死んで強くならなければというのに、愚かな私は死にたくないだの、殺したくないだのほざいて中々死のうとしなかった。
私をもっと復讐の道へと墜とし、自ら死を選ばせるために、私とワタシの黒い彼岸花を共鳴させ、何度もコエを届けた。時には、カマキリ鬼に襲われた時に、ワタシが最後に見た、二人の死を見せつけたりもした。
けれど、どれも上手くいかなかった。私は勝手に立ち上がって、死とは反対の方向を見てしまう。
けれど、時間はいくらでもある。ワタシはチャンスを待った。私が黒い彼岸花の力を使わずにはいられない、その瞬間を。
そして前回とは異なった流れで、善逸くんの姉弟子となった。けれど面倒な事に、師範である桑島慈悟郎さんは、鱗滝さんと旧知の仲だという。その伝手を使い、私が炭治郎君と禰豆子ちゃんを探すために、親方様と鱗滝さんに手紙を出そうと準備を始めた。
炭治郎君は、前回と同じ未来を辿って鱗滝さんの元で現在修行中だ。もし、ここで炭治郎君と再会してしまえば、炭治郎君は私が死ぬことを絶対に許さないだろうし、私を全力で守ってしまうだろう。そうなると、確実に死から遠のく。
それを阻止するためにワタシは、手紙を目隠しの術で隠し、親方様や鱗滝さんの手元に届かないようにした。
それと同じく、桑島さんに黒い彼岸花の力を打ち明けてしまえば、必ず親方様に報告される。親方様は侮れない要注意人物だ。すぐに、鱗滝さんの元で修行する炭治郎君と鬼の禰豆子ちゃんと結びつけるだろう。これも不都合だと、黒い彼岸花を共鳴させながら、コエを届けた。
そして、チャンスを待って1年。ようやくその時が訪れた。
鬼の花子ちゃんとの再会だ。
鬼の花子ちゃんが話す事実にワタシは狂喜乱舞した。これは確実に、ワタシの望む方向に物事が進んでいっている。溢れ出る興奮を抑えながら、瞬時に出来上がった死へのシナリオを実行するために、黒い彼岸花の力を借りて、ワタシの中に私を招き入れた。
私の事はワタシ自身がよく分かっている。どの言葉に傷つき、恐れ、思考を奪われ、奈落へと堕ち、…救いを求めるか。
ワタシはほんの少しの事実に嘘で塗り固めた言葉を吐き、私の心を殺していった。
最初の鬼が、無惨に稀血と教えたと言うのは、嘘。だって最初の鬼は、あの時朝日浴びて死んでいたから。無惨が竈門家を訪れた理由は、嵯峨山さんを殺した時に炭治郎君のお父さん、《炭十郎さんの記憶》を見たから。私は何一つ関係ない。この嘘は、私の自責の念を強め、適正な判断能力を奪った。
私が竈門家の皆に拾われなかったら、竈門家は鬼に関わることはなかった。私は疫病神というのも、嘘。この嘘は、私の心を深く傷つけ抉った。
色んな分岐点の未来を見て、ここが最悪の世界軸というのも、嘘。この嘘は、後悔を強め、先に進む恐怖を植え付けた。
炭治郎君と禰豆子ちゃんが鬼から逃げながら怯え暮らしているのも、嘘。この嘘は、次は失敗できない、間違えれない不安を煽った。
そして、竈門家への恩返し、大正時代の幸せの象徴、生きている炭治郎君と禰豆子ちゃんを唯一救える正しい選択という心のトリガーとなる言葉たちを混ぜた死への切符を差し伸べれば、私は救いを求めて手に取り、そして奈落へと堕ちていった。
私の虚ろな目を見て確信した。完全にこちら側に堕ちた、と。上手く回り始めた歯車に嘲笑しそうになるのを堪え、慈悲を浮かべながら、現実へと誘った。
さぁ、これから、私とワタシが一つになるための物語が始まる。
-10:そして、阻止する5つの光と対峙する
※大正コソコソ噂話※
この話以降、九十九折と再会の章へお進みください。
未来のワタシは、闇堕ちしたサクラです。未来のワタシの台詞が全てカタカナなのは、視覚的変化を楽しんで?もらえるようにと、サクラと未来のワタシの差が分かるようと、時間遡行軍っぽい感じを出すためにです(カタカナだけの台詞って読みにくいけど…)。
2章&コエの真実の8〜10話の伏線回収?として《カタカナだけのタイトル》をつなぎ合わせると、ワタシの台詞になります。探すのが面倒くさい人は→のリンクからどうぞ。
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142。もっと面倒くさい人は、
番外編の2章の設定・裏話に答えが書いてますのでそちらからどうぞ。
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