〔魔戦レイベルム-メリシダ編・本文〕
7th.Aug.2016
「メリシダの魔道士(1)」と「(2)」の間にこんな感じのシーンが入ります。
*
スカディア軍の将2人の会話
「ネリス・アトレ? 聞き覚えのない名前だな」
「ラディア・リコルスの恋人だそうだ。
やつの戦闘に同行することが多いものの、
我が軍が把握している限りこれまでに目立った戦績はなし。
報告によると、戦闘ランクはおそらくD級以下だそうだ」
「D級以下か。戦力にはほとんどならんな……。
恋人を応援するために戦場まで同行とは、健気なことだ」
「羨ましいのか?」
「な――!? 何を言っている!」
「ふふっ」
「ともかく、戦える人員の少なさがメリシダの弱点だ。
こちらからB級2人とC級1人が向かえば、いくらやつでも持ちこたえられまい」
※やつ…ラディアのこと
〔魔戦レイベルム-メリシダ編・本文〕
31st.Jul.2016
(1)の続きですが、ちょっと場面が飛んでいます(^^;
*
ラディアはスカディア軍の面々と対峙していた。
敵は金髪の魔道士に油断のない視線を注いでいる。
「(向こうは三人か)」
ラディアは相手の魔力を探った。
「(この波動の強さからすると、B級二人、C級一人というところかな……。
僕一人で相手をするにはちょっと多いかも)」
「……ネリス」
「りょうかーい」
ラディアが声をかけると、後方にいた黒髪の小柄な若者が進み出て彼の隣に並んだ。
「三対二、か」
スカディア側の一人である長身の男が呟く。
ネリスと呼ばれた黒髪の若者はにっこり微笑んで言った。
「でも、僕は戦うのがあんまり得意じゃないから、ちょっとは手加減してくれると嬉しいな」
「寝ぼけたことを言うな」
長身の男が顔をしかめる。
スカディア軍の別の一人、赤毛の男が口を開いた。
「おい、さっさと始めようや」
「いいよ。……準備はできてる」
ラディアが静かに答える。
辺りの景色がゆっくりと色を変えていく。
戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
〔魔戦レイベルム-メリシダ編・本文〕
18th.Jul.2016
ある日の午後、自室にいた魔道士ラディアは
彼が所属するメリシダ軍からの出撃命令を受け取っていた。
「ミルダ地区に敵の侵入を確認! 至急迎撃を!」
「……了解」
ラディアは答えながら寝台からゆっくりと体を起こした。
室内には湿度を帯びた熱気が残っている。
ラディアのやや長い柔らかな金髪は乱れ、
男にしては華奢な痩せた裸の上半身が室内の明かりに白く浮かび上がっている。
周囲の大小様々な勢力と国境を接している小国メリシダは、
国防の大部分をこの人物に依存していた。
「また迎撃命令かぁ。最近多いよね」
魔道士と同じ寝台から彼を見上げて声をかける者がある。
一糸まとわぬ姿でラディアの隣に寝そべっている、利発そうな顔立ちをした黒髪の小柄な若者。
ラディアの同僚にして恋人、ネリスだ。
この青年にもラディアに同行して迎撃に赴くように指示が出ていた。
「……うん」
金髪の魔道士が言葉少なに答える。
恋人の表情はネリスの位置からよく見えなかったが、そのわずかな反応から、
これから起きる戦いに相手が高揚を覚えていることを黒髪の若者は感じ取った。
(仕方ないなぁ)
ネリスは苦笑する。僕たちの国が危険にさらされてるってのにさ。
「ここでささっと水浴びして行こうよ」
黒髪の若者が寝台に寝そべったまま片手を振ると、
大人4〜5人の全身がすっぽり入るほどの巨大な水の塊が寝台の脇の空中に現れた。
(本当は洗いっこしたいけど、そんな時間なさそうだもんなぁ)
寝台から降りて空中に浮かんでいる巨大な水滴に体を浸し、
睦事の名残を黙々と洗い流し始めた恋人に目をやって、ネリスは少し残念に思った。
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