからの援軍だな」
ゆらめく緋色を宿した瞳を炎使いに向けられて、ノーラははっと身を固くした。
2016/02/07
○登場人物
ルセリウス…王。イケメンで有能だが女好き
マリカ…ルセリオ王国軍の一員。炎魔法を使う
***
・暖めて
大雪の日
ルセリオ王国軍
ルセリウス「今日は冷えるな…。手がすっかりかじかんでしまった。マリカ、暖めてくれないかね?」
マリカ「ファイアボールとヒートブラスト、どちらがよろしいですか?^^」
ルセリウス「え、遠慮しておくよ…。つれないな」
本日ルセリウスが女性の部下に冷たくされた回数:1回目
***
久し振りにルセリウス。
ルセリウスは国内外の女性たちから黄色い声援を受ける色男だけど、
中にはフリーダやマリカのように王の誘いをそっけなくはねつける女性もいる。
この落書きはそんなルセリウスが振られる数少ない失敗例の一つ。
2015/12/05
下書きとはいいつつ、ここで公開してから加筆・修正を繰り返して段々形になってきた。
***
辺りは激しい炎に包まれていた。
「炎魔フェリア!」
立ち去ろうとする人物――一帯に火を放った張本人だ――の後ろ姿にメイリーンが声を振り絞って呼び掛けると、相手は足を止めた。
「古い名だ」
災厄の名で呼ばれた炎使いの長い髪が、焼けつく空気の中で揺れる。
「見つからないはずだわ……。仲間を欺き、過去を偽って、何をするつもりなの?」
メイリーンが問うと、炎使いは整った顔立ちに酷薄な微笑を浮かべた。
「『仲間』か。――彼らは、ただ私の目的のために必要というだけのことだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「“野芥子の館”を焼いたのもあなたの目的のためだったというの?」
焼け落ちた拠点の名を彼女が口にすると、“炎魔”は嘲笑った。
「それ以外に何があるというのか」
「なんて酷い……!」
炎使いはメイリーンにゆっくりと向き直った。その体躯から放たれる炎の魔力と周囲の熱気を受けて、ローブの裾がゆらりと舞う。
「か弱き小鹿よ、覚えておくがいい。
この世の理(ことわり)は単純至極。強き者は長らえて望みを果たし、弱き者は強き者に利用される。
――お前が私を許さないというなら、力を以て止めてみせよ!」
炎使いの手元から紅蓮の波が迸り、辺りをさらなる灼熱に包んだ。
***
[
あとがき]
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