毎日140字挑戦(1月)
*2021年1月より挑戦中
*時間軸はバラバラ
*ついったで載せたものより修正、加筆してることもあります
*お題元
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○○を使わない140字小説お題・
140文字で綴るSS小説お題↑New ↓Old
嘘をつくコツは真実を一欠片混ぜること。いつだかに君が言っていたのを思い出す。だから僕は、急に雰囲気が変わったんじゃないかと尋ねる君にこう返した。
ラムダに来て、決意を新たにしたからかな、って。
まるっきりの嘘ではないけど、納得してなそうな顔をされた。ごめん、今はこれで許してよ……相棒。
旅を続けていて日々増しているものがある。体力、攻撃力、魔力、それから青髪の男が勇者を甘やかしていく度合い。
鍛治に没頭しすぎても熱心だな、とんだ寄り道しても息抜きも大事だもんな、の一言である。
さすがに甘すぎない?と言えば、え?そうか?と逆に聞き返されたので、突っ込むのはみな諦めた。
生きるか死ぬかの大博打、今まで何度も賭けてみては運良く勝ってきたが、それは本能的な判断であって、信念のある選択ではなかったのだろう、と今のお前を見ていたら思う。
だからこれは賭けじゃない。お前の行く道を信じると決めたオレの、オレたちの選択なんだ。
だから、さあ、ー行ってこい、相棒。
おはよう相棒、今日はいい天気だから洗濯物が乾きやすそうだな。久々に遠くまで散歩に行くのもいいかもな。……って何だよそのニヤケ面は。
「昔は曇りや雨の方が忍びやすくて好きって言ってたのに」って?そりゃ……今はそんな必要もないからな。晴れてる方がいいだろ。
……だから何だよ、そのにっこりカオは!
「あなたたち、兄弟として育ったわけでもないのよね」
「……うん?あいつとは最近出会ったばっかりだぜ? 」
「それにしては何だか……」
「わかりますわマルティナさま!」
「そうとは思えないくらい似てるとこあるものね」
「そう、そうなのよ」
「そうなのか…?」
「それも自覚無しなのよね」
「なるほどね」
「何なんだ……」
カミュは可笑しいときにお腹を抱えたりはあまりしない。手の甲を口にあてて抑えてる感じ。
ベロニカと喧嘩してるときはちょっと意地悪だけど楽しそうで、セーニャやシルビアの言動に突っ込むときは呆れつつ。
色々あるけれど1番よく見る、僕に向けるそれは、とにかく視線がやさしい……と思うのは、やっぱり気のせいかなあ?
ボードゲーム、ひいては対人戦ならばそれは運と言うよりは駆け引きなので、やろうと思えばやれる。しかし、機械はダメだ。相手の動向を見抜くことも動揺を誘うことも、機械には通用しないからだ。
そんなわけで、マジックスロットにどんどんコインが吸い込まれていくのを見ていることしかできない。
カミュにも苦手なものってあるんだねって、こんな大損してるのに相棒はどうして嬉しそうなのやら。
「シルビアさまの音色、素敵ですわ……」
「ありがとう〜セーニャちゃんのハープもね!いつか合奏したいわ〜♪」
「まあ、私でよければぜひ」
「イレブンちゃんはフルートで、カミュちゃんはボーカルね!」
「おいおいオレらまで巻き込むなよ」
「僕、吹けるかなあ…」
「決まりね!」
「決めるな!」
→
加筆 生きていれば不要なものはいくらでも出てくるが、旅をする上で溜め込むわけにはいかない。食材は余すことなく食べるように、使っていない道具は極力売るようにしている。それでもどうにもならないものは炎で一掃だ、が。
この大量のつけもの石は自分でどうにかしなさいよカミュ!イレブンも、こいつに『盗む』ばかりさせないでよね!
きまりが悪そうな男たちを一喝するのもさて、何度目やら。
「なあ、あの2番目の書物なんだが、あの犬になった王女は元に戻るのか?」
突然勇者サマの相棒に呼び止められて、そんなことを聞かれた。
もちろん、あの世界の勇者サマによって助かるッチ!とクルッチが胸張って答えればホッとしていた。
「いやあいつが気にしてたからさ、ありがとな」
「どうしたしましてッチ!」
→
加筆「なあおっさん、オレたちこのねぼすけを何度も起こしに来たことあったよな」
「……そうね」
いくら仲間とはいえ女性陣にさせるわけにはいかないので、ねぼすけさんな勇者を起こす役はだいたい自分たちだ。そうして今も、ベッドで昏昏と眠るイレブンを、カミュは神妙な顔つきで見下ろしている。
「……こいつの寝顔なんて見慣れてるはずなのに、落ちつかねえや」
「……ばかねカミュちゃん」
これが何度目かもわからないけれど、大切な人がふらふらしてる姿なんて、慣れるわけがないじゃない。心配させたぶん、起きたら説教よ!
僕の友人はかっこいい。中身はもちろん顔立ちもスタイルもいい。某国民的アイドルグループの一員として華々しく活躍しててもおかしくないのに、そんなの柄じゃねえよと言って、彼は今日もせっせとバイトに励んでいる。
コツコツ仕事する方が性に合ってるし、寝て食う場所と、マヤとお前がいればオレは充分さ。
……だって。ああやっぱり惚れちゃうなあ。
世界中を渡り歩いてきた今ならわかる、この村には娯楽が少ない。君が好きな海もお宝もない。
正直いつ出ていくって言われてもおかしくないと恐れてたのに。君ときたら、川で魚釣りをしたり子供たちやルキと遊んだり僕と散歩したり、毎日楽しそうだった。
「何だよ、あのときのオレの返事を忘れたのか?」
「で、あのおちびちゃんは何がご不満なんだ?」
「お姉さまはいつも自ら情報収集へ向かわれてましたから…おふたりに任せるのが心苦しいのですわ、きっと」
「そっか……ベロニカ、僕たちだけじゃ頼りないかもしれないけど、信じて待ってて」
「そうそう、オレたちに任せときな」
「……頼んだわよ!」
→
加筆「お前のかえん斬り、オレの短剣だと扱いづらそうだな…」
「あーこの剣でも熱かったから、短剣だと余計にだろうね」
「やっぱ熱かったのか」
「手が焼けるかと思った。あの技かっこいいんだけどなあ」
「なら、こういう手袋つけてみたらどうだ?お前なら作れるだろ」
「あ!カミュ天才!そうする!」
→
加筆 勇者さまが真剣なカオで唸っている。鍛治や戦闘中ならば様になるだろうが、いま彼が抱えているのは空っぽの鍋なのでちょっと締まらない。
どうしたどうしたと聞きに行くと、
「どうしよカミュ、びっくりするぐらい夕食何しようか決まらない……」
なんて平和な悩みに思わず声を出して笑ってしまった。
ラブレターをもらったことがシルビアにバレてしまった。
「断るにしても乙女の気持ちは無碍にしちゃいけないわ!」
「それでいちいち返事してたらキリないしこいつだって負担かかるだろ!」
どちらの味方もできずおろおろしていたら、そもそも返事求められてるの?というベロニカのツッコミで学級会は幕を閉じた。
→
加筆 睦まじく買い物へ出かけていった双子ちゃんを微笑ましく見送っていたら、「あの2人は本当に仲がいいねえ」と勇者が呟いた。
「あら、あなたとカミュちゃんだって相当よ?」
「え!でも僕たちあんな風に歩いたことはないよ?」
と首を振る彼に、うーん、アタシはどこから突っ込めばいいのかしら?
→
加筆 つらいとき、悔しいとき、かなしいとき、何も言わずにただそばにいてくれたひとがいたから、甘えてばかりの自分が情けないと思いながらも立ち上がってこれたんだ。
僕もそう在りたい。ここにいるだけで、僅かでも息がしやすくなるのなら、いくらでもいるから。
だから、泣いていいんだよ、……セーニャ。
「なんだそれ」
「……あ、カミュ。それが、僕もわからないんだ。さっきお手伝いしたらお礼にもらったんだけど、これ何だろう?」
「……ちょっと貸してみろ……ああ、こいつはタバコだな」
「たばこ?」
「吸ったらちっと気分がよくなるんだ。ま、嗜好品だな」
「へえ……君は、これ好きなの?もらう?」
「いや別に。お前もよしとけよ、こいつはけっこう体によくねえらしいからな」
「そうなの……?わ、わかった、けど、もらったものを捨てるのも……」
「オレが適当に売っとくか?」
「じゃあ、お願いします」
出来上がったマスクは、何だか武闘大会であの女の人がつけていたものと似てる気がする。きれいだ。お、新しい装備か?と覗き込んできた相棒にすかさずつけさせた。
「おいおい急だな…」
「君がつけてたものって地味だったよね」
「そりゃこんな派手なもんつけられねえよ」
「似合うのになあ」
「よせやい」
→
加筆 子守唄が響き渡る。この地で争いはしたくないからと、ロウが周囲の魔物を眠らせていた。少し掠れたやさしい声にマルティナは泣きそうになるのをぐっと堪える。これからあの子をー勇者を迎え、あの日の真実を話さねばならないのだ。
行きましょう、ロウさま。奪われた過去と、これからの未来のために。
手の中でぴすぴす鳴く子犬を見つめながら、ほんとにただでもらっちまっていいのか…?と尋ねる声が震える。
値段なんてつけられないでしょう、カミュさんたらおかしなこと言うわねえ、と笑われてしまった。それもそうか。このあたたかさは金銭では得られない。
ありがとなエマちゃん、大事に育てるぜ。
→
加筆 定住よりやっぱ各地を転々と旅する方が楽しいよな、なんて自分とふたり旅してた頃に言っていた兄はどこへいったのやら。
勇者サマとの二人暮らしの近況が綴られた手紙を読みながら、マヤはため息をつく。
文面から楽しそうなのが十二分に伝わってきて、腹立つような寂しいような。ま、幸せにやれよな、お兄ちゃん。
「なあ相棒、薄々思っていたんだが」
「うん…僕もまさかとは思ってたんだけど」
「オレたち…結婚したって勘違いされてねえか…?」
「…やっぱり?」
「昨夜はお楽しみでしたねって言われて確信もっちまったな…」
「あはは…闇鍋は楽しかったけども」
「どうしたもんかな」
「どうしたもんかねえ」
→
加筆 君は月がない夜が怖くないの。
まあ慣れだな。それに、旅していればいくらでもある。太陽がないときも、風が強い日も、雨に打たれることも。それでも前に進むためには、ビビってるわけにもいかねえだろ。
「前に、進むために」
いつだかの相棒の言葉をなぞれば、光なきこの地も踏み出せる気がした。
→
加筆 今はさ、ベロニカの杖を盗もうとしたあの子の気持ちもわかるな。なりふり構ってられなかったんだろうし、友達のために、えらいよね。
すっかり遠くなった港町の方角を見つめながら、自虐的に呟くその顔にシルビアは胸が痛んだ、が肯けない。
でもねイレブンちゃん、友達を大切に思えばこそ焦っちゃダメ。そして一人で抱え込まないで、ね?
友を思う気持ちそのものは、何ものにも代え難いものだけれど。その優しさが間違った方へ行かないように、自分たちオトナはいるのだ。どうかアタシを頼ってちょうだい。
若き勇者は少し逡巡したあとに、こくりと頷いた。
武闘大会のチャンピオンになって、けっこうな数のファンがついたのはまあいい。お尋ね者として目立つことはするべきではないが、まあ今さらだ。それに、握手やサインを求められて照れ臭そうに笑ってるあいつを見たら、何も言えない。
ただし、見過ごせないものもある。
そんなわけでこの店で売ってる未許可のグッズは今すぐ撤去してもらおうか。オレたちの勇者さまを使って甘い汁を吸おうなんざ、許せるわけがないのだから。
恋に落ちる音とはどんなものかしら。そんないかにもな話題で女性陣が楽しげだ。盗み聞くつもりはなかったが、「勇者ちゃんはどうだったのん?」なんてシルビアのおっさんが問うもんだから、意識を向けてしまう。
「ボクの場合……滝の音だったかなあ?」
「はあ?どういうことよ」
「そのまんまだよ」
などと場を困惑させながら、こちらに目配せしてくる相棒。その言葉の意味を理解した瞬間、短剣を落としそうになった。
膝と膝がぶつかる。わりい、こっちこそ、と軽く謝り合ってからまたスープをすするのも日常茶飯事になってきた。ふたり旅だった頃はわざわざこうして隣り合って座ることもなかったので、今少しばかり窮屈なのはつまりそれだけ仲間が増えたということだ。しかし嫌ではない、とふたりして思うのであった。
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