かえん斬り
「お前のかえん斬りだが、オレの短剣だと扱いづらそうだな……」
短剣の手入れをしながら、ふと思い出したようにカミュが呟いた。言われてイレブンも、今はタルに立てかけてある己の剣が、炎を帯びたときのことを思い出す。
「あー……この剣でも熱かったから、短剣だと余計にだろうね」
「やっぱり熱かったのか」
「すごく。手が焼けるかと思った」
勢いよく燃え上がるあの技のおかげで、そのときの窮地を乗り切れたけれど。落ち着きを取り戻したそのあとになって、右手がじんじんとひどく傷み始めたのだ。みんなに心配かけないように、こっそり慌ててホイミをかけたんだっけ。
「おいおい大丈夫だったのか?」
「さすがに今はもう痛くないし、傷も残ってないよ」
「そっか。……にしても、諸刃の剣だな」
あんま無茶すんなよ、と小さくため息をつかれた。そこまでひどい火傷でもなかったから、気にしなくてもいいのになあ。でも逆の立場だったら、危なくない? と止めていたかもしれない。
「……カミュもやってみたい?」
「オレはあちいのは苦手だからパスだな」
苦笑とともに即答されて、くすっと笑った。
「僕はまたやってみたいけれど」
「痛い目見たのにか?」
「だってかっこいいんだもん、あの技」
「……ん、そうだ。こういう手袋とかつけてみたらどうだ?」
カミュが少し考え込んだ様子を見せた後に、片手をひらひらとさせた。彼が常につけている、黒い手袋。なるほど、確かにそれなら上手く扱えるかもしれない。
「カミュ頭いい! そうする!」
「へへ、お前ならいいもん作れるだろ」
何かいいレシピはあっただろうか。ああでも、分厚いものだと剣が持ちづらいし、カミュとお揃いのものでもいいな。かっこいいし。ついでによく見たらけっこうボロボロになってるそれを打ち直させてね。
お題『あの熱が消えない』
140文字で綴るSS小説お題210125
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