花を食む
芽吹きの前触れ
雪のほころび
リラの響く町の片隅
凍雪はもうどこにもない
子守唄は陽だまりの中
色付きの日
君を刻む季節
小鳥が持ってくるのは
春雷を待つ
同じ春にいよう
花を食む
宝石泥棒
月だって隠れたい
ループ・ループ・ループ
アクアマリンは恋をしない
きらめきだけが欲しい
お金にだって買えない
風の導き手
その輝きは手に余る
オパールと陽炎
幸福の海に沈め
宝石の庭
お出迎えは偽りと共に
賑やかな宝箱
宝石泥棒
『喧嘩』で30題
「誰だ私のデザート食べたやつは」
「くだらなくなんてないですけど」
「小さくて見えなかったわ」
「でかすぎて邪魔なんだけど」
「真似すんな」
「迷子になる前に連絡しろ」
「人の髪をリードか何かと思ってるの?」
「悔しかったら勝ってみろ」
「お前の頭は生クリームで出来てるのか?」
「熱があるなら言え」
「言い訳すんな」
「俺が先だっただろうが」
「女である自覚を知ろ」
「女装させてもいいんだぞ」
「怪我したら隠さず報告して」
「あぁ、馬鹿だから」
「知らない人についていくなって習わなかったのか?」
「もう少し寄らねぇと濡れるだろうが」
「消しゴム泥棒!」
「誰だあいつ」
「まずは自分の心配して」
「不可抗力だろうが」
「その間抜けズラやめろ」
「泣いてないってば」
「お前は私の母親か」
「心配して何が悪い」
「良いぞその調子だいつもの馬鹿が戻ってきたぞ」
「お前はいつものアホ面のほうがいいよ」
「話は最後までちゃんと聞け」
「ばーか」
ジョバンニは失敗した
悲しみだけを置き去りにして
カムパネルラの本音
ステラに手向けを
来世は他人であれ
静寂だけが心地いい
星祭
倖(さいわい)の本質
恵みを待つ
星が堕ちる日
ジョバンニは失敗した
昔は確かに持っていたもの
あの話の続きはまだこない
銀河鉄道にはもう乗れない
魔女は心を欲しがった
魔女は心を欲しがった
埃の被ったおまじない
たとえ空が飛べなくても
涙の宝石
聖木曜日には君と一緒に
トネリコの下で会いましょう
幸運の日に産声を上げた
草原の丘で幸せを歌う
せめて終わりまでは手を繋いでいられたら
夏至祭
手紙に記されたのは、ただの、普通の少女の告白だった。
君は花氷の中
指の間からこぼれ落ちたのは
大切なものだけを抱えていたい
眠る前には君の微笑みを
いつかの海辺で未来を願った
我儘を伝えて欲しかった
花冠は暖かな日向の中
失うことがなにより怖かった
君は花氷の中
きっともう目を合わない
例えこの心が死ぬとしても
やがてくる春を君に
朝を知らせるのは
ハミングとお昼寝
朝日和に深呼吸
陽だまりの底
ミルクティーの温もり
優しさを込めて
世界が黄金色に染まる頃
三つ葉を贈ろう
笑い声だって分け合って
こどもの空
前に前に走っていけ
雲を纏う
ひなたぼっこ
ハミングとお昼寝
木陰と鼻唄
たまには心を曝け出そうか
午后のひととき
坂道での逢瀬
君は麦わら帽子の下で笑った
5cmのもどかしさ
例えば今触れたとして
その不器用さが今日も愛おしい
暑くても君の温もりが欲しい
たまには心を曝け出そうか
その表情がどうか自分だけのものでありますように
きっともう手放せない
触れてくれた体温
ずっと手を繋いでいこう
泣き虫なかみさま
世界の半分は君に捧げる
見上げた先には愛しかなかった
こぼれ話をお供に
満月行きのチケット
サロメの微笑み
記憶の消費期限
ありきたりが欲しい
エマージェンシーなんて蹴散らして
寂しがりやの犯行
泣き虫なかみさま
赤い靴を履いて、今も誰かを待っている
敗北を知ったあなたへ
雨の日はこんなにも雲が近い
夜泥棒
降り注ぐ朝日を飲み込む
交わらないはずだった道の先
その笑顔が当たり前になる日まで
君が世界を綺麗だと言った理由
感情に浸る時間など残されていない
永遠なんて曖昧なものより、確かな今が欲しい
諦めるくらいなら最初から手を伸ばしたりしない
君が光のあるところにいられるように
たった一つ確かなこと
もしも僕が架け橋になれたなら
言葉はもう衰退している
夜泥棒