胸に残る一番星 | ナノ

  Puppy!


 両手の中でぴすぴすと鳴くふわふわを見つめながら、「ほんとにただでもらっちまっていいのか……?」と尋ねる声が震える。

 ルキの子どもが産まれたという朗報をエマから受け、イレブンとともにいの一番に見に来たら、一匹もらってほしいと頼まれたのだ。こんな子犬に触れるのは人生で初めてだったカミュは、そのあいくるしさにうっかり心を奪われてしまったので、願ったり叶ったりだが。

「値段なんてつけられないでしょう。カミュさんたらおかしなこと言うわねえ」
「真面目だからね、カミュは」

 二人にくすくすと笑われてしまい少し恥ずかしい。しかしまあ、それもそうか。このあたたかさは、金銭では得られない。

「ありがとなエマちゃん、大事に育てるぜ」
「ええ、マヤちゃんが帰ってきたときには見せてあげてね」
「もちろんだ」

 マヤもきっと、なんだこいつ、と戸惑いながらもかわいがるようになるだろう。次の帰省が楽しみだ。

「あっそれと、イレブンは子犬にまゆげを書いたりしないように!」
「ええっ」

 突然、子どもの頃――カミュも聞いたことのあるいたずら――の話を出されて、イレブンが驚いた顔をする。それまでおとなしく撫でられていたルキも、まるでそうだそうだと呼応するように、ワン! と鳴くものだから笑ってしまう。

「も、もうそんないたずらしないよ!」
「はは、任せろよルキ、オレが見張ってるから」
「ふふ、それなら安心ね」
「カミュまで! もお〜!」

 子犬がまたきゅうんと鳴き声をあげる。よしよし、あとでお前の名前をつけなきゃな。




お題『愛の値段』
140文字で綴るSS小説お題
210110

Clap

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