Tin ice in the sun

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東京モダンアパート(rank)
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Diaryの最新記事: サイト閲覧の不具合

Archiveの最新記事: フォレストページ(無印)の振り返り

その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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作者の自伝的作品。たまに入る太文字ゴシック体と改行の多さと子どもが一つずつ確認をするような文体が面白かったけれど……父親の「生まれた子どもを次の妻にしていく」という生活だとか色々なことがしんどいお話であった。好きかどうかで言われたら中々好きになれないかも!? をした怪作。 おかゆの中で煮えている子どもに対して「おかしい」と思える成長になってよかった。

  • 10th.Oct
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長安ラッパー李白

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タイトルにひかれて予約してた本。めちゃくちゃ面白かった。 表題作、韻を踏まなければ生きていけない長安という街全体機構になっているところにひとり自分の得意なラップでしかけて生きやすさを問いかける言論統制ディストピアSF×ラップでした。そ、そんなの想像つかないって……。 たいへん面白い作品でした。翻訳もラップ調にしてあるのがすごい。エミネムだ! をしたところが本当にエミネムでした。 その他の作品でいうと(ネタバレになるので伏せますが)陽の山月記みたいなお話が面白かったです。虎は出ないです。 三蔵法師のお話も面白かったし、スチームパンクならぬ牛皮筋パンクというバトルものも面白かったし、円城塔はいつも通りでした。 李白のあの生きざまをみんな見てくれ……。

  • 9th.Oct
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そして、「悪魔」が語りだす

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精神病院に入院が決まった患者たちとセラピーを行った司法精神科医のノンフィクション本。 作中で触れられているが、社会復帰の見込みなしと言われる加害者たちとのケアすることに意味があるのかという言葉に対して この本は「ケアが必要な人間に手を差し伸べて生かすことが悪いことか?」と怒っていて悲しんでいた。もちろん犯罪行為が許されることでもなく、自分がしんどいなと思ったところは読み飛ばした時もあるんだけど。それでも語り合って向き合うことはまわりめぐって誰かの支えになるのだろうと思いながら読んでた。 (病院から出られず問題児として暴れていた男がその後の入院患者たちのケアする側に変わったように)

  • 8th.Oct
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あんたを殺したかった

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アルレーの悪女もののようなフレンチミステリだった! 個人的には映像化した方が面白いと思う作品だった。好きだった。 警部ふたりと、死体がないが殺したと宣言する女から始まるミステリー。どうせ〇〇だろうという予測を裏切ったり裏切らなかったりする王道さもあってよかった。ラスト10ページの某キャラクターが1番驚かされたし、タイトルを華麗に回収していくのもよかった。 ささいなことだけど、チップとデールの注釈がついていて彼らがシマリスであることを初めて知った。ミステリーで知らされることあるんだ。

  • 5th.Oct
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幽霊ホテルからの手紙

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小説家の主人公から友人の警察官に手紙が届いてくるという手紙型ミステリー小説。冒頭の謎の女から始まり古典的だなーと思ったけど、手紙の形式から窺い知れる異様な世界が面白かったし、第三部のところで「そうなるんだ!?」と驚きのツッコミをいれるのも面白かった。中国のスティーブン・キングと言われるのも納得の話の飛躍感。幽霊のお話というわりにはそんなに幽霊ではない。生きている人間が怖くて面白い。

  • 5th.Oct
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ターングラス

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両面ひらき(リバーシブル)本ということで楽しみにしていた本。1881年のイギリスの話、1939年のアメリカの話がどうやって繋がるんだろう? と思ったけどこの装丁含めてのそれぞれの関係性とミステリーの描き方をしていてめっちゃ面白かった。作中でキーモチーフになるので、翻訳したあとの装丁もこだわっているのすごい。 ミステリーあるあるの「この登場人物たちはみんな信用できない」の話なのだが、どこかクラシックさのある2転3転する物語で面白かった。クリスティのような良さがある。特にアメリカのカリフォルニア編は映画の話もしていて好きだったな。ヘイズ・コードのある時代に役者を目指す男……。 セットで読むのなら『狂女たちの舞踏会』がおすすめ! になりました。おすすめです。

  • 23rd.Sep
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死体と話す

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NYで法医学調査官としてつとめた栄光とそのエンディングまで描いたノンフィクション。傾向としては2枚目に出した『イギリス花粉学者の科学捜査ファイル』に似ているのでセットで読んでも面白いかも! をしました。 死体を見ること、探ること。現場から正しい情報を汲み取るために何ができるのか、というお話は興味深く読んでた。初っ端から、調査に来た人間を道連れにしようとして死んだ男の話から始まる。こわい。死んでからも悪意が残るってこういうことか、と思った。 作者ほか調査官たちが死体と過ごす生活でいかに自分を保ち続けるのかという職業のお話としても面白かった。酒や薬に逃げることは周りが決して許さないけど、そしたらこういう職業の人のケアってどこでしてくれるんだ?? と思う。 Netflixで映像化されているらしいので見てみたいなー。

  • 20th.Sep
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邪悪なる大蛇

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ルメートルの作品はいつも意地悪だなーと思う。本人は「現実世界も理不尽」というけれどフィクションとしての意地悪だなーと言うことを再確認。 認知症を患った元魔性の女(現在太って車を前のめりになって運転する女性)と彼女に命令を下していた男、彼女を追いかける警察の三つ巴…… にならないのがルメートル。エンディングがかなり邪悪なコントのようだった。X(Twitter)でバズるタイプの漫画のエンディングなので興味がある方はぜひ……! と思った。

  • 20th.Sep
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宇宙の果ての本屋

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この前、宇宙の日だったので(9/10だったかな?)読まなきゃなーと思っていて 分厚さから家で読むしかなくて。いざ開いてみたらものすごく面白かったので1日で読み終わりました。 現代中華SF短編集の第2弾。第1弾の時よりもSF要素が強くなっているのだけれど、人間の進化論についてより深いところまでえぐるようなお話が多くて面白かった。 作品の中身には仏が転生してロボットになって帰ってくる話や 水星で金属生命体を育てる話や 中国古典を題材にしたSFもあって(元ネタ知らないけど面白かった)楽しめた。SFの自由度と制限のある社会と順応したり抗おうとする主人公たちの生き方それぞれが自分の好みに合ってるんだなーと思った。

  • 20th.Sep
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夕暮れに夜明けの歌を

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『同士少女よ、敵を撃て』の作者のお姉さんがロシア文学研究者かつ翻訳者ということをこの作品で初めて知りました。ブンガクキョーダイを積んでる。 自分の中では久々に日本人の書いた本を読んだのでは、と思う。 ロシアでの生活の話は異人としてのエピソードが詰まっていて読んでいて生活感がよく分かるのと同時にそれを飛び越えていった作者の精神がすごいなーと思って読んでいた。ロシアに行ったことあるんだけど、確かに閉鎖的な感じは強めだった……。 ウクライナとの戦争の話も触れており、作者が実際に出会った人々を思い返してやるせない気持ちになるのも伝わってくるし。繋がるために言葉を知る、という考え方もいいなと思った。 気楽なエッセイとしての側面と 苦い思い出を昇華するための創作のような側面があり、とても面白い本だった。

  • 20th.Sep
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